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2025.03.14

こども宅食シェア会リポート 「こども宅食を支える仲間づくり・地域の巻き込み力」

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全国各地で活躍するこども宅食の実施団体と「つながって」、事例を「きいて」、「かんがえる」こども宅食シェア会。今回は「こども宅食を支える仲間づくり・地域の巻き込み力」と題して、福井県越前市でこども宅食・こども食堂・学習支援など8つの事業を実施している、越前市「みんなの食堂」実行委員会代表の野尻富美さんにご登壇いただき、事例を交えお話いただきました。

「みんなの食堂」実行委員会は、2016年4月に、『「地域で暮らす」「地域で育つ」を地域で共に支える』を理念に立ち上げられた団体です。学習支援や海外にルーツのある親子のためのプレスクール、校内居場所カフェ、晴れ着プロジェクトなど幅広く地域に根ざした取組みを実施しています。

<団体の公式Facebook>
https://www.facebook.com/EchizenshiMinnanosyokudo/

<こども宅食応援団HPでの紹介記事>
https://hiromare-takushoku.jp/2022/05/02/4545/

野尻さんが活動をはじめたきっかけは、ご主人が経営する病院「野尻医院」での訪問診療、訪問看護の現場からみえてきた「地域で必要とされる取組み」が多くあるのではないかという気づきでした。
「地域に頼れる支援がないのであればはじめよう」そうして取組んだ事業も数多く、病児デイケア、障害をもったお子さんの預かりや、学校や保育園が休みの時に一時預かりができる施設など、地域のあったらいいなを、行政からの委託事業や介護保険事業など様々な制度を活用して事業として形にしていきました。

こどもから高齢者まで、様々な声に答える形で事業を行っていましたので、充分に必要な方への支援が届くようになったと感じられていたそうですが、ある時、家族がいても孤独を感じている高齢者の方がいることや、不登校のこどもを持つ保護者さんの声、ひとり親家庭のしんどさなど、当時の制度の中では対応することが難しい事例があるという話を耳にするようになりました。

「様々な支援を整え 完璧だと思っていたのに、隙間がたくさんある」そう感じていた時に目にしたのが、子ども食堂が東京ではじまっているという新聞記事でした。その記事をヒントに、「孤立や貧困だけでなく、困りごとは様々ある。世代、理由に関わらず、何かみんなで食べるという事がいいんじゃないか」とスタートしたのが「みんなの食堂」です。

「みんなの食堂」は、任意団体として運営されています。医療法人の看板を外し、地域で仲間をみつけて地域の誰かと一緒に運営をした方が隙間を埋めやすいのではないか。その方が地域に根ざし、親子にも学校にも地域にも、そして自分達のためにもなるのではないかと考えての事でした。誰でも気楽に集まって、食事をしたり愚痴を言ったり、泣いたり笑ったりしながら過ごして、よし明日からまた頑張ろうねって思えるような場所であれたらいいなというのが、野尻さんの一番の思いです。

人と人とがつながり 何かを解決できるきっかけになるように

みんなの食堂をきっかけとして、学習支援や食のサポートなど新しい取り組みもスタートしています。越前市では、ブラジルなど外国籍の移住者が増加し、地域の学校になじむことができないなど新たな困りごとを抱える親子も多く、高校での学習支援や異国の地で子育てをする保護者とその子どもを対象とした小学校入学前のプレスクールを実施するなど、外国籍の親子の支援にも力をいれています。

こども宅食の取組みとしては、みんなの食堂へ来ることのできない家庭へ、食品などのお届けを通してつながりを持ち見守りを行っています。また、みんなの食堂ではフードパントリーを開催し、来所時に必要な品物を選んで持ち帰ることができるように工夫しました。

活動を支えるのは、たくさんの地域のボランティアスタッフの存在です。調理をすることが得意な人、おしゃべりをすることが得意な人、不登校の経験を持つ卒業生など、参加してくださる方それぞれの得意をちょっとずつ持ち寄って共有していくことで、自然と支援の輪が大きくなっているそうです。

大切にしていることは、「誰かと誰かがつながっていける居場所になること」。
ひとりではできないことも、誰かとつながることで、解決できることもある。地域の力をあつめて、困りごとをひとつずつ解決していけるように取り組みを行っています。

月に1、2回の食堂や学習支援だけでは、困りごとが大きく改善することは難しくもありますが、そのつながりの中で、何かしんどいことがあった時に「助けて」と言える存在になること。相談できる人だと思ってもらえる関係性をつくることが大切だと野尻さんは語ります。

また、その困りごとを解決するためには、相談された時にどうするかを考えておくことも重要です。支援を実施する私たちも「助けて」と言える、相談することのできる、専門家・関係する機関と(行政・児相・警察など)しっかりとつながって連携し、信頼関係を築いておくことが必要となるのです。

「学校など制度の垣根を越えてしまうと、行き場のなくなってしまうこども達がいる。だけど、私たちは手を放すタイミングがどこにもないので、一度つながったら離さないで、資格がないからこそできる、私たちが手を離さないという事を大切に活動を行っていきたい」

野尻さんの思いは、地域に根ざし、支援の輪が広がっています。

質疑応答の時間にはたくさんの質問が寄せられました

Q.たくさんのスタッフさんがいる中で、支援家庭の情報についてはどのように共有されていますか?
野尻さん:基本的に関わるスタッフには、オープンに話をしています。ただ、児相や行政などとの連携事例などは私一人が把握するようにしています。ボランティアとしてほんとうに楽しく調理などに参加してくれている方もいます。なので、その方々には負担をかけず自由に活動してもらうように心がけて、一部のコアなメンバーには事情を共有しながら相談するようにしています。

Q.宅食をうけるにあたって、支援家庭だと知られたくないなど、ウェルカムではない世帯もありますが、こどもの課題が見えていて、行政なども把握しているのに介入できない、そんな時にどうやってその壁を突破していくようにされていますか
野尻さん:申し込み当初に必ずLINEや電話でつながって、全員へのお知らせをするようにしながら、個別に仲良くなれるように言葉かけをしています。次第に相手を知っていくように対話を続けて家庭の興味や状況を知りながら、みんなの食堂に来てもらった時に、話があうようなスタッフに対応をお願いしたりなど関係性がつながるような働きかけをしています。つながりながら、深刻なケース(通報レベル)にであった時には、スタッフ間で共有して次の対応を検討しています。(つながり先の児相・行政・社協などとの連携も重要)

Q.行政などと信頼関係を築くために大切にしていることは
野尻さん:市の担当課と、地元の児童家庭支援センターとは多く交流して対話することを大切にしています。支援の状況、家庭の事情を共有しながら、どのように支援家庭を見守り支えていくのかということを連携しながら進めていくようにしています。ひとつひとつのケースを大切に進めていくなかで、お互いに信頼関係を作ることができ、行政の対応などについてもケースごとに学んでいくことで、次の機会に活かされていくように感じています。
それぞれの立場、役割があって、民間であるからこそ、24時間LINEや電話で対応ができますし、しっかりと話を聞く時間も持つことができますので、行政ではできない、やらない事ができる事を強みとして、活動を行っています。

Q.支援を拒否している方たちの掘り起こしはどうしていますか
野尻さん:支援をしていますよという言い方を基本していないので、拒まれるというケースは少ないと感じています。食堂には来られないけれど学習支援には参加したいなど、様々な角度からつながることができたり、また、つながった方が、境遇の近いお友達を連れて来てくれるようになったりもあります。近所のおばさん、お姉さんという関係性で関われている事がいいのではないかと思っています。

Q.これだけの活動をおこなう中で、バックオフィスの作業など、どのようにされていますか。資金はどのようにされていますか
野尻さん:報告書の作成など煩雑な事は、主に私が担当して、一部スタッフの手を借りて実施しています。活動資金は、補助金や助成金のほかに、皆さんからよせて頂いたご寄付で実施しています。また、ボランティアでは実施しきれないケースへの対応ができる体制を整えるために、2025年4月からは、医療法人野尻医院と児童養護施設一陽、越前市社会福祉協議会の3者コンソーシアムを組んで、国の「児童育成支援拠点事業」を受託し支援を拡充していく予定になっています。

たくさんの感想が寄せられました

質疑応答の時間には様々な感想や質問がよせられ、あっという間に時間が過ぎていきました。
参加された皆さんからは、

「共感することがとても多く安心感をもってお話をきかせてもらった」

「とても力を頂くお話で、いろんな角度から人と交わる事ができるんだなと思った」

「日々の活動の中で心折れることもあるけれど、お話を聞いて、私たちにもまだできることはたくさん
あると感じることができた」

など、たくさんの共感の声が寄せられました。

「誰かと誰かがつながれば、何かを解決できるきっかけになる」

「地域に頼れる支援がないのであれば、はじめよう」からスタートした野尻さんの活動は、行政、民間、学校の垣根を超え、できる事をできる人が実施して、その思いを紡いでいくように活動が拡がっています。

こども宅食応援団ではこれからも、シェア会などのイベントを通じて全国の皆さんの活動を共有し、学びを深めていきます。

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