子育て家庭に食品等のお届けを行いながら見守り支援を行うこども宅食の事業。
実際にご家庭に訪問しているスタッフは、どのような人が多いのでしょうか。社会福祉士やソーシャルワーカーなどの、相談支援や見守り支援の専門家でしょうか。
訪問を担当しているスタッフは、研修を受けたボランティアが担っている団体が多くあり、そのほとんどが「地域の普通の人」です。
専門家ではない「地域のおじちゃん・おばちゃん」だからこそ築けるコミュニケーションを活かした、福井の2団体の活動をご紹介します。
かさじぞうキッズキッチンを運営するNPO法人かさじぞうは、小学校の読み聞かせボランティアに参加したお母さん達のグループの活動から始まりました。2005年に地元の小学校で読み聞かせを始め、1年後には紙芝居公演活動を保育施設、高齢者施設、障害者施設へと広げ、サークル「かさじぞう」を立ち上げました。皆さんご存じの「かさじぞう」のものがたりの題名で『おじいさんのボランティア精神の礎となった心を少しでも受け継いでいきたい、みんなの笑顔を守るかさになりたい』という想いから名付けました。
2015年にNPO法人を取得し、紙芝居公演や音楽会の実施などのOMOIYARI活動、地場産食材の商品づくり、それらを活かしたかさじぞうふれあい広場(子ども食堂)・こども宅食・学習支援活動を行っています。(※コロナ禍になり、現在は公演活動を自粛し、子どもたちや高齢者への支援活動に重点を置いた活動となっています。)
2019年から行っている月に1回のかさじぞうふれあい広場では、地域の人たちと子どもたちがふれあいながらものづくりや昔なじみのゲーム・紙芝居・みんなのショータイム・体験食堂(現在はお弁当配布)をする中でお互いに見守ります。
昨年5月から月に1回、こども宅食を始めました。社会福祉協議会や行政との連携を取り、ひとり親家庭などの子どもたちにお弁当やお菓子、日用品等をお届けし「一人じゃない」と、子どももご家族も笑顔になれるよう願いながら見守っています。また、学生や高齢者にも配布を行っています。
7月からは学習支援を開始し、主に小学生の宿題の習慣づけのお手伝いや生活のルール等を指導しています。平日は10名ほどの利用ですが、長期休みの参加者は40名にもなります。
地域の方たちとの関わりの中でようやくほんの少しお話をしていただけるようになったばかりで、信頼関係を築き笑顔を引き出せるまでには時間を要するようです。
かさじぞうのスタッフは、地域の人たちも笑顔になって明日への生きる活力を見出すお手伝いができたら、と自分たちも楽しく、笑顔で関わりたい、笑顔を守る「かさ」になりたいと心がけています。
越前市「みんなの食堂」は、2016年4月から、仲間と共に月に2回の食堂を開催しています。子どもだけを対象にせず、対象者は「みんな」。誰でも参加できる場にすることで、その中にしんどさを抱えた方が紛れてくれるといい、と思いスタートしました。
食事を「きっかけ」に集まり、一緒に食べながらおしゃべりすることで、お互いを知り「この人になら話せるかも」という相手を見つけてくれるといいと思っています。しんどいことがあったり、困ったことがあった時に「食堂に行って聞いてみよう」と思ったり、食堂以外の日でも困った時には連絡する関係を作れるといいな、と願い、運営を続けています。つながりを作るとともに、つながる力を付けることができる場になりたい。そして、つながった手は離さない。ここに集まる方が居心地のいい場所だと感じてくれる場になることを目指しています。
あるとき、食堂に毎回来ていた方のお顔が見えないことがありました。心配したスタッフから、「食事を届けて様子を見てこよう」という提案があり、宅配も当初は極少数でしたが始めました。自分たちを気にしてくれる人がいることを喜ぶご家庭もあり、スタッフとご家庭のつながりも強くなりました。一方で、なかなかドアを開けてくれないご家庭もありました。しかし、訪問を続けることで、ドアとともに心も開いてくれ始めたことを実感しています。
私たちには専門の知識はありません。ただの近所のおせっかいおじさんとおばさんの集団です。でも、だからこそ気軽におしゃべりできると信じています。
コロナ禍になり、お弁当のお渡しを始めました。みんなの食堂や学習支援の「つながる場」ができなくなってしまいましたが、つながりを保つための工夫をしながら、お弁当のお渡しをしています。
みんなの食堂のテーマは、『「地域で暮らす」「地域で育つ」を地域で共に支え合う』です。私たちスタッフも支えつつ、支えてもらいながら活動を継続したいと思っています。
同じ福井県内で活動をする2団体をご紹介しました。
専門的な知識やスキルを持った人の支援も大事ですが、ご家庭とつながり、信頼関係を築いて話をできる関係性になるには、「地域の普通の人」だからこそ出せる気軽さや安心感があるのかもしれません。
こども宅食は単なる食支援ではなく、食をきっかけにつながり、定期的なつながりを保ち、継続して関わっていくことでちょっとしたことを話せる関係性を築くことができる取り組みです。
こども宅食応援団では、こども宅食の活動を全国に広げるため、こども宅食を実施したい団体や自治体向けの勉強会や資料提供を行っています。
また、様々な地域で取り組みやすい事業にするため、自治体や国へのロビイング活動も行っています。
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