「生活が苦しいと知られたくない」
「職場と学校の往復だけで、地域の人との接点がない…」
経済的に苦しかったり、子育てや介護で悩んでいたり、さまざまな理由で厳しい生活を送っていても「つらい」と声を上げることができない。聴こえない「声なき声」を上げる家庭に支援が届かない。
今そうした問題がこの社会にある現状を理解し、解決に向けて社会はどう動くべきなのか。「こども宅食応援団」では、虐待防止期間が始まる11月から、特集企画「#つらいが言えない」を開始しています。
今回は、宮崎県三股町で実施しているこども宅食「みまたん宅食どうぞ便」を利用しているご家庭について、インタビューを実施しました。
家庭の#つらいが言えないはどんな形で生まれているのか、こども宅食を利用することで生まれたご家庭の変化とは……?
ご家庭の生の声を通じて、#つらいが言えない がどんな形で生まれているのか、こども宅食を利用することで生まれたご家庭の変化についてお伝えしたいと思います。
人口2.5万人の宮崎県三股町では、社会福祉協議会と地域のボランティアの方々が協力して「みまたん宅食どうぞ便」(以下、どうぞ便)という取り組みを進めています。
どうぞ便は、生活が大変と感じている子育て家庭に、月1回のペースで地域の農産物やお米といった食品をボランティアさんがお届けします。そしてお届けする中で、お困りごとを見つけたときには、ご家庭に必要なサポートとつなぐ、という事業です。
詳細は、こども宅食応援団webサイトの「みんなが無理なく、ちょっとずつ。多彩な地域プレーヤーが連携する新規事業【みまたん宅食どうぞ便】」を参照下さい。
今回は、どうぞ便の利用家庭の方数名に以下の4つの点について、お話を聞きました。
①どうして、どうぞ便に申し込んだのか?
②どうぞ便を利用してどう感じたか?
③利用してどのような変化が生まれたか?
④利用してみたいという人に伝えたいことはあるか?
どうぞ便では「生活に困り感を感じている、18歳以下の子どもがいる家庭」を対象としていて、特に就労や収入などの要件はありません。
そのため、今回インタビューをさせて頂いたご家庭も、無職、フルタイムのシングルマザー、共働きの自営業……ご家庭の状況は様々でした。
どうぞ便は無料で利用でき、かつ利用しやすいようにデザインや文言などに相当の工夫をしているのですが、それでも「私より困っている人がいるんじゃないか」、「私なんかが利用していいのか」、「生活が苦しいのを周りに知られたくない」、「利用するのに何か条件がいるのでは」など、申込みに対してためらいや抵抗感を抱えていることがわかりました。
「#つらいが言えない」という問題の根深さ、難しさがここにあるように感じます。
どうぞ便では、ご家庭の人数に応じて地域の農産物やお米、加工食品と、それらを使った料理のレシピを同梱しています。
ご利用家庭からは、
「高くて買えなかった野菜がもらえて食卓が変わった、子どもが野菜を食べるようになった!」
「いつも作るものが変わらなかったけれど、レパトリ―が増えました」
という声がありました。食卓で子どもたちの喜ぶ顔が思い浮かびます。
そして、とても嬉しかったのは、シングルマザーのご家庭の感想です。
「今まで買い物行っていた時間を、子どもと一緒に過ごす時間に充てられました」
一人で子育てする忙しい日々の生活の中で、買い物に子どもを連れて行くことはかなり大きな負荷になります。時間の余裕は心の余裕にもつながります。食品の配送でこういった変化が出せたこともとても嬉しい発見でした。
また、どうぞ便では配送は地域のボランティアの方々が行っています。同じ方が毎回宅配するので少しずつ顔見知りになります。
そのボランティアさんからの声がけに対する感謝の声もありました。
時間がない、気持ちに余裕がない中で、イベントなどに参加するなどして、地域とのつながりを作ることは容易ではありません。
地域との接点が少なく、孤立しがちなご家庭にとっては、「自分たちを見守っている人がいるんだ」と感じられるちょっとした声がけが、とても大きな意味を持っていることが改めてわかりました。
あるご家庭の方が「今回幸せを頂いたので、いつか自分もそちら側に回りたい」と言っていたのが印象的でした。
支援をする/支援をされる、という関係は一方通行にも見えますが、実際には、今支援をする人は昔支援を受けた人であることもありますし、今支援を受けている人も次は支援をする人になりえます。
子育てや介護を一人でやることはできません。社会、地域からの助けは必要で、そこで助けられた分を別の誰かを助けることで返す「恩送り」が地域で生まれていくと、#つらいが言えない を生み出している壁は少しずつ消えていくのではと感じました。
利用してみたいと感じている方に向けて「助けが言える人がいることがありがたいので利用してみてほしい」、「勇気を出して申し込んでほしい」といった応援の声もありました。
これは、どうぞ便が提供しているサービスの質の高さと、運営している人の思いが伝わった結果だと思います。
このような事業が世の中に広まっていくことで、#つらいが言えない 家庭が少しでも減っていくのではと、事業の今後の可能性を強く感じました。
最後に、今回のインタビューにご協力いただいた、三股町社会福祉協議会の相談員で、どうぞ便スタッフの内窪さんからは以下のコメントを頂きました。
「ご利用家庭の皆さんは、それぞれ保健師さん、保育園、どうぞ便のチラシと様々な入り口から、勇気をもって入ってきてくれています。
皆さん、今は大変な環境におられますが、それぞれに力を持った人ばかりです。チャンスがあれば、社会でもきらめく人だと感じています。
そのような人が増えることを願い、少しでもそのお手伝いができればと考えています。」
今後も、こども宅食応援団では、地域で事業を推進している実施団体の方々の声や利用家庭の声を、社会に向けて発信していきたいと思っています。
「こども宅食」は全て自己資金で運営をまかなっており、現在は「返礼品なしのふるさと納税」を財源として活動をしています。この事業をさらに全国に広げていくためには、みなさんのご協力が必要です。ぜひご支援ください。
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