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地域の支援メニュー利用率20%以下の一方、こども宅食利用家庭の82.6%が「気持ちが豊かになった」など精神面に変化。『こども宅食利用家庭に関する調査』結果

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新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出や延長、小学校等の臨時休校などが相次いでいます。外出の自粛や地域の子育て支援施設等の事業縮小により、さまざまな困難を抱えるご家庭でも、孤立・孤独がより深まることが懸念されます。

一般社団法人こども宅食応援団では、定期的な食品のお届けをきっかけにご家庭と積極的に繋がりを持つ「アウトリーチ(※1)」型の支援で子育て家庭の孤立を防ぐ「こども宅食」の実施実態を明らかにするため、2021年3月に実施団体と利用家庭、それぞれにアンケート調査を実施しました(以下、本調査)。今回は本調査から、利用家庭に関する調査報告を公開します。

現在、こども宅食は全国6,399世帯とつながりを持っています(※2)が、本調査により、利用世帯の中に他の行政等の支援を利用していない「つながりにくい家庭」が一定数存在し、こども宅食の事業がアウトリーチ手段として有効であることが示されました

また、こども宅食を利用したことで、気持ちが豊かになるなど、利用家庭には前向きな変化が現れていることが明らかになりました。

こども宅食利用家庭に関する調査 概要

実施期間:2021年3月8日(月)~4月30日(金)
実施方法:Webアンケート
実施者:一般社団法人こども宅食応援団、認定NPO法人フローレンス
実施対象:現在、こども宅食事業を実施している全国の民間団体・自治体の事務局がつながっている利用家庭
※国の「支援対象児童等見守り強化事業」でこども宅食型(お弁当配送型含む)の事業をしている団体を含む
回収率:5.4%(有効回答数:345)※「こども宅食の実施実態に関する調査報告」において、実施団体がつながっている家庭として算出した6,399世帯を母数にした場合の推計値

 

調査結果ピックアップ

1. こども宅食は食生活の改善だけではなく、「気持ちが豊かになった(82.6%)」、「子どもに前向きな変化があった(72.8%)」など、QOLの向上にも貢献している。

こども宅食の利用によって「献立を考えるのが楽になった」など調理の負担が減り、回答者の86.4%に食生活の改善がみられています。また、82.6%が「こども宅食の利用によって気持ちが豊かになった」、72.8%が「笑顔や会話が増えたなど子どもに前向きな変化があった」と回答しており、利用家庭のQOLの向上にも貢献していることが分かりました。

精神的な変化については、東京都文京区の「文京区こども宅食」の利用家庭アンケート調査でも、84%に「気持ちが豊かになった」「社会とのつながりを感じられるようになった」などのポジティブな変化が見られています。(文京区こども宅食2020年インパクト・レポートより)

継続的な繋がりが精神面でも良い影響をもたらすことは、どの地域のこども宅食の事業においても共通する効果であるといえます。

2. 地域の支援メニューの大半において、半数以上が「利用したくない」または「知らない」

生活に困ったときや子育てに悩んだときなどに、地域の支援、福祉サービスなどの社会資源を利用したことがあるかどうかについて伺ったところ、現在の利用率は高いものでも20%未満の利用に留まっていることがわかりました。また、大半の支援メニューにおいて、過半数が「利用意向が低い/ない」または「地域にあるのかどうか知らない」と回答しました。

この結果から、こども宅食は、これまで行政や民間団体がつながることの出来なかった親子と関係を築くことができており、アウトリーチ手段としてこども宅食が有効であることが示されました。

また、「過去に支援機関に相談し、嫌な思いをしたことがある」という設問には2割以上の世帯が「とてもあてはまる」「あてはまる」と回答しています。

過去に支援機関と関係性構築がうまくいかなかった経験が、現在の支援に繋がりづらい要因の1つになっていることが示唆されます。

「暴力で離婚しようとして相談に行った際に、母親である私の病気などについて触れて、そんなんで離婚できるわけないでしょ」と言われた。

 

相談をしている間、威圧的にかぶせて話してきたり、自分の価値観のみで受け答えをされて、もうここに話しても意味がないな、と思った

 

支援機関で過去に嫌な思いをしたときの状況についての自由記述には、親御さんたちの当時の辛い思いが吐露されています。

3. 多くの利用家庭がこども宅食実施団体に好意的な印象を持っており、良い関係が築けている

現在利用中の地域のこども宅食事業や実施団体に対するイメージを聞くと、86.9%が「実施団体のことを信頼している」、82.9%が「自分たちの立場をわかってくれる支援団体だ」と答えており、こども宅食の実施団体と利用者は良好な関係構築ができていることがわかります。

4. こども宅食の利用を通じて、他者との関わりに関する考え方にも変化が生じている

こども宅食を利用することで、45.2%が「”周りに頼らず自分で解決せねば”という考え方が弱くなった」、42.4%が「不安や心配事を誰かと共有したり、吐き出すようになった」と回答しており、自ら支援を求める際のハードルが下がっていることが分かります。

また、回答者のうち、22%が実際にこども宅食実施団体へ相談を行ったことがあると回答しています。そのうち、支援につながったご家庭は44%、支援を受けたご家庭のうち、「支援を受けて楽になった」と感じたご家庭が85%と、こども宅食実施団体との良好な関係構築が相談へのハードルを下げ、新たな支援に繋がるという循環が生まれていることも確認されました。

尚、同時期に行ったこども宅食実施団体向けの全国調査では、「支援を受けていることを周囲に知られないような配慮をする」など、利用家庭との関係構築のために各地の団体が共通して配慮・工夫している点や、「教育や進学に関する相談、生活用品など必要なものに関する相談が多く、家庭をさらなる支援に繋ぐための橋渡しとなるような情報提供を行っている」といった活動の実態が調査によって示されました。

調査レポート詳細を公開します

本アンケートの調査レポートの詳細は、こちらからご覧いただけます。

※発表資料等でご使用の際には、弊会の取材申込フォームに使用用途を記載の上お知らせください。また、引用元として『一般社団法人こども宅食応援団「こども宅食の実施実態に関する調査」』を併記いただきますよう、お願い申し上げます。
>>取材申込フォーム

※全国のこども宅食団体を対象に行った実施実態調査レポートはこちらをご覧ください


本調査で、全国50ヶ所以上に広まるこども宅食が、食生活の改善だけではなく、前向きな気持ちへの変化や相談/支援への心理的ハードルが下がるなど、利用家庭にポジティブな効果をもたらしていることが明らかになりました。また、地域の支援とのつながりが希薄なご家庭ともしっかりと関係を構築し、さらなる支援に繋げられていることが確認できました。

調査結果を受け、こども宅食応援団では、全国のこども宅食が支援に繋がりにくいご家庭とより繋がり、前向きな変化を生み出せるよう、実施団体への先行事例の共有や研修の提供などの伴走支援をおこなっていきます。また、安定的な財源での運営ができる土壌づくりのため、広報発信活動や、「国や厚生労働省への制度改善に向けた提案」などの活動を進めていきます。

 

こども宅食応援団の活動運営費は、ふるさと納税を通じた全国の皆さんからのご寄付によってまかなわれています。

是非ともご支援のほど、よろしくお願いいたします。

食をきっかけに親子とつながる「こども宅食」を全国に広げたい!

 

【一般社団法人 こども宅食応援団について】

「こども宅食」は生活の厳しい子育て家庭に定期的に食品を届ける取り組みです。食品のお届けをきっかけにつながりをつくり、見守りながら、食品以外の様々な支援につないでいきます。こども宅食応援団は、この「こども宅食」という仕組みを、日本中に広げていくため、こども宅食事業に取り組む自治体やNPO等に対して活動資金やノウハウの提供、事業推進のための伴走的な支援を実施しています。また、こども宅食事業や事業を通じて解決しようとしている社会課題の認知度拡大のための広報活動を実施しています。
https://hiromare-takushoku.jp/
※「こども宅食」は登録商標です。

 

※1:アウトリーチ:支援が必要であるにもかかわらず届いていない人に対し、支援機関などが積極的に働きかけて情報・支援を届けるプロセスのこと

※2:こども宅食の実施実態に関する調査報告書(2021年6月)より

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