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全国に「こども宅食」を広げ、孤立を生まない社会をつくりたい。 こども宅食応援団メンバーインタビュー

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こども宅食は、生活の厳しい家庭に「食のお届け」をきっかけに、ゆるやかで温かなつながりをつくり、見守りながら、必要な時に様々な支援につなげる取り組みです。今回は、「こども宅食」の活動を全国に広めようと日々活動している「こども宅食応援団」に長く携わる3名に、これまでの歩みと、これからどんな未来を描いているかについて話を聞きました。

プロフィール                  

原水敦
一般社団法人こども宅食応援団理事。大学4年次、ボスニアでのNGO活動に参加。卒業後、障害者福祉施設に入職。在職中に市民団体Uppleを立ち上げ、7泊8日の教育キャンプをスタート。2013年に独立し、一般社団法人ピープラスを設立。福岡にカタリ場、マイプロジェクトを誘致。同時に、北九州まなびとESDステーション特任教員として、ESDをテーマに大学生主体の約25個のプロジェクトを伴走。2020年よりこども宅食応援団に参画し、2022年6月に理事に就任。北九州市立大学非常勤講師、高校スクールソーシャルワーカー。社会福祉士、保育士。

本間奏
これまで全国50箇所以上のこども宅食の立ち上げ・運営相談や、こども家庭庁と連携した全国勉強会などを実施。 総合商社 法務部(新規事業立ち上げ、M&A、訴訟)および営業部。2019年2月、子どもを育てた経験等から親子に関する社会課題に取り組む仕事に就きたいと考え、NPOに転職。フローレンスにて、2018年10月に佐賀で立ち上げたばかりの「こども宅食応援団」で経営企画・事業推進を担当。元気いっぱいの2児を育てる。新潟県出身。

井内美奈子
佐賀県を拠点にこども宅食の立ち上げ、伴走支援、広報などを行いながら、ご家庭への宅食の訪問も実施している。子どもの独立をきっかけに社会への恩返しをしていきたいと思うようになり社会的養護にあるこども達を支援するNPOに転職をしたが、もっと早く繋がることで変わる未来があるのではと考えるようになり、2019年からこども宅食応援団に、2023年からは妊娠期からつながる赤ちゃん宅食(こども宅食赤ちゃん便)もスタートさせた。日常にある親と子の現実と課題を佐賀から全国にむけ発信し続ける。

こども宅食・こども宅食応援団について   

<こども宅食とは>

こども宅食は、困りごとを抱えた子育て家庭に定期的な食品のお届けをしながらつながりをつくり、必要な支援へとつなげる伴走型支援の取り組みです。LINEや配送時の対面によるやりとりの中で、安心したつながりを、丁寧に少しずつ育てていくなかで、生活状況を把握したり、状況が悪化するときの予兆を見つけます。そして、必要な情報や機会、適切な支援を提供していくことをめざしています。

こども宅食について:https://hiromare-takushoku.jp/project/

――こども宅食は、2017年、東京都文京区で自治体とフローレンスを含むNPOや企業で始めた、官民連携事業が始まりです。

<こども宅食応援団とは>

こども宅食を、全国に広げるために様々な活動をする中間支援団体です。

全国各地域でこども宅食をやりたい人、やっている人を応援しながら、こども宅食事業の数を増やし、家庭や地域への前向きな変化が生まれるような事業が実施できるように、全国のこども宅食に取り組む団体の皆さんや国などと協働しています。

こども宅食応援団について:https://hiromare-takushoku.jp/about/

こども宅食応援団は、どんな活動をしているのか      

――みなさんのお仕事内容について教えてもらえますか?

原水 こども宅食応援団の理事として、運営や事業全体のマネジメントをしながら、全国にこども宅食を普及させるチームの仲間と、どうしたらもっと地域のみなさんとつながれるかを考えたり、様々な施策を企画・実行しています。

本間 こども宅食応援団の事業運営をしながら、今は主に資金助成まわりや、応援団に集まる(※)物品が全国各地のこども宅食実施団体を通して子育て家庭に行きわたるような事業開発を担当しています。また、国や自治体で使える予算を調べて、全国のこども宅食に取り組む団体が困っていることや、必要な情報をまとめて、国へ伝える提言活動もしています。
※こども宅食応援団は、グループ会社のフローレンスと連携し企業等から物資を提供いただいて、各地のこども宅食を実施する団体へ届けています。

井内 私は主に佐賀県で、こども宅食事業の立ち上げから運営までの伴走支援的に携わっています。実際にこども宅食を始めると、運営にあたっても色々な課題が見つかりますので、実施される団体の方々の相談にのったり、地域でこども宅食が導入されるように勉強会を行ったり、全国普及に向けて様々なことに取り組んでいます。

――これまでの活動で、印象的だったエピソードを教えてください。

本間 2019年の夏に、宮崎県三股町の「みまたん宅食」を取材したのですが、その時に「この事業(こども宅食)は、本当に今の社会に必要だ!」と確信しました。親御さんの悩みに寄り添ったり、子どもの成長を町中で喜んだり。事業に携わるボランティアの方が「私は宅食が無くなったらやりがいが無くなってさびしい。」と言えるなんて、本当に素敵なことだと思いましたし、地域の皆さんが自然とご家庭に寄り添い、支え合う様子に、胸を打たれました。画期的なモデルで、こども宅食は社会に広げないといけないという使命感のようなものも感じました。

――宮崎県「みまたん宅食どうぞ便」。毎月添えられている手書きのレシピは、社協で運営している子ども食堂の栄養士さんの発案で、スタート時から食材とともに届けられている

井内 2019年は、「こども宅食サミット」でメディアや全国のこども宅食事業者、自治体関係者、与野党議員、有識者等、約100名に集まっていただいたことで注目されました。2020年は、コロナで日本中がとても大変な1年でしたが、こども宅食応援団は、生活困窮世帯が今一番困っていること調べるために全国調査を行ったり、佐賀への助成事業を実施したり、この翌年あたりから、こども宅食を実施する団体が増えてきましたね。

――2019年開催、「第1回こども宅食サミット」全国から約100人が集まった。

原水 2021年、全国児童家庭支援センター協議会※の協力を得て、同協議会に加盟している民間団体26団体に対し「『こども宅食』緊急支援プロジェクト助成 」を実施したことも、こども宅食を全国に広げる大切な機運となりました。助成プロジェクトにより、こども宅食型の支援が全国で実施され、サポートが届きにくいご家庭への支援が広まることを願って行ったものです。

※児童家庭支援センターとは、地域で暮らす子どもたちの福祉に関する様々な課題に対し、ご家庭その他からの相談に応じたり、必要な支援を行う地域相談機関のことです。2023年12月時点で、全国154のセンターが協議会に加盟しています。

本間 2022年は、それまでみんなで一生懸命に撒いた種が少しずつ芽が出るような感覚で、新しくパワフルに全国の子育て家庭に支援を届ける「こどもフードアライアンス」(※)が始まったことも大きなインパクトでした。
※「こどもフードアライアンス」は、フローレンスと株式会社日本アクセスが、大手食品メーカー各社の協賛のもと、子育て家庭へ食支援を行う取り組み。こども宅食応援団に加盟する、全国のこども宅食実施団体など、子育て支援団体を通じて、全国の子育て家庭に食支援を実施しました。

全国のご家庭に食品をお届けできたことはもちろんですが、報告会に参加してくださった食品メーカーのご担当者から「現場の方の実感を聞いて『食品以上のものを届けている』ことがわかりました」と言葉をいただけたのも、嬉しかったですね。

原水 〝地域みんなで親子を支えるつながり〟を深める取り組みとして、2023年6月から全国10地域にて開催している「親子の支援を語ろうキャラバン」は、日本各地にいる、素敵な方たちとの出会いが面白いですね。毎回、集まってくださった皆さんと、真剣な対話ができるので、胸が熱くなります。

井内 5年間を振り返ると様々なことがありましたが、こども宅食が、全国に広がっていった背景には、つらい状況にあるご家庭のすぐそばでよりそい、日々活動されている団体の皆さんや、この活動を応援してくださる企業や地域皆さんの力が合わさったからこそ、ここまで来られたと思っています。

昨年、佐賀を拠点に活動して地域課題解決に貢献していると認めていただいた「令和5年度佐賀さいこう表彰(自発の地域づくり・協働部門)」受賞についても、地元の団体の皆さんと並んで、佐賀県外から誘致でやってきた団体である私達が、しっかりと根をおろし愛される事業にしてもらったことが本当に嬉しかったですし、地域への思いをもつ皆さんを代表して受け取った賞だと思っています。

――令和5年度佐賀さいこう表彰(自発の地域づくり・協働部門)受賞

<こども宅食応援団の5年間の主な活動>

2018年 

一般社団法人こども宅食応援団設立

2019年 

・公式ロゴ決定、公式サイトリリース
・佐賀県で、こども宅食に関する助成事業を立ち上げ、県内2団体に対して助成決定
・第1回「こども宅食サミット」開催!全国のこども宅食事業者、自治体関係者、与野党議員、有識者等約100名が参集

2020年

・コロナ禍で困窮する家庭をサポートするため「新型コロナこども緊急支援プロジェクト」開始
・こども宅食実施団体への助成や新規団体を立ち上げ
・こども宅食が国庫補助事業「支援対象児童等見守り強化事業」の対象に!本事業の実施を検討している自治体・団体向けのオンライン勉強会を開催
・政府備蓄米のこども宅食実施事業への提供開始

2021年

・第2回「全国こども宅食サミット」開催。2日間で延べ130名が参加
・農林水産省からこども宅食に提供される政府備蓄米が最大年1.2トンに拡大
・「こども宅食」緊急支援プロジェクトとして、こども宅食を実施している全国28箇所の児童家庭支援センターへ資金助成
・「こども宅食の導入と実践のための全国オンライン勉強会」を開催

2022年

・こども宅食応援団・フローレンス・大手食品卸・食品メーカーが協働し、全国の子育て家庭に食品を届ける「こどもフードアライアンス」がスタート
・厚労省補助事業「ひとり親家庭等の子どもの食事等支援事業」受託し、全国のこども宅食団体への助成事業を実施
・社会福祉協議会向け全国オンライン勉強会を実施

2023年

・「親子の支援を語ろうキャラバン」全国10ヵ所で開催
・こども宅食応援団・フローレンス、ローソン、東北3県の地域団体が連携して「地域連携型フードドライブ」のトライアルを実施
・厚労省補助事業「ひとり親家庭等の子どもの食事等支援事業」受託、全国のこども宅食実施団体への物資サポート事業を実施
・赤ちゃん宅食(こども宅食赤ちゃん便)トライアル事業開始
・こどもフードアライアンスの支援規模拡大
・令和5年度佐賀さいこう表彰(自発の地域づくり・協働部門)受賞

全国へ広げるための、仲間づくり。  

――こども宅食を広げるために、必要なつながりとして、地域づくりに課題を持っている人、こども宅食を通じて描く未来に共感する人など、一緒に活動する仲間とは、どのように出会い、つながってきたのでしょうか?

本間 もともと地域で子どもや親子の支援などに積極的に取り組んでいる方は、自ら活動を発信していることも多いので、気になる資料を見つけたら読み込んでから、意見交換をする機会をいただいたりしています。また、イベントや勉強会などでご縁があることも多いですね。実際に会いに行って対面でお話を聞くと、ビジョン共感が強かったり、学ぶことが多く「今後もぜひ一緒にやっていきたい」と思います。

井内 最初の頃、寄付や、ご家庭にお配りする物品について、企業へご協力を依頼するとき、はじめは緊張していたんです。でも、応援してもらう前に、まずはこども宅食についてお話をさせていただく機会があって、その結果として「応援するよ」と言っていただくことが多かったのは、本当にありがたかったです。途中からは、緊張するより、こども宅食について伝えることが楽しくなりました。

原水 偶然の出会いや運ももちろんあると思いますが、NPO界隈は広いようで案外福祉業界は狭く、「同じ思いで活動している人」とは、出会うべくして出会うのではないかなと感じます。お互いにリスペクトしているので、活動も出会う前から知っていたりします。

2023年度のインパクトは、何といっても「親子の支援を語ろうキャラバン」で全国をまわったことですね。地域によって、同じ子育てといっても状況がまったく違いますし、子育て世帯の人口や行政との連携状態など、事情は様々です。それでも、地域に根差した活動をする皆さんと一緒にお互いの活動について情報交換したり、地域で子どもたちをどのように見守っていくと良いかを、直接現地に赴いて沢山の方と対話した機会から学ぶこと、気づくことは、非常に大きかったです!

――2023年、全国10カ所で開催した「親子の支援を語ろうキャラバン」

――こども宅食に興味がある方、キャラバンで初めて会う方などは、こども宅食のどんなところが気になって、問い合わせしてくださるのでしょうか?

原水 そうですね、日ごろ子育て支援に関わる仕事をしていたり、ご家庭との接点をもつ福祉活動に取り組む中で、「なんだか気になるご家庭がある」というお気持ちをもたれているという点は、共通しているように思います。気になるけれど、どういう接点を作って、支援につなげていこうか・・と考えたときに、「こども宅食」を知ってくださることもあります。

井内 私も、団体の皆さんと直接お話する機会が多いのでそのように感じることが多いですね。例えば「こども食堂」をやってきて、食堂の良さは分かってきて運営もなんとかできてきたけれど、しばらくすると違う課題が見えてきて「どうしよう?」というタイミングで「こども宅食が良いんじゃないかな」と気づいて、お問い合わせをくださる方が増えてきた感じはあります。

地域のこども宅食の事例①

NPO法人Creer(クレエール)ーー徳島県徳島市

2023年9月、徳島県で開催した「親子の支援を語ろうキャラバン」で、NPO法人Creer(クレエール)理事の喜多條雅子さんは、クレエールが運営する子ども食堂の活動内容と、2020年に開始したこども宅食の事例紹介を発表していただいた際「こども宅食事業を開始したきっかけは、こども食堂を利用している子どもたちと日々向き合う中で、食堂に来たいけど来られないご家庭があることが分かったこと」と述べました。
記事はこちら:https://hiromare-takushoku.jp/2023/10/19/5983/

 

地域のこども宅食の事例②

のおがたこども宅食みんなのごはんーー福岡県直方市

活動についてお話を伺った際、「配達に伺うと涙を流して喜んでいただいたり、『心も体も温まりました』『息子が苦手だった野菜のおかずを食べました』などのうれしい感想をLINEでいただいたりする中で、実は私たちの方が、子どもたちの笑顔や成長を共に喜ばせてもらい、幸せをお裾分けしてもらっているようにも感じています。」と語りました。
記事はこちら:https://hiromare-takushoku.jp/2022/05/31/4616/

「こども宅食」への思い           

――2023年12月末時点で、こども宅食に取り組む団体の規模は、日本全国39道府県、193団体まで増えました。どんな思いをもって、全国へ広げていますか?

井内 立ち上げの頃、勉強会を開催しても、まだ実績もない応援団には誰も来てくれないので、まずは佐賀県で活動されているNPOを訪問して、食堂や居場所にどんどん行って「勉強会をやるので来てください」と伝えてまわったことは、思い出深いです。地域の皆さんのところへ出向き、色々な思いをもっていらっしゃることを聞いたり、話ができたのはとにかく楽しかったし、面白かったです。どこで「こども宅食」を思い出していただけるか分からないので、お一人ひとりに丁寧にお話をしました。

今もそうなのですが、会いに行くと、「こども宅食の仕組みは必要だと思う」と同じ思いの人が、行政も民間も問わずたくさんいらっしゃり、そうした出会いを重ねて「こども宅食でどういう社会をつくりたい?」というお話ができることは、とても楽しいです。

原水 こども宅食応援団が、何か先駆的な取り組みをしていたり、何か特別なものをもっているわけではなく、こども宅食を実施する団体のみなさんが、「大切なものを既に持っている」と考えています。皆さんがもっている素敵なものを、他の地域の方々に渡したら良いよね、という感覚です。その”想い”のバトンをつなげることが、応援団の役割だと思っています。また「こども宅食が素晴らしい取り組み」ということを、応援団の運営メンバーみんなが信じているので、少しずつ広がってきたのかなとも思います。

これからは「こども宅食」が少しずつ普及してきた中で、あらためて「こども宅食とは?」の再定義が必要なタイミングだとも考えています。そうした活動の積み重ねが、結果的に、全国の子どもたちを救うことにつながるんじゃないかなと思っています。

本間 こども宅食応援団の活動で学んだ大きな気づきとして、私が今なお大切に考えているテーマは、「つらい」と言うのはとても難しいということです。「大変だったら言ってください」と言われても、SOSを上げることは、誰でも、中々できることじゃないですよね。だから地域の支援活動をする方々も、ほんとうは困っている家庭とつながりたい、と思っていても、どのようにアプローチすると良いか分からない、と言うのが実態だと思います。

これからの時代、少子高齢化社会で、ひとりのスーパースターが現れて世の中の問題が解決できるなんてことはないと思います。いろいろなものや人が足りなくなっていく時代に、いち団体、いち事業だけではなく、ボランティアの人や、地域で生活するありとあらゆる人がつながって助け合わないといけないと思います。工夫しないと、福祉そのものが成り立たなくなっているから、支援者側も孤立したり困ることが出てくると思います。例えばそこに、こども宅食応援団が入っていって、みんなを巻き込みながら、困っている人に寄ってたかってつながろうというような考えは素敵だなと思っています。私たち自身も行政や国や企業には、「助けて」と言っているし、支援者も含めて、世の中の援助希求力(悩みを誰かに話したり、助けてほしいと求めたりすること)を上げるのは必要なのでは、と考えています。人間は食べ物を通して愛を伝えるものですから。「みんなでお互いに助け合おう」という循環をつくるのが、私たちの役割かなと思います。

井内 私は、現場に行かせていただくことが多いので、大変だ、何とからないかな・・と思う場面も山程ありますが、だからこそ、こども宅食を広げていきたいと思います。広めるためには、私たちだけではできることが少ないので、広く発信していくことで、地域には必ず共感してくださる人がいるなと実感しています。困っている人を、みんなで助けよう!という仕組みづくりが私たちの役目だと思います。地域に出向くと、その地域に根差した活動を日々行っている、素敵な方との出会いがあるのが嬉しいですね。これからも、そうした愛のある優しいつながりをひろげて、困った時はお互い様、といえる、孤立を生まない社会を皆さんと一緒につくっていけたらと思います。

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