新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の自粛により、経済的な困難を抱えるご家庭はより深刻な状況に置かれています。
一般社団法人こども宅食応援団は、全国各地の支援団体と連携しながら、経済的に困窮する子育て家庭等へ定期的な食品の配送を通して見守り支援を行う「こども宅食」の立ち上げ支援・ノウハウ提供を行っています。
2020年には、コロナ禍で地域の居場所事業の活動が休止に追い込まれるなど、地域の見守りが機能しづらくなり、これまで以上に家庭が孤立し支援が届きにくい状況が続きました。このような状況の中でも、各家庭と積極的につながりを保ち、見守りを届ける有効なアウトリーチ型支援のひとつとして「こども宅食」への注目は高まっており、全国各地で実施事例は急増、令和2年度の国の第二次・第三次補正予算では、「支援対象児童等見守り強化事業」のなかにこども宅食が施策の一つとして取り上げられるまでに至りました。
実施事例が増えるなかで、食品の調達、相談員の有無、連携先の機関など、地域や団体によって事業の枠組みが異なり 、全国に一つとして同じ事業はないというのが現状です。
このたび、こども宅食応援団では、全国各地の実施団体がどのような形で事業を推進しているか、どんな課題を抱えているか、どんな支援を必要としているかをあきらかにするため、初の実施団体向け実態調査となる「こども宅食の実施実態に関する調査」(以下「本調査」)を実施しました。
全国各地のこども宅食を運営する58団体から有効回答が集まり、行政や支援機関が課題や状況を把握できていなかった世帯1,268世帯と繋がるなど、アウトリーチ支援の成果が明らかになった一方、約半数の団体が「支援対象児童等見守り強化事業」の予算を実際に活用できておらず、自主財源に頼っているため事業を安定的に実施することに課題を感じているという実態が明らかになりました。
実施期間:2021年3月8日(月)~3月22日(月)
実施方法:Webアンケート
実施者:一般社団法人こども宅食応援団、認定NPO法人フローレンス
実施対象:現在、こども宅食事業を実施している全国の民間団体・自治体の事務局
※国の「支援対象児童等見守り強化事業」でこども宅食型(お弁当配送型含む)の事業をしている団体を含む
回収率:70.7%(発信者数:82団体、回答者数:60団体、有効回答数:58団体)
調査に回答した58団体が、こども宅食を通じて計6,399世帯のご家庭と繋がることができていることが明らかになりました。
そのうち、行政や支援機関が課題や状況を把握できておらず、既存の行政の支援が届いていなかった世帯は1,268世帯存在しており、全体の2割にのぼることがわかりました。
「こども宅食」の特徴である、こちらから出向いてご家庭と積極的なかかわりを持つアウトリーチ型の支援により、生活や子育てに困難を抱えながら、誰にも知られず支援が届いていなかったご家庭にも高い割合でリーチし、つながることができています。
また、自治体が見守りの必要性が高いと考える要支援児童等も624世帯利用していました。
生活上、さまざまな困難を抱えているからといって、周囲に支援を求めることは容易なことではありません。様々な理由で「つらい」が言えない状況が生まれ、孤立し、さらに困難な状況に陥ってしまうという実態があります。
今年、こども宅食応援団がご家庭向けに実施した別アンケートでは、利用家庭から以下のような声が届いています。
子育てのことで某所に事前連絡の上で相談に伺いましたが、「小さい子は連れてこないで実家に預けるとかしてください」と言われ、そもそもそのようなことができるなら相談に来ないと思い、その時の対応者の剣幕や表情を思うと、その後は怖くて、全くどこにも相談出来なくなりました。
役所で、あなたは低所得で税金をろくに払ってないのだから払ってる人達に対して遠慮しろと言われた。彼氏がいて支援してもらってそうだからと母子手当を調査として2年止められた。役所では何の相談も出来ないです。
自分自身に発達障害があり、他の方から白い目でみられたり、怒られたりした。支援機関から断られた事もある。
コロナ禍で家庭の孤立が深まる中、こども宅食のように、支援につながるまでのさまざまな障壁を取り除き、困りごとが大きくなる前に支援者側から積極的に関わるアウトリーチ型の支援がますます重要になっています。
なぜ「つらい」が言えない、支援が届きにくいご家庭ともきちんとつながることができたのか?
調査では、実施団体は、支援を受けていることを周囲に知られないための配慮や、仕事が休みにくい家庭でも手続に窓口に来なくて済むようLINE等手軽なツールを活用した申込方法を用意するなど、申込や利用に対する心理的・物理的なハードルを下げるさまざまな工夫を行っていることが分かりました。
食支援を入り口に、家庭の様子を見守りながら、次の必要な支援につなげることを目指すこども宅食。実施団体に寄せられるご家庭からの相談は、教育や進学に関する相談、生活用品など必要なものに関する相談が多いことがわかりました。
また、直接的な悩み事だけでは無く、行政の支援に関する手続きについての問い合わせも多く、ご家庭をさらなる支援に繋ぐための橋渡しとなるような情報提供が行えていることが明らかになりました。
回答した団体の9割が支援の繋ぎ先として自治体の子育て事業担当と連携しているほか、約半数が社会福祉協議会や子育て事業以外の行政窓口とも連携しています。
調査回答した団体の活動範囲だけでも実施時、少なくとも全国27都府県でこども宅食が実施されており、半数以上がNPOや任意団体が事業推進団体を担っていることが分かりました。
調査に回答した56団体全体で、こども宅食の事業実施に必要な食品は年間で247トンにのぼります。
また、本調査に回答した団体だけでも、事業継続のために年間9.3億円の財源が必要であることが分かりました。こども宅食を運営するためには、食品購入・保管の費用、配送費、見守り人件費、申し込み受付や関係機関と連携する相談員・事務局費用などが必要です。
今後も全国的にこども宅食の拡大が期待される中、国の「支援対象児童等見守り強化事業」等、行政による安定的な財源支援は不可欠となっています。
しかし、こども宅食事業を推進する中で感じる課題について、半数の団体が「事業を安定的に実施するための財源がない」と回答。「財源はあるが金額が足りない」という回答も3割近くにのぼりました。
また、事業実施に関する自治体との調整や関係機関との連携強化についても課題として挙げる団体が多くなりました。
こども宅食は、令和二年度の第二次・第三次補正予算案で「支援対象児童等見守り強化事業」のなかで施策の一つとして取り上げられ、自治体の予算で事業実施が出来るようになりました(第三次補正予算案で総額36億円)。
しかしながら、本調査では、「支援対象児童等見守り強化事業」を活用できている団体は全体の半数程度にとどまり、寄付金などの自主財源で事業を実施している団体が多いことが明らかになりました。
新しい制度に対し、自治体が活用に慎重になっている等も要因として考えられますが、コロナ禍で困難を抱えるご家庭の状況がますます悪化する中、支援団体の新規参入をうながし、それぞれの団体が安定して事業運営を継続するためにも、「支援対象児童等見守り強化事業」の積極的な活用が急がれます。
今後、こども宅食応援団にどのような活動を期待するかを伺ったところ、国や厚生労働省に対する制度改善、食品の安定確保、周辺地域や全国他地域の団体との連携に関する要望が多いことが分かりました。
本アンケートの調査レポートの詳細な結果は、こちらよりご覧ください。
※発表資料等でご使用の際には、弊会の取材申込フォームに使用用途を記載の上お知らせください。また、引用元として『一般社団法人こども宅食応援団「こども宅食の実施実態に関する調査」』を併記いただきますよう、お願い申し上げます。
取材申込フォーム:https://hiromare-takushoku.jp/req
本調査で、自治体が課題や状況を把握していなかったご家庭1,200家庭以上と繋がり支援を届けられるなど、確かな成果が確認できた一方、約半数の実施団体が「支援対象児童等見守り強化事業」の補助金を活用できておらず、安定運営のための財源確保に課題を感じていることが明らかになりました。
調査結果を受け、こども宅食応援団では、フローレンスを始めとする連携先団体とともに、「全国の自治体に向けた勉強会や研修コンテンツの提供」、「国や厚生労働省への制度改善に向けた提案」、「いただいた物品寄付を全国に流通させるプラットフォーム構想の実現」などの活動を進めていきます。
こども宅食応援団の活動運営費は、ふるさと納税を通じた全国の皆さんからのご寄付によってまかなわれています。
是非ともご支援のほど、よろしくお願いいたします。
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