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「こども達の生きる力となるように」 徳島県徳島市 特定非営利活動法人Creer クレエール子ども食堂 宅食便

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こども宅食応援団では、11月から【#孤立を生まない社会】をテーマにした特集記事の連載を行っています。

「困っていても”助けて”が言えない人がいる」「必要な支援が届かない現実がある」という社会問題についての認知度を高め、こども宅食応援団が掲げる「今日を生きるこどもたちのために、多様な人々が手を携え 孤立を生まない社会を創る」というミッションについて、皆さんと共に考える特集企画です。

今回は、徳島県徳島市でこども宅食を実施している、特定非営利活動法人Creer(クレエール)理事長の原田昭仁さんと、理事の喜多條雅子さんに、活動への思いを伺いました。


写真左より 原田さん 喜多條さん

クレエール子ども食堂は、原田理事長の「おなかがすくのは毎日だから」との思いから、2018年から子ども食堂を毎日実施しています。地域の皆さんのご協力もあり、現在は月にのべ600人のこども達が利用するなど、地域に親しまれている子ども食堂です。

こども宅食は2020年にスタートし、現在、徳島市と近隣市町を対象として、約500世帯(こどもの数約700名)にお届けを行っています。(訪問型とパントリー型の宅食を併設)


–手づくりレストラン&お弁当のお店Creer(クレエール) レストランを拠点として子ども食堂が開催されています
クレエールは、障がいのある人とない人が、パートナーシップでいきいきと働き、目標に向かって活動を行っています
飲食店営業のほかに、 農業やコンサートの開催、地域交流事業などの活動に取り組んでいます。


–今年のクリスマスイベントの様子  音楽会も行われて笑顔いっぱいの楽しい時間を過ごしました

「ニーズがあるのか分からない」からスタートした こども宅食

こども宅食との出会いは、徳島市長より「こども宅食をやってみませんか」と、お声かけがあったことがきっかけでした。「こども宅食って何だろう?」「食堂に来れなかった人にお届けをすればいいのね?」という認識からのスタートだったそうです。多くのこどもたちが集いにぎわう子ども食堂の様子からは、「ニーズがあるのか分からない」というのがスタート当初の思いでした。
まずは初めてみようとチラシを作成し、インターネットでの申し込みを行ったところ、予想に反し反響は大きく、1週間で50世帯から申し込みがありました。子ども食堂で出会うことのなかった家庭が大半で、それぞれに困りごとを抱えた家庭ばかりでした。

こども宅食初日。日時を約束して訪問しましたが、1軒目からドアを開けてもらうことはできませんでした。2軒目はドアを開けてもらうことはできたのですが、玄関の外に物が散乱し、部屋は散らかった状態など、生活環境の大変な様子を目のあたりにし愕然としました。たまたまその家庭がそうだったのかと思いましたが、次の家も、またその次の家も状況は同じで大変厳しい生活環境でした。ある家庭からは、午後6時50分から午後7時の間に来てくださいと連絡がありました。時間指定で来てほしいと無理を言っているなと思いつつ訪問すると、仕事が終わってこどもを保育園に迎えに行き、お風呂にいれて次の仕事へ出かけるまでの間の時間が、10分しかないとのこと。慌ただしく品物を受け取ると、お母さんは仕事に出かけていきました。夜はこども達だけで留守番をしていると聞き、後ろ髪をひかれながら次の家へと向かいました。

こども宅食をはじめたことで、TVで見るだけの特別なものだと思っていた、ヤングケアラーや不登校、虐待が疑われる家庭など、生活が苦しく困りごとを抱えた家庭が、身近に、こんなにもたくさんあるのだという現実を知ったそうです。

お届け品には、食品はもちろん日用品や生理用品なども用意されています 品物と一緒にクレエール特製のお弁当や地域から届いた野菜などもお届けします

家に来てくれる人がいる事が嬉しいんです 

こども宅食の訪問時に、おもちゃをいっぱい用意して一緒に遊ぼう!と原田さん、喜多條さんを待ち構えている、小学校低学年のA君がいます。はじめて訪問したのは3年前の秋のことでした。その家のドアを開けると、部屋の空気感が暗くお線香の香りが漂っていました。幼かったA君はあいさつをしてくれるでもなく、目も合わさずお母さんの表情を伺うばかりです。

訪問のきっかけは、お母さんからクレエールへのSOSのメールでした。ご主人を亡くし、頼れる実家もなく、この子とどうやって生きていこう。今日明日を生きるためにすがれるものはないかと検索した時に目にしたのが、「クレエール子ども食堂宅食便」のページだったそうです。逼迫した状況を感じた原田さんと喜多條さんは、A君の家をたびたび訪問しました。はじめはお母さんとの対話もままならない状況でしたが、次第にうちとけ、半年がたった頃、はじめて二人でクレエール子ども食堂に足を運んでくれたそうです。

原田さんと喜多條さんは、宅食での訪問時に「クレエールへ来てくださいね!」と常に声をかけるようにしているそうです。家を一歩出ることで、人との出会い、交流があり、こどもの可能性も広がっていくと信じているからです。

はじめは目を合わすことも難しかったA君も、今では一緒に遊ぼう!と宅食での訪問を待ちわびてくれるようになりました。お母さんもまた、不安だった心の内を話してくれるようになり、「はじめの頃はどんな人が来るんだろうと不安もあったのですが、お二人のあったかさと、たくさんの食品やおいしいお弁当もあってほっとできました。品物をもらえることも嬉しいけれど、それだけじゃなくて、家に定期的に来てくれる人がいる事が嬉しいんです」と喜びを言葉にしてくれたそうです。


クレエールの2階フロアには宅食用の物資が保管されています
物価高騰の影響もあり、多くのご寄付をいただいても 慢性的に物資不足の状況が続いています

クレエールに来たからには 面白く楽しく

こども宅食をきかっけにクレエールにつながったたくさんのこども達が、たくさんの成長をみせてくれています。

小学校低学年のBちゃんは、おばあさんとの2人暮らし、言葉数の少ないおばあさんとは家庭での会話が少なかったようで、訪問当初はなかなか言葉が出ませんでした。クレエールに通うようになり、学習支援であいうえおも覚えて、今では学校であったことなど話をしてくれるようになりました。

小学生高学年の時に出会ったC君は、今年中学3年生です。中学1年生からクレエールの学習支援で学習習慣を身につけ、県内でも最難関といわれる高校への受験を控えています。

お風呂に入っていない、歯磨きをしていない。という子も少なくありません。そんな時は、クレエールのおっきなお風呂でみんなで一緒に入浴タイムを楽しんで、お風呂掃除も覚えます。トイレのマナーなど日常生活のちょっとした事を知ることができない子も少なくないことから、楽しみながら一つづつ経験を重ねています。女の子が生理の心構えをボランティアのお姉さんから聞くこともあります。

クレエールに来たからには、面白く楽しく身につけていこう!原田さんと喜多條さんの思いです。

理事長の原田昭仁さん

助けてほしいと思った時に「クレエールがいる」と思ってもらえるように

こども宅食の訪問は、毎日の子ども食堂が終わった後、夜間の数時間に実施しています。

訪問を楽しみにしている家庭がある一方で、訪問してもあまり会話をすることができない家庭もあります。こどもの様子を少しでも知ることができたらと、お菓子などを持参し「〇〇ちゃんに渡してもいいですか」と声をかけ、わずかでも対話ができるように心がけていますが、「今おばあちゃんのところに行っていていません」など何度訪問してもこどもに会えない事もあります。虐待が心配される家庭もあり、お届けしてもこどもの口に入っていないのではないかと心配になることもあるそうです。

理事 喜多條雅子さん

「どの家に生まれても、こども達が幸せに生きる権利があるのに、実現できていない現実があるのは心が痛みなんとかならないものか。今日のごはんを届けるしかできないことに無力感を覚えます。圧倒的に親からこどもへの愛情が足りない。生まれる環境によって、こどもの生活に格差があるのは不平等だ」と喜多條さんはおっしゃいます。

困難な状況にあっても、誰かがつながって寄り添っていれば、こどもの心や生活が救われる。頼れる人、些細な事でも話せる人、安心できる人や場所がある。こどもが安心して「助けてくれる人がいる」と思う事が出来たら、きっと生きる力になって、自分で頑張ることができるようになる。誰かに助けてほしいと思った時に「クレエールがいる」と思ってもらえるように、こどもとつながって、ひとりづつでも困難な状況から良い状態にしたい。
原田さん、喜多條さんはそう願いながら、毎日の活動を行っています。

 

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