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どんな声でもいいから、聞かせてほしい―支援の現場で見た #つらいが言えない―

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「こども宅食応援団」では、虐待防止期間が始まる11月から、特集企画「#つらいが言えない」を開始しました。

ぱっと見は「普通の人」でも、経済的に苦しかったり、DVを受けて怯える日々を送ったりしているかもしれません。そうした人たちがいる現状を理解し、解決に向けて社会はどう動くべきなのか。そんな思いで、私たちはこの企画をつくりました。

その中で、相談や支援の現場で実際にどのようなことが起きているのかが、普通に暮らしている人には見えづらく実感しづらい、というのが、この問題に光が当たりにくい要因の1つになっていると思っています。

そこで、長崎でこども宅食をアレンジした「つなぐBANK」の事務局を担当しており、長崎県ひとり親家庭等自立促進センター「YELL(エール)ながさき」の事務局長を務める山本倫子さんに、支援の現場で起きていることについて、お話を伺いました。

言葉にならない沈黙を受け入れて、待つ。

私は年間で約100人からのご相談を受けます。たくさんの人が様々な悩みを抱えているのですが、相談内容がプライベートに関わることのため、どんな方がどのような相談を寄せているのかについてはオープンにしていません。

相談は電話と対面で行うことがほとんどで、状況に応じてご自宅に訪問することもあります。

電話相談の場合、相談者の方がお話を始めるまで私は一言も発しないようにしています。

たいていの場合、どんな内容でも相談者の方はうまく話を切り出せずに黙ってしまいます。相談者の方は「しゃべっていいのだろうか?」「悩みを話すことで、どんな結果になるのだろう?」と不安を感じて、最初の言葉が出てこないんです。

ずっと悩みをひとりで抱え込んでいた方にとって、電話をかけること自体が勇気のいることです。ですから私が「お悩みは何ですか?」「お話してもらえませんか?」と言ってしまうと、意図せずプレッシャーを与えてしまい、ご自身が本当に言いたいこととは別のことを言ってしまうことにもなります。

特に夜間の電話では無言の場合が多いですね。でも、沈黙が30分続いたとしても私は待つと決めています。本人の第一声を大切にしたいので。「聞いてますから大丈夫ですよ」「時間はゆっくりありますよ」とお伝えして、ただ待ってます。

否定しないで聴く。そうすると、本当の悩みがわかる。

相談者の方が話ができるようになって、相談になったとき、私はとにかく聴き役に徹するようにしています。

まずは聴く。そして、どんな話であっても否定はしない。「それはちがうよね?」「こうした方がよかったんじゃない?」というような言葉は一切使わないですね。相談の中でご本人に気づいていただくことが大切だと思っています。

いろんな話をお互いしていく中で本人が気づいて「私、あれがちがったんですね!」となる瞬間がある。そのときに、「そうですね、そう思われたんですね」「今の言葉が、ご自身のお気持ちですね」という形でコミュニケーションを取っています。

聴くことが大切な理由は、当初のご相談内容が本当の悩みではないことが往々にしてあるためです。

たとえば、「子どもの学費のことでお話したいのですが」と切り出されたものの、話を聞いていくうちに、実は別のことの方が深刻だった、というケースがあります。学費のような当たり障りのない話題であれば相談がしやすいんですね。何か別のことを入り口にして相談に入るということはよくあります。

以前、貸付のご相談に来られた女性がいたのですが、夏場なのに長袖を着ていて、洋服の襟は首をすっぽり包むほど長かったんです。よく見ると、彼女の手には傷がたくさんあったんです。「もしや」と思って相談の中でそれとなく聞いてみると、女性は「実は主人から暴力を振るわれているんです」と打ち明けてくれました。

「私の家は経済的に苦しくてどうすればいいのかわからない」「配偶者からDVを受けていて、逃げ場がない」という苦しみを抱えていたとしても、その本音を他人にはっきりと伝えられる人はまれです。

なので、話を聴くことがとにかく大事です。聴かないと本当のことはわかりません。

人と比べなくていい。つらいなら相談して欲しい。

相談者の方にとっては、他人だからこそ話せる、という部分は大きいと思っています。

特に家族や友人、職場の人など、日常生活で関わる人に対しては悩みやつらさを隠したい、という人がほとんどです。もし顔見知りに自分の状況がバレたらどう思われるかが不安で、ひとりで抱え込んだまま過ごしてしまう、ということは決して少なくありません。

人って、周りと自分を比べてしまうじゃないですか。「自分はつらい思いをして暮らしているのに、なぜあの人は笑っているのだろう」みたいに。比較して「自分は劣っているな」「みじめだな」と感じると、つらいと言いにくくなるんです。

逆に、同じように苦しんでいる人たちでは話ができたりもする。依存症の患者の方で集まる会のように、同じ辛さが分かっている人同士の方が話せる。自分だけ集団の中で違うものになってしまうという恐怖もあるのかなと思います。

反対に、自分よりも苦しい境遇にいる人を見つけた場合、「自分はまだマシだ。だから我慢しないといけない」と思う方もいますね。特にご高齢のご相談者の方にはむしろ「我慢した方がいい」という考えが強い人も多いです。

本当はそんなことしなくていんです。誰とも比較なんてしなくていい。あなたが今つらいなら相談していいんです。

笑顔の子どもたち。つらいと言わない子どもたち。

つらいが言えないのは、大人だけではありません。

先日、両親が小学生の子どもふたりを置いて出て行ってしまい、おばあちゃんがお孫さんを年金とバイトの給料で育てているご家庭に出会いました。

おばあちゃんが入院してしまい、ご自宅へお子さんたちの様子を見に行ったんです。元気な男の子達でした。話の中で「昨日何食べた?」と何気なく聞いたんです。そしたら「マヨネーズとケチャップ食べたよ!」と笑って言いました。

私は一瞬意味が分からず冷蔵庫を開けました。おばあちゃんは「作り置きをしてます」と言ってましたが、冷蔵庫には何も入ってない状況でした。

「お腹すいたよね?何か食べようね」と言うと「そんなことないよ!おばあちゃんが作ってくれるから」と笑顔で話す子どもたちがいました。

おばあちゃんは、その子たち2人を育てるためにバイトして一生懸命頑張っていて、それを子どもたちもよくわかってるんです。だから、大好きなおばあちゃんに迷惑をかけないように、何も言わないんです。

そして、2人を育てているおばあちゃんも、自分が働くので精一杯なんです。年金をもらいながら、アルバイトもしていて、自分が育てなくてはという責任感がある。でも、自分はもう年だから、この先どうなるんだろうという不安もある。自分が育てなかったらこの子たちは児童相談所に行くんじゃないか……と沢山の事を抱えていて他人に言えない状況なのです。

でも、それを言う場所がない。どこに言っていいのかが分からない。電話の相談窓口もありますが、時間が決まっていたり、そこに電話をかけていいのかなと思ったり。特に昔の方って我慢することが美徳と思う方も多いので、電話をかけること自体にも勇気がいるんです。

 

どんな声でもいいから、聞かせてほしい。

つらさを抱えている渦中にいるとき、誰かが「あなたはひとりじゃないよ」と言っても、気休めにしか聞こえないかもしれません。

「1人じゃないよ」と言うのは簡単なんですよ。「いつでも話を聴くからどこにでも言ってください」と言うのは、簡単なんだけれど、自分も人に言えないという経験をしたことがあるので、簡単に「誰かに言ったほうがいいよ」とか「いつでも言ってね」と言うのが私にはちょっと難しいところがあります。

それでも、いまつらいのであれば、どんなことでもいいので相談窓口で気持ちを話してほしい、と思っています。どんな声でもいいから、聞かせてほしい。悩みを打ち明けるのはとても勇気がいることです。しかし勇気をふりしぼって相談したことで、状況が改善した人たちを私はたくさん目にしてきましたから。

実は、私がこの仕事をしていてよかったなって思うのは、相談が解決したときではなくて、相談者の方が来なくなったときなんです。

相談の中で話していくうちに、相談者の方が悩んでいる部分に光が当たっていく。そうすると「山本さん、自分が何を悩んでいたか整理ができました!」「自分で動けそうです」となるんですね。

「いつでも何かあったら、何かなくても連絡してくださいね」と言ってその方を送り出します。しばらくは「大丈夫かな……」と考えますが、その方からその後、相談が無くなったときに、その人が新しい一歩を踏み出したんだなと感じます。私は、私の必要がなくなったときが、いちばんうれしい。

 

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