2021年12月25日。佐賀県唐津市の公民館に、クリスマスケーキの飾りつけを楽しむ親子の姿がありました。
「フルーツのせる?」「クリームはたっぷりね」「いちごがおっきい!」「ろうそく飾ろうね!」
などなど… 飾りつけに夢中な子どもたちの声と笑顔に、寒さも忘れるひとときでした。
この日は、クリスマス。佐賀県唐津市のこども宅食「ハッピーキッズ」では、いつもはご自宅に届けている「こども宅食」を、この日は特別に公民館をお借りして、ご家族に取りに来ていただくスタイルに変更しました。
公民館の入口には、クリスマスツリー。会場のデコレーションも施して準備完了。
いつもの品物にプラスして準備したのは、「手作りのオードブル」と「クリスマスケーキのデコレーションセット」。ご希望の方には、クリスマスケーキのデコレーションに親子でチャレンジしてもらいました。
――手作りのオードブル
その出来上がりはさまざまで、もりもりのクリームにトッピングのチョコレート満載のケーキや、几帳面に何度も何度も生クリームを整えて完成した、お母さんもびっくり!プロ顔負けのデコレーションケーキ。かわいさ満点、カラフルなろうそくいっぱいのケーキなど。
――デコレーションしたクリスマスケーキ
笑い声とともに完成したケーキは、どれも幸せいっぱいのクリスマスケーキでした。
ハッピーキッズ代表の龍さんは、「生クリームのデコレーションを親子でして、思い出を作って欲しくて」と、飾りつけをする様子を見守りながら、どこかほっとした表情をしていました。
――デコレーションしたクリスマスケーキ
ハッピーキッズが活動する、佐賀県唐津市は、佐賀県の北西部にあり福岡県との県境に位置しています。佐賀県内でも佐賀市に次いで2番目の市域人口を誇る主要都市で、福岡県へ通勤をする方も多い地域です。なかでも、ハッピーキッズが拠点としている鏡・浜玉地区は、唐津市の中心部に位置し、住宅地としての人気も高く、また古くからの地域のつながりも固いエリアです。
ハッピーキッズでは現在、13世帯、44人の支援を行っています。ひとり親家庭や、三世代同居世帯など家族のかたちも様々。子どもたちの年齢も乳児から高校生と幅広く。世帯に応じて、必要とする支援の内容も異なります。
スタッフは現在4名。食材調達などを主にスタッフさんに担ってもらい。「配食」やご家族とのコミュニケーションについては、代表の龍さんが一人で担っています。
活動の中で、龍さんがいつも気にかけているのは、「ご家族との距離感」です。支援者という立場ではなく、「親戚のおばちゃん」が理想の距離感とのこと。配食支援の回数を重ねる中から、徐々に家庭の状況を知り、まずは求められる支援から始め、少しずつ、そのご家庭に必要な支援につなげていくことを大切にされています。
――今回の物品(2人世帯用)お正月用の鏡餅や、部活を頑張るお子さん用にゼリー飲料も
家庭への支援は、「お米が買えない」「ミルクやおむつを買うことができない」など、必要な「物」に対するアプローチから始まります。しかし、活動を通じて龍さんは、「物の支援」以上に、「心の支援を必要としている方が多い」と感じています。
小学生のお子さんを育てるひとり親のAさんは、ご自身のお母さまとの3人暮らし。Aさんが、前向きな心になれない理由は、お子さんと祖母であるお母さまとの関係性の悪さだったそうです。子どもをお母さんに託して仕事に出かけることができない。それが働くことができない一番の理由でした。それに気づいた龍さんは、Aさんと、そしてAさんのお母さまと話をすることで、少しずつその関係性を和らげることができたといいます。
Aさんもお母さまも、心にとめていた不安を龍さんに話せたことで安心することができ、Aさんも仕事につく選択をすることができたそうです。
「宅食をきっかけに関わることで、会話ができる。何気ない会話から、ご家庭が抱えている不安や課題を見つけ、前向きになれないその心にアプローチをすることが自立への大きな一歩になる。どのような支援を必要としているのか、どんな困りごとを抱えているのか、アウトリーチだからこそできる気付きに精一杯応えていきたい。」と龍さんは語ります。
――ボランティアの皆さん(中央:龍さん)
活動を行う中で、龍さんは、思いだけでは乗り越えられない支援の難しさも感じているといいます。ですが、活動を始めて2年。食材を届けてくださる地元支援者の皆さん。ボランティアに駆けつけてくれる友人。思いを共に活動してくれるスタッフ。そんな身近なサポーターの思いを届ける「こども宅食」の活動に、日々感謝と、やりがいを感じているそうです。
これからの活動について、龍さんは、
「子どもたちの笑顔が私の原動力。相談できる機会なく悩みを抱え込んでしまう、そんな心に寄り添って活動をしていきたい。支援をすることで、ほんのちょっとでも時間や気持ちに余裕ができ、親子時間につながれば…。子どもたちの笑顔がもっと増えていくように支援の輪を拡げていきたい」とお話くださいました。
「またね。また来るね。」子どもたちを見送る、龍さんの優しい笑顔が印象的でした。
龍 恵子 代表
活動エリア:佐賀県唐津市鏡を中心に近隣エリア
月に2回の配食を基本に、ご支援いただく食材のタイミングによっては追加配布も。
(2022年1月現在)
ライター:岩松優美
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