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「子どもたちの笑顔のため、できることを地道に続ける」伊万里市の支援団体がこども宅食を通じて目指すこと

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佐賀県伊万里市で昨年からこども宅食をスタートした「NPO法人のいちご会」。同法人は2015年に市内唯一の認可外保育園「のいちご保育園」を開いたのを皮切りに、2018年には地域の子どもたちのためにこども食堂を開設。さらに2021年4月からは市からの委託で「支援対象児童等見守り強化事業」(以下、見守り支援)を始め、こども宅食を通じてケアの拡充を行なっています。

活動の幅を広げていくNPO法人のいちご会理事長の大瀧美奈子さんに、こども宅食を始めた背景や要支援世帯と接する際に心がけていること、今後の目標などについて伺いました。

元日にかかってきた「先生、うちに食べ物がない」との電話

こども宅食応援団:認可外保育園、こども食堂を経て、こども宅食をスタートしようと思った理由を教えてください。

大瀧さん:さまざまな困りごとを抱える親御さんや子どもたちにもっと関わり、継続的なサポートをしたいとの気持ちです。保育園で保護者と会話ができるのは送迎時のわずかな時間に限られていますし、親御さんは少なからず「よそ行きの顔」をされるので実態がわかりづらい。子ども食堂も同様で、ケアができるのは子どもたちが食堂に来たときのみです。

対してこども宅食は、食材の配達をきっかけに家庭にお伺いしますから、親子ともに素の人柄が出やすい。玄関先での短時間の会話なので、家庭に踏み込みすぎない適度な距離感もいいですね。家の散らかり具合や親子の服装などから変化を感じ取り、状況によって専門家へつなげることもできる。何よりも、継続的に支援ができる点に魅力を感じました。

こども宅食応援団:こども宅食をそのように評価してくださってありがとうございます。ところで、NPO法人のいちご会では2021年度から伊万里市と協働で見守り事業をスタートされています。宅食を通じて支援内容の幅を広げられようと思った理由をお聞かせください。

大瀧さん:今年の元日に、こども宅食で食品を届けている家庭のお子さんから受け取った1本の電話が転機となりました。電話に出ると、元気のない声で「先生、うちに食べ物がないの」と言ってきたのです。児童扶養手当は昨年12月末に支給されたばかりなのに、食料を買うお金すら残っていないことに私は驚きました。

その子は助けを求めようにも、年末年始ですから行政の窓口はどこも閉まっており、困り果てた末に私に電話をしてきたのです。行政が経済的な援助をしても、家には子どもが食べるものすらない。この電話をきっかけに、もっとご家庭と深いつながりを持ち、子どもたちの生活を守りたいとの気持ちを強くしました。

自己財源での支援を含め、15世帯に見守りを実施

こども宅食応援団:お子さんからの「食べるものがない」訴えには心が痛みます。市と協働でどれぐらいの世帯に見守り支援を行っていらっしゃるのでしょうか。

大瀧さん:私たちが行う見守り支援には2つのパターンがあります。ひとつは、市から委託を受けてケアを行うもので、現時点での対象は5世帯です。要支援世帯は、市と協議をし、見守り支援の必要性が認められることで決定します。

もうひとつは、市の基準では見守りを実施するレベルに達していないものの、限りなく要支援の水準に近いと私たちが把握している世帯へのサポートです。こちらは現時点で10世帯ありますが、助成金がないので自己財源で賄っています。地域の小学校の養護教諭、スクールソーシャルワーカー、保健師といった人たちとの情報共有を通じて、言わば「見守り支援の黄色信号」の世帯を把握しています。支援対象は、委託、自己財源を合わせて15世帯です。

電気やガスが止まっている家庭のため、レトルト食品やお菓子を届ける

こども宅食応援団:どのような食材をお届けしているのでしょうか?

大瀧さん:手作りのお弁当のほか、お米、野菜、レトルト食品、カップ麺、おむつ、ミルクなど多岐にわたります。見守り支援を行うご家庭の中には、電気やガスといったライフラインを止められていることが多いので、調理の必要がないレトルト食品や缶詰はありがたがられます。基本は週に2回のお届けですが、ご家庭の状況によって増やすケースもあります。

食料は佐賀フードバンクさまからご提供を受けるほか、奈良県にある「おてらおやつくらぶ」さま、市民からの寄付をいただいています。

対象家庭とはLINEで連絡を取り合います。毎月末に次月の配送日時、お弁当のメニューといった情報をお知らせし、在宅を確認したうえでお届けに伺います。

「シングルマザー向けの支援制度です」と伝えて、警戒心を和らげる

こども宅食応援団:要支援世帯へのアプローチで工夫をしていることはありますか?

大瀧さん:ご家族の心情に配慮し、「自分たちは行政からケアを受ける存在」と感じさせないよう心がけています。見守り支援の対象となる方々は、行政や私たちのような支援団体を警戒されることが多いです。お伺いしても、応答しないことがほとんどです。

ドアを開けていただけなければ、食料を届けることも、相談に乗ることもできません。訪問の理由が必要だろうと市と話し合い、「コロナ禍でのひとり親支援」の紹介という形でお伺いしてきました。失業や減収した人がいることは、周知の事実ですよね。とりわけひとり親への影響はとても大きいので、「市ではシングルマザー向けのサポートを行っています。原則として週に2回、食べ物を無償で配達するサービスで、あなたが抽選で当たりました」のような感じでケアが必要なご家庭を回っています。

こども宅食応援団:「助けてほしい」と言いづらい理由には、行政への抵抗感や周囲に自分の状況を知られることへの不安などがあります。要支援世帯であることを周囲に悟られない工夫をされていて、素晴らしいと感じました。

方言を使って、親近感を抱いてもらう

大瀧さん:暮らしに困っているのに助けてと言いづらい気持ちを和らげるため、ご家庭とのコミュニケーションには気をつけています。たとえば、訪問は毎回決まったボランティアが行い、ほんの些細な会話を大切にしています。お子さんに対しては「朝顔のきれいに咲きよるね~」「宿題はどがん?進みよる?」、親御さんには「最近仕事はどがんですか?」「何か困りよる事はなかですか?」のように話しかけていますね。

会話ではスタッフに「方言を使いましょう」と伝えています。親しみを感じるほか、地元の人だという安心感を与えられますから。時間をかけて接することで、ドアを開けてくださる方もいます。初回訪問が今年6月で、10月半ばになってようやく話せるようになったケースもあります。

こども宅食応援団:たしかに地元の言葉を使う方が、警戒心は弱まっていきそうですね。

大瀧さん:その通りです。しかし関係づくりに力を入れる一方で、お互いの距離感をキープすることも忘れてはいけません。スタッフとのトラブルを防ぐために、ボランティアの居住地と訪問先が同じエリアにならないようにしています。訪問先がAという場所にあるなら、Bという所に住んでいるスタッフが出向くという感じですね。子ども同士の学区が違うかもチェックしています。

スタッフには「できることをできる人がやればいい。続けていきましょう」と伝えています

こども宅食応援団:子ども宅食や見守り支援の活動する中で感じる課題、今後の目標を教えてください。

大瀧さま:乗り越えるべきことはたくさんあります。伊万里市は人口5万人ほどの小さな市ですが、見守り支援を行う団体は私たちしかいません。同じ佐賀県の唐津市(人口約11万人)では14の支援団体(※)があることを考えると、私たちだけではケアの手が回らず、支援を受けられる人と受けられない人の差が大きくなってしまう不安を感じます。
※令和3年7月時点の支援対象児童等見守り強化事業交付団体数

あとは資金面です。見守り支援を行うに当たっては国から補助金が出ますが、これは子どもに対してのみで親御さんは対象ではありません。でも経済的に苦しく、その日の食べ物にも事欠く状況にあるのはお父さん、お母さんも同じ。にもかかわらず、お子さんのお弁当だけを届けるわけにはいきません。そこで私たちは自費で親御さんのお弁当も用意しています。果たしていつまで続けられるのか、わかりません。

今後目指すことは、子どもたちの笑顔のために支援活動を続けること。それに尽きます。私はスタッフに「できることをできる人ができる時間だけすればいい。でも、続けていきましょうね」と伝えています。細々としていてもいい、支援の輪を決して絶やしてはいけないという使命感を持ってこれからも励んでいきます。

ライター:そのべゆういち


こども宅食応援団では、全国各地でこども宅食が当たり前に実施される社会を目指して、こども宅食の全国普及活動を行っています。

こども宅食の実施を検討中の団体にノウハウの提供や立ち上げ資金の助成を行うことでスムーズな立ち上げをサポートしたり、こども宅食を実施中の団体に物品の提供や勉強会、事例共有の実施を通じて継続的にこども宅食を実施できるサポートを行います。

これらの活動は、みなさんからいただくご寄付(ふるさと納税)によって支えられています。

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