2017年7月に文京区でスタートした、生活の厳しい家庭に定期的に食品を届ける文京区こども宅食。
食品のお届けをきっかけに支援家庭とのつながりをつくり、見守りながら、必要に応じて行政の専門機関などさまざまな支援につないできました。このこども宅食を、日本中の親子に届けるべく、「一般社団法人こども宅食応援団」を設立し、全国に広げていくことが決まりました!
2018年11月、厚生労働省にて記者会見を行い、多くのメディアの皆様が駆けつけてくださいました。
この記事では、文京区こども宅食のこれまでを振り返りながら「こども宅食応援団」を設立するに至った経緯と、想いをお伝えしたいと思います。
2017年に厚生労働省が発表した調査で、日本で暮らす子どものうち、7人に1人が、貧困に陥っているということが明らかになりました。
その中でも特に、ひとり親世帯の貧困率は50%を超えています。ふた家庭にひとつが貧困状態であるという、厳しい状況です。貧困は、衣食住に加え、学習機会やさまざまな経験の不足にも影響を及ぼします。
そんな現状にもかかわらず、支援を必要としている人が情報や社会資源にアクセスできない、自分からは助けを求めにくいといった課題、また、支援者側も支援を行いたいが、どこに困っている人がいるか分からない、といった課題が、子どもの貧困分野には長らくありました。
待ってるだけではいけない。誰かが、何かの形で支援を届け、そして子ども達が抱える課題に、一刻も早く気づかなければいけないーーそんな課題意識を持つ団体が集まり、解決策を探って生まれたのが「こども宅食」でした。
2017年7月、一般社団法人RCF、NPO法人キッズドア、一般社団法人村上財団、NPO法人日本ファンドレイジング協会、文京区、フローレンスが、この問題を解決するため、こども宅食を官民協働の新しい取り組みとしてスタートさせました。
こども宅食の利用対象は、文京区内で就学援助等の制度を利用している家庭です。当初は需要を150世帯程度と予想していました。
実際に申し込みが始まると、手続きの秘匿性、簡単さを高めるためにLINEを窓口としたこともあり、申し込みは予想の3倍を超える450世帯。想像を超える反響に驚くとともに、ニーズの高さを再認識しました。
しかし、配送する食品は企業からの寄付でまかなう事業モデルのため、最初から大規模に事業を行うことは困難でした。まずはスモールスタートとして150世帯を抽選で選び、食品等を提供してくださった11社の皆様と、事業を開始。
初回は文京区役所にて、ボランティアのみなさんと一緒に食品の梱包作業を行い、配送を実施することができました。
しかし、まだまだ支援を必要とする家庭に、こども宅食を届けられていない。そこで、事業の規模拡大に向けてさらなるクラウドファンディングを実施しました。これまでこども宅食に寄付してくださった方の数はのべ3000人近くにのぼります。
また、食品の提供についても、課題意識に共感してくださる企業とのつながりを増やし、食品だけでなく医薬品など、物資提供の幅を広げてきました。現在ではのべ40社にご協力いただくまでになっています。
梱包や配送は、西濃運輸株式会社にこども宅食のコアメンバーに入っていただくことで、大幅に作業効率を上げることができました。
その他にも、クラウドのデータベースを活用してバックオフィス業務を効率化し、規模拡大に向けて改善を繰り返してきました。そしてスタートから1年たった今では、500世帯以上の家庭に、こども宅食のお届けを実現することができました。(実は、最近は野菜もお届けをはじめています。その模様は、また別の機会に!)
ご支援いただいた皆様、こども宅食に参画している各団体の協働が、着実に成果を出し始めています。
子どもの貧困で問題となるのは、衣食住が不足するというだけではなく、体験・機会が得られない環境になりやすいということ。
そこで、こども宅食では、食品以外にもさまざまな子どものための機会・体験もお届けしてきました。
これまでお届けしたものは、図書カード、女性向けカバン、イベントチケット(演奏会、観劇)など。どれも、こども宅食に協力していただいた企業より寄付いただいたものです。
現在は、絵本をお届けできるよう準備を進めています。
こども宅食を中心にし、企業・個人を問わず、子どもの貧困という問題に対して共感の輪が広がる。そんな実感を得ています。
このような取り組みの結果、アンケートでは利用者の86%が、こども宅食の支援を受ける前と比較して、気持ちが前向きに変化した(「気持ちが豊かになった」「社会との繋がりを感じられるようになった」)と回答しています。
以下のような声もいただいています。
約1年の別居を経て、先月より「ひとり親家庭」になりました。二人の子どもを抱えながら、10年ぶりの復職をし、不安が募る日々でしたが、都会の真ん中でもこういった取り組みが行われていることに、心強さを感じることができました。
こども宅食のお知らせを見た時、思わず涙が出ました。
日々節約を重ねていますが、食べ盛りの子どもたちの胃袋を満たすためには、どうしても食費は削れません。子どもが成長するにつれて、食費は膨らんでいきます。
しかし、児童扶養手当は一定で、どんどん家計は厳しくなる一方なので、このような支援はとてもありがたいです。周りの方々の助けがあって頑張れています。子どもを一生懸命勉学に励ませ、社会に恩返しできるように頑張ります。
私たちもますます頑張らないといけない、そう強く感じる、たくさんの喜びの声をいただきました。
この文京区での実績が認められ、少しずつ、全国でも同様の取り組みが広がっています。
例えば、佐賀県で立ち上がった、佐賀市立北川副小学校の学校運営協議会が、在校生のうち、生活が困窮している家庭を対象に食品を提供する「こどもおなか一杯便プロジェクト」。
越前市では、生活困窮者の早期発見を目的に、福井県越前市は市社協、JA越前たけふ、武生郵便局と連携し、農家から募った余剰米を困窮者宅に無料で郵送する「越前市わかちあいプロジェクト」が立ち上がっています。
新潟市東区では、生活が苦しい一人親世帯に毎月5キロの米を無料で届ける事業が、市民団体「にいがたお米プロジェクト」としてはじまっています。
こんな広がりをもっと加速させていきたい。日本中の親子に、こども宅食を届けていきたい。そんな思いで、「こども宅食応援団」を立ち上げることにしました。
応援団の具体的な取り組みは、以下になります。
【資金助成】 食品準備や配送等の、事業の立ち上げにかかる費用に対して資金を助成する。
【伴走支援】 実施団体が自走できるように、ノウハウの提供等の課題解決のための支援を行う。
【広報・啓発】「こども宅食」の認知度を高めるために、説明会の開催やWEB等での広報活動を行う。
「こども宅食応援団」は拠点を佐賀県に置きます。
佐賀県は、NPO活動がとても盛んで、県がNPOを誘致したり、NPOが活動しやすい環境をつくっている、「NPO先進地区」ともいえる場所です。
日本中にこども宅食を広げていく、第一歩として、2019年1月から佐賀県内で説明会を開催し、県内から助成や伴走支援を希望する団体を公募し、こども宅食の実施団体への立ち上げ支援を行っていきます。
最後に、この記事を読んでくださったあなたにお願いしたいことがあります。
皆さんの親子への思いのメッセージを付けて、ぜひTwitterやFacebookで、拡散してください。皆さんが拡散してくださることが、変化の最初の一歩になります。
一緒に、この「こども宅食」を広げてください。
「こども宅食応援団」は、資金調達に、佐賀県へのふるさと納税制度を活用し、本日より、3,000万円を目標に寄付を募ります。なお、本プロジェクトでは返礼品を用意せず、集まったご支援の全てを事業の推進に活用します。
ふるさと納税は、自己負担額の2,000円を除いた全額が、所得税及び個人住民税から控除されます。つまり、ご自身の負担額は2,000円で寄付をしていただけます。(※全額控除される寄附金額には、収入や家族構成等に応じて一定の上限があります)
寄付のページは、以下になります。
こども宅食の取り組みは、自治体やNPOなど、さまざまな団体が手を組んで作り上げてきたものです。
現代の社会問題は複雑で、誰か一人、あるいはひとつの事業者だけでできることには限界があります。そんな状況でも、より良い未来を作っていくために、会社や団体、あるいは個人の枠を越えて、協力していくことが必要です。
みんなで子どもの貧困を解決していく。みんなで親子を抱きしめる。そんな社会が、これから目指すものではないでしょうか。ふるさと納税のクラウドファンディングも、まさにそのひとつです。親子の社会問題を解決するための一員、同志として、あなたの力が必要です。ぜひ、ご協力をよろしくお願いします!
こども宅食を応援したい
こども宅食をやりたい・知りたい