こども宅食応援団は、「文京区ではじめたこども宅食を全国に広げよう!」ということで2018年10月に一般社団法人として設立された団体です。その後、2018年12月までふるさと納税で活動資金を集めた後、2019年1月から本格的に活動を開始しました。
といっても、事務局メンバーはたったの4人。事業を全国に広げるといっても、具体的に何をすればいいのかわからないまま、完全に手探りでの事業開始でした。
――それから1年。
去年は東京都の文京区でしか実施できていなかった「こども宅食」は、宮崎、長崎、佐賀、京都など、全国各地域で事業がスタートしており、つながった世帯は345世帯、配送件数は1,113件にもなります。
こども宅食応援団は暗中模索しながら、どうやって事業を広げていったのか。2019年の1年間の活動を振り返りたいと思います。
まずは、「本拠地である佐賀県で文京区以外のモデル事業を作ろう!」と、佐賀県の中でこども宅食に興味がある団体とつながり、資金助成と事業の立ち上げ支援をすることになりました。
東京在住の事務局メンバーが毎週のように佐賀に通い、自治体関係者や子育て支援に取り組む団体、地域のNPO団体の方にお会いして、事業の説明と候補団体の探索をしつつ、助成に向けた説明会の開催など、助成事業の立ち上げも進めました。
最終的に、申込みのあった2団体に助成することが決定しました。その2団体が佐賀県で立ち上げたのが、小規模のこども宅食事業であるとどけYELLと小学校の校区で配送を行うおなか一杯便になります。こちらの2団体に助成をしつつ、事業の立ち上げや推進支援を行いました。
とどけYELLの実施団体であるスマイルキッズの代表、福島さんのインタビューはこちら。
▶表に出られないお母さんたちが堂々と生活できるように、伝えていきたい。ひとり親サポートから始まった【スマイルキッズ】の取り組み
おなかいっぱい便の実施団体である北川添小学校協議会の大野さんのインタビューはこちら。
▶給食費の未納問題から始まった【こどもおなか一杯便】100円を握りしめてパン1つ買う中学生のために
佐賀県で2団体への支援をする中で、全国の他の地域でこども宅食を参考に事業を立ち上げた方々や、立ち上げようと準備を進めている方々がいることがわかってきました。
「多くの人とつながって、同じ方向に進む仲間を増やしたい!」と、事務局メンバーが全国各地の実施団体、実施検討団体を訪問し、立ち上げの経緯や事業モデルについてのヒアリング、現場の視察をさせて頂きました。
また、「立ち上げ準備中なので協力してください!」と声がけしてもらい、地域の関係者を巻き込むための勉強会を一緒に開催をすることもありました。
新潟、福井、長崎、宮崎。地域の特性や人口規模によってさまざまな形のこども宅食が行われていることがわかりました。
ただ、どの地域の方々も「こども宅食は食品を届けるだけではなく、困っている家庭を支援につなぐアウトリーチのための事業なんだ」「これまでの支援のアプローチを変えていくために、この事業を社会に広げていきたい!」という思いは共通で、同じゴールを目指す仲間として、情報交換や意見交換を継続的に進めていくことになりました。
「全国各地域で地域の特性に合わせて実施している様々なこども宅食事業の事例を共有したい!」
「実施している団体、実施を検討している団体と事業ビジョンや課題を共有したい!」
「横のつながりを強化して、連携しながら事業を全国に広げていきたい!」
ということで、こども宅食の関係者を一堂に集める「第1回全国こども宅食サミット」を開催しました。
基調講演や事例勉強会に始まり、食品獲得など事業の課題に関する専門家によるパネルディスカッション、制度化に向けた政治家の方々とのセッションなど、多様なプログラムを用意し、当日は参加者100名を超え、大盛況となりました。
【当日のプログラム】
基調講演「親子の”つらい”が見逃されない社会を目指して」
(一般社団法人こども宅食応援団・認定NPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹)事例勉強会「とどける、つながる、つなげる」の最新の現場を知る(佐賀、新潟、長崎、宮崎)
パネルディスカッション「データで進む福祉・変わる福祉」(産総研人工知能研究センター高岡昂太/特定非営利活動法人OVA土田/フローレンスこども宅食/日本ファンドレイジング協会)
パネルディスカッション「NPO・企業・行政が取り組む!親子に食品を届ける仕組みを作るには」(ココネット株式会社代表河合秀治/全国フードバンク推進協議会事務局長 米山 広明/食品ロス問題専門家株式会社office 3.11 代表井出留美)
クロージング・セッション「食のアウトリーチ支援をどのように制度にしていくべきか」(元厚⽣労働副⼤⾂・参議院議員 ⼭本⾹苗/ ⾃⺠党待機児童問題等対策特命チーム座⻑・衆議院議員 ⽊村弥⽣/成澤廣修 文京区長 等)
こども宅食サミットのレポートはこちら。
▶親子のつらいを見逃さない社会へ!第一回こども宅食サミット開催しました!
「事業を全国に広めていくためには、事業そのものではなく、事業が解決しようとしている社会問題自体に対する理解が必要だ」という思いから、新たなソーシャルアクションとして「#つらいが言えない」特集企画を開始しました。
「経済困窮など様々な要因で困りごとを抱えているにも関わらず、助けを求めることが難しい家庭がある」という問題があります。
この問題を、Webコンテンツという形でさまざまな情報発信をしつつ、ハッシュタグ「#つらいが言えない」を活用して、Twitterなどで当事者としての声を上げてもらうことで、この問題の認知度を上げていく、という趣旨の企画です。
#つらいが言えない特集の詳細は、こちら。
▶【#つらいが言えない】こども宅食応援団は、特集企画を始めます!
コンテンツとして、これまでに以下のような記事を作成しており、今後も情報発信を続けていく予定です。
▶なぜ助けを求めるのが難しいのか?各地で出会った「声なき声」たち #つらいが言えない
▶どんな声でもいいから、聞かせてほしい―支援の現場で見た #つらいが言えない―
これまでに立ち上げ支援に関わってきた成果が実を結び、12月は2件の新規のこども宅食事業が動き出すことになりました。
京都市と社会福祉法人あだち福祉会とともに、「京都こども宅食プロジェクト」の始動に向け、3者の連携・協力に関する協定を2019年12月11日に締結しました。
「こども宅食」モデルの導入は、政令指定都市では国内初、大都市圏では本モデル発祥地である東京都文京区に続いて2例目になります。
こども宅食応援団は、先進事例実践者としてのノウハウの提供や助言を担当します。
京都こども宅食プロジェクトの詳細はこちら
▶政令指定都市初の取り組み! 困窮家庭を支える「京都こども宅食プロジェクト」が始動決定
つなぐBANKは、長崎県ひとり親家庭等自立促進センター「YELL(エール)ながさき」の事務局長を務める山本倫子さんが長崎県長崎市で、こども宅食から着想を得て立ち上げた事業です。
これまで、こども宅食応援団は「つなぐBANK」の立ち上げから関わってきましたが、12月にはじめての開所を迎えました。
開所日には、ひとり親家庭を中心とした児童表扶養手当の受給家庭のうち、抽選で当たった約100世帯のご家庭に会員制の「宅所」に来ていただき、お米やレトルト食品やお菓子などの食品やケーキ、おもちゃをお渡しすることができました。(利用家庭への配慮のため、当日の写真をお見せできないのですが、とても笑顔のあふれる、明るい会になりました。)
つなぐBANKの詳細はこちら。
▶長崎市で新たな”宅所”事業『つなぐBANK』がスタートしました!
地域のみなさんの想いと実行力によって全国に広がりつつあるこども宅食ですが、5年ぶりに改定された「「子供の貧困対策に関する大綱」の中で「支援が届かない、届きにくい子ども・家庭とつながることが重要」というメッセージが明確に出されたこともあり、今後事例はさらに増えていくと考えています。
そういった流れの中で、こども宅食応援団は、単純に事例の数を追うのではなく、こども宅食を全国でできるような状態にするために解決しなければいけない、より本質的な課題に取り組んでいきたいと思っています。
「地域でこども宅食を立ち上げる人たちを応援しよう」ということで、こども宅食応援団という名前にしたのですが、実際には地域の方々や寄附者の方々に助けてもらうことの方が多かったような気もしています。
でも、そうやって事業を介して助けたり、助けられたりしながら、それぞれが今自分たちがやらなければいけないことをやっていくのが、こども宅食をよりよい事業にしていくこと、そして、全国に広げていく、一番よい方法なのかもしれない、とも思っています。
2020年は、2019年よりもさらに事業を前に進め、こども宅食応援団が目指す「親子のつらいを見逃さない社会」に1日でも早く近づけるようにしていきたいと思います。
引き続き、ご支援、ご協力、よろしくお願いいたします。がんばります。
「こども宅食」には該当する制度がないため補助金がつきません。
そのため、全て自己資金で運営をまかなっており、現在は「返礼品なしのふるさと納税」を財源として活動をしています。
一人でも多くの人に、この事業を一緒に育てていくクルーとして関わって頂ければと思っています。ぜひご支援ください。
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