今年1月、全国最大の食品流通ネットワークを持つ食品卸会社・株式会社日本アクセス(以下、日本アクセス)と、 全国の困窮家庭の支援者ネットワークを有する認定NPO法人フローレンス(以下、フローレンス)が手を取り合い、「こどもフードアライアンス」という新たな取り組みが始まりました。
こどもフードアライアンスとは、日本アクセスの呼びかけでこども宅食の取り組みに賛同した食品メーカー各社から提供された食品を子育て家庭へお届けする事業のことです。こども宅食応援団は、関連団体であるフローレンスのこの取組みにおいて、食品の提供先として全国の連携しているこども宅食実施団体につなげる役割を担います。これにより、各支援団体の課題だった食品の安定した確保が可能となり、サポートの充実につながります。
成果の検証を目的とし、昨年12月〜今年1月にかけて第1回トライアル配送を実施いたしましたので、結果をご報告いたします。
こどもフードアライアンスが生まれた背景には、コロナ禍における子育て世帯の経済状況の悪化があります。厚生労働省によると、生活困窮者から各自治体の「自立相談支援機関」への2020年度新規相談件数は前年度比3.2倍の78万6163件に上りました。
コロナ禍では雇い止めや減給のほか、休校や休園などによる家事、育児負担の増加など子育て家庭は大きな影響を受けています。とりわけ大きな打撃を受けたのは、ひとり親や低所得の世帯でした。
こうした状況に伴い、こども宅食の利用者やこども宅食の支援団体の数は増え続けています。2020年4月には6府県10団体だったこども宅食応援団の連携先団体数は、2021年12月時点で28都道府県60団体以上にまでに急増しています。
しかし増え続ける需要に対応するには、より多くの食品を安定して用意しなければいけません。
こども宅食応援団は、全国のこども宅食実施団体に向けて企業からの寄付等でいただいた食品等を提供しています*。しかしそれだけでは足りないため、各団体は独自に食品を購入したり、地元の企業や個人に寄付を募ったりすることで食品の調達をしています。また多くの団体は限られた人員で活動をしており、食品の調達に時間も人員も割きづらいという課題に直面しています。
(*関連団体であるフローレンスの連携によるものを含む)
こうした中でこども宅食の目的や活動に共感し、協力を名乗り出てくださったのが日本アクセスでした。同社は全国に約1万社のパートナー企業を有し、各社に協力を呼びかけてくださることでこども宅食応援団やフローレンスだけではアプローチできなかった食品メーカーからの寄付をご相談できるようになります。日本アクセス、各食品メーカー、フローレンスが連携(アライアンス)することで、食支援を必要とするご家庭へ食品をお届けできるのです。
こどもフードアライアンスの仕組みは下の図の通りです。日本アクセスがお取引先へ食品提供を呼びかけ、協賛してくださる企業から寄付を募ります。各社から送られる食品はフローレンスが一括管理を行い、こども宅食応援団が連携する全国のこども宅食実施団体に配送します。
――こどもフードアライアンスにおける食品提供の流れ
第1回トライアル配送は、全国1万世帯に約8万食をお届けする大規模な取り組みとなりました。今回、日本アクセスの呼びかけに賛同くださったのは、味の素AGFやエスビー食品など14社。ご飯物やお餅、即席麺、カレー、加工フルーツ、ジュースやお菓子などバリエーション豊富な食品が集まりました。
こども宅食を利用するご家庭では生活が厳しく、料理をする時間が取れなかったり、そもそも栄養バランスの良い料理の仕方がわからなかったりと、食事が二の次になりがちです。また電気やガスといったライフラインを止められている家庭も少なくないことから、レトルト食品は人気です。保存がしやすく、味のバリエーションもたくさんありますし、封を開ければそのまま食べられる手軽さはありがたいですね。
第1回トライアル配送での食品ラインナップについて支援団体にアンケートを取ったところ「非常に満足」が79.1%に上りました。団体の購入予算では買えない商品も多かったことから、「見たことが無い便利な商品でご家庭に大変喜ばれた」や「品数・内容ともに地域では集められない」など、「こどもフードアライアンスだからこそ実現できた内容」との評価を得ています。
約8万食を全国に届ける際には配送料がネックになります。第1回トライアル配送では、各食品メーカーご納品分、フローレンスより各支援団体への配送分のどちらの配送費も日本アクセスがご負担くださいました。
商品の中でもとりわけ届け先家庭からの人気が高かったのは、「ナショナルブランド(以下、NB)」のレトルト食品でした。一般的にはプライベートブランド食品(以下、PB食品)の方が安価なため、経済的な理由からPB商品しか選択できない方が多いのです。とある支援団体担当者は「ラインナップの中にNB商品を見かけると、まるでブランドものを身につけたかのように喜ばれていました」と振り返ります。
各支援団体からはほかにも以下のような感想が寄せられました。
「喜んでもらえる品物が多くて活動しがいがあり、スタッフのモチベーションもあがりました。明らかなロス品だと欲しくない物が多かったり、お届けしてもかえって困られることもあるので、本当に必要なものが寄贈されることはとてもありがたいです。メーカー様の印象アップにもなっていると耳にします」
「食品の値上がりが進む中、経済的な不安から家庭内のストレスも高まっており、定期的にお届けしている食品をきっかけに一家団欒の時間を築いているとお話しを聞きます」
「身近な地域からの支援もありがたいですが、全国区の大企業さんから直接支援がある。という事自体が、ひとり親家庭さんにとって、とても大きな力になっています。 ひとり親家庭のお母さんは、『ひとり親家庭は世間から見捨てられていると思ってました』と口々に仰います」
第1回トライアル配送で多大な協力をくださった日本アクセスは、「こどもフードアライアンスを継続することに大きな意義がある」と今後の活動に強い意欲を示し、次のようなコメントをくださいました。
「今回のトライアル配送では実際に全国にある支援団体関係者と直接話したり、配達先のご家庭の様子を見たりする機会を得ました。さまざまな事情で生活が厳しいご家庭があることを耳にしたことはあったものの、支援団体がどのような形でご家庭に寄り添い、サポートをしているのかについては全く知りませんでした。今回、現場に足を運ばせていただいたことは、大変貴重な体験になりました。
また、当社がパートナー企業とこども宅食とをつなぐ役割を担うことで、食品の安定した確保がしやすくなったことにも喜びを感じています。パートナー企業担当者からはアウトレット品のみならず正規品での定期的な支援もしていきたいとのお声をいただいています。
全国には、生活のサポートを必要とする方がいらっしゃいます。こうした方々を支えるにあたって、企業ができることはあると当社は考えています。行政、支援団体、企業が連携しやすい環境が整備されていくことを願っています。今後も微力ながら、こどもフードアライアンスに貢献してまいります」
全国1万世帯、合計約8万食の大規模なトライアル配送でしたが、大きな混乱はなく利用家庭、支援団体双方に喜んでいただくことができました。配送後に行なったアンケートでは、「親御さんに特に喜ばれる」「お子さんに特に喜ばれる」ともに回答率が高く、親子ともに満足していただけました。
第1回トライアル配送の成功を踏まえ、2022年度も規模を拡大して第2回トライアル配送を実施する見込みです。しかし原油価格の高騰や輸送コストの増加などで食品の値上げが続いており、食品メーカー、卸ともに先行きを見通しづらい状況にあります。このような中でも「自分たち以上に厳しい状況に置かれるであろう子育て世帯をどうにかしたい」とおっしゃっていただいた日本アクセスをはじめ、賛同してくださる食品メーカーのみなさんには感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
こども宅食応援団では、こどもフードアライアンスなどの取り組みやノウハウを提供する勉強会の実施などを通じて、全国のこども宅食の実施をサポートしています。
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