新型コロナウイルスの感染が子どもたちの間でも爆発的に増えたこの夏。こども宅食が支援するひとり親家庭や経済的困難などを抱えた家庭の多くが、長引くコロナ禍でますます窮地に陥り、感染への不安も抱えたまま夏休みを迎えました。
夏休みは本来、子どもたちにとって、楽しい体験を通してたくさんの思い出を作ることができる大切な期間ですが、外出が制限される中で、おうち時間の過ごし方にも限界があります。
子どもたちの心のケアも懸念されます。2021年5月に公開された国立成育医療研究センターによるオンライン調査の結果によると、小学生以上の子どもでは、「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」(42%)、「すぐにイライラする」(37%)、などのストレス反応を選択した子どもが回答全体の76%に上りました。
夏休み期間には、食費をはじめ親御さんの子育ての負担も増えます。
今回は、そうしたコロナ禍の夏休みの「困りごと」をサポートする、全国のこども宅食の取り組みをご紹介します。
宮崎県延岡市で活動する子どもネットワークのべおかには、利用者の方からこんな声が届きました。
「夏休みのコロナ禍で子どもが家にいる時間が多く、ご飯はもちろんお菓子なども消費がすごくて、困っている」
そこで、子どもネットワークのべおかでは、「子どもが自分だけでも簡単に食べられる物をたくさん届けたい!」と、フードドライブ(※)の協力をお願いしたところ、様々な食品を支援していただくことができました。
※フードドライブとは、家庭で余っている食品などを持ち寄り、それらをまとめて福祉団体や施設、フードバンクなどに寄付する活動のことを言います。
たくさんのレトルト食品やお菓子で、いつもよりさらに充実した宅配に、子どもたちも保護者の方も、大変喜んでくれたそうです。
宮崎県小林市で活動するこばやしこども宅食では、毎月お世話になっている伊三郎製ぱん小林店のパンと、茶店いろ葉から寄贈いただいたジュースを持って、夏休み真っ只中の利用家庭の子どもたちに会いに行ってきました。
――ユニークでかわいいパンは寄付支援金で購入させていただきました
いつもは顔を見せない子どもも、その日は顔を見てお話ししながら手渡しで。出来たてのわんこパンのお顔の歪みも、話題づくりにひと役かってくれました。子どもたちの外出も制限される中、楽しい夏休みの思い出づくりに一役買ってくれたことでしょう。
青森県三沢市で活動する三沢こども宅食おすそわけ便は、好きな食品を選んで持ち帰るパントリー型の活動と、ご自宅にお届けする宅食型の活動を行っています。7月に開催した「こども宅食おすそわけ便」では、寄贈されたたくさんの食料品や衣類が並ぶ会場に71世帯が来場し、それぞれ思い思いの品を袋いっぱいに詰め込みました。さらに、配布や指定場所での受け取りにより、90世帯に対しても食料品などをお届けすることができました。
食費のかさむ夏休み期間。栄養バランスの偏りも懸念されることから、定期的な夕食の宅配も行いました。
――栄養バランスの取れたメニューを、心を込めてお届けしました
沖縄県島尻郡でつなひきこども宅食を実施しているつなひき無料学習塾。緊急事態宣言発令中であっても、多くのひとり親の親御さんは朝から仕事へ行かなければならず、子どもたちを家に残していくことに対する不安の声が寄せられました。つなひき塾では、そうした保護者からの要望を受け、夏休み期間中は、通常はお休みの月曜日と土曜日にも教室を開き、他の施設とも協力しながら、地域で連携して子どもたちの見守りを行いました。
沖縄県での新型コロナ感染が拡大するなか、利用する子どもたちの人数を制限しながらの開室となりましたが、支援の先生に協力いただき、夏休みの宿題のサポートも行うことができました。
与那原町母子会のアンケートによると、それぞれのご家庭が夏休みに一番必要としている支援は、「食料の配布」でした。職を失った親御さんも多く、「今、仕事を探してるが見つからない」といった悩みも多く寄せられました。
そこで、つなひき塾では、いつも提供している朝ごはんに加え、この夏はお昼ごはんの提供も行いました。
――町の母子寡婦福祉会と協力し、カレー弁当を配布
親御さんたちからは、「お金が無いと子どもに食べさせてあげられない。だけど、支援のお陰で、お腹いっぱい食べさせてあげられる事もあり、とても助かってる」といった嬉しい声をたくさんいただきました。
長崎県対馬市の対馬市社会福祉協議会では、赤い羽根共同募金と協賛で、夏休みの「お弁当の日」を企画しました。学校給食のない夏休みに、子どもたちに栄養バランスの取れた食事を届けたい。そして、子育て中の保護者の負担を軽減し、地域の繋がりを感じてほしいという思いからスタートしたこの企画。全国的なコロナ感染の拡大により、1回のみの配達となってしまいましたが、必要とするご家庭と地域の繋がりを実感できる、大切な機会となりました。
また、日中親御さんが仕事に出て不在のご家庭も多いことから、「夏休みの宿題が困ります」との声も寄せられました。そこで、民生委員と協力し、「そうだ!宿題をすませよう!」の勉強会を企画しました。チラシを作成し、地域の高校生や大学生もボランティアとして協力を名乗り出てくれましたが、こちらは残念ながら、新型コロナ感染の拡大により中止となりました。
実現は叶わなかったものの、「たくさんのご家庭の困りごとに寄り添いたい」という想いは、きっとみなさんにも届いたのではないでしょうか。
食料品や宿題のサポートなど、夏休みの「困りごと」に寄り添う、全国のこども宅食の活動。いかがでしたでしょうか? 多くのご家庭が不安を抱え、孤立感を深めたこの夏。こども宅食をきっかけとして、食事環境の改善だけでなく、地域との繋がりや子どもたちの成長も感じてもらうことができたなら嬉しいです。
こども宅食は、定期的な食品のお届けを通じてご家庭と繋がりを保ちながら、困り事などの相談があったときには必要な支援へとつないでいく見守り支援の活動です。
こども宅食応援団では、そうした全国各地のこども宅食実施団体への立ち上げ支援や、ノウハウ、物資提供などの伴走支援を行うことで、こども宅食の取り組みを全国に広げる活動を行っています。
みなさんからのご支援、お待ちしています!
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