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「あったかい関心をよせ続ける」 福島県郡山市 ほしくま児童家庭支援センター

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こども宅食応援団では、11月から【#孤立を生まない社会】をテーマにした特集記事の連載を行っています。

「困っていても”助けて”が言えない人がいる」「必要な支援が届かない現実がある」という社会問題についての認知度を高め、こども宅食応援団が掲げる「今日を生きるこどもたちのために、多様な人々が手を携え 孤立を生まない社会を創る」というミッションについて、皆さんと共に考える特集企画です。

今回は、福島県郡山市でこども宅食を実施している、「ほしくま児童家庭支援センター」センター長の吉成のり子さん、社会福祉士の大川原順子さん、佐瀬駿介さんに活動への思いを伺いました。


――写真左より   佐瀬さん  吉成さん  大川原さん

児童家庭支援センターとは、児童福祉法に基づき、地域のこどもや家庭に関する相談を受け支援を行う児童福祉施設です。ほしくま児童家庭支援センターは福島県より認可を受け、福島県の県中地域を対象に、病院や行政、福祉施設と連携しながら相談事業を行っています。運営母体である「公益財団法人星総合病院」が運営しているフリースクール、こども食堂、放課後児童クラブ、保育所などと連携し、幅広い対応を行っています。


――大町キッズベース こども食堂を開催するなど地域の交流拠点となっています 

こども宅食での支援世帯数は約80世帯。宅食は2人1組で訪問し親子の様子を見守っています。

「私たちの援助方針はニーズにこたえることです。貧困を社会課題ととらえて、あたたかい関心をよせ続けることが大切だと感じています」

ほしくま児童家庭支援センターでは、つながり続けることを大切に日々の活動をおこなっています。

こども宅食の活動で出会った、3つのご家庭のエピソードを伺いました。

まっ白いごはん 幸せだね

福島県は、東日本大震災により、地震、津波、原発事故という未曾有の災害に見舞われました。復興への道筋はたてられているものの、今なおその影響は大きく影を落としています。

今年の夏、行政からの支援要請があり訪問したある家庭は、出稼ぎに出ていた父との連絡が途絶え、生活がままならない状況にありました。

家族構成は、父と母、祖母、そして乳児を含む多子家庭。震災前は農業を営み安定した生活を送っていたのですが、原発事故の影響からこれまでと同じ仕事を続けることが難しくなり、新規事業に取り組むも状況は悪化。今年に入ってからは、父が県外への出稼ぎで家族の生活を担うようになっていたそうです。しかし、父からの連絡が途絶え、世帯の収入はなく、貧困状態にあるとのことでした。

初回の訪問では、とにかく今食べられるものをと用意した品物を手に訪問。「お米を買うことができないんです」という声に応えようと、2回目の訪問時にはお米を30kg持参しました。8人兄弟ですので30kgのお米もあっという間になくなってしまいます。こども達にはお菓子も用意してお届けしました。お届けした品物を見て、小学生のお兄ちゃんは、3歳の妹に「ほら、〇〇ちゃんが大好きなまっ白いごはんだよ」と嬉しそうに言い、妹もとても嬉しそうに微笑んでいたそうです。そしてまた、ラムネのお菓子を一つ大切そうに手にのせて、「これ、私が1個もらっていいの?幸せだね」と笑顔をみせてくれました。「教えてもいないのに幸せって、どこでそんな言葉覚えたんでしょうね…」と兄妹の様子をみていたお母さんも自然と表情がやわらいでいたそうです。


――こども宅食のお届け品  手軽に食べることのできる食品やお米、お菓子、生活雑貨などをお届けします

永年のかかわりで見えた親子の変化

小学校高学年のA君は、この春から支援学校へ通っています。A君の家には、小学校低学年頃から訪問を行い5年ほどが経ちました。お母さんと二人暮らしのA君は、訪問当初、小学生になってもおむつがとれないなど、気になる様子がうかがえました。将来の事も考えて検査を受けるのはどうだろうかと、訪問スタッフは、お母さんと度々対話をすることもあったそうですが、頑なに「大丈夫」と気持ちを変えないお母さん。会話が進まないということも多くありました。

数年通いつづけ、寄付でいただいた食品やお菓子など宅食のお届け品をお土産に訪問することに。すると、お母さんとの関係性が少しづつ変わっていったのです。食のお届けをきっかけとして、訪問を拒否することがなくなり、自宅に上がって話をする時間を持つことができるようにもなりました。A君のこれからの事、お母さんが感じていること、今心配な事など率直に話ができるようになり、A君の支援学校への道筋をつけることができたのです。時間は必要でしたが、スタッフの思いが届き、必要な支援へとつなげることができました。


――こども食堂へもたくさんの親子が足を運んでいます  大町キッズベースでの出会いから、目標をみつけて、進学・就職と新たな一歩を踏み出したこども達もいます

ひとりじゃないのに孤独なんです

こどもの不登校をきっかけに、つながったお母さんもいます。いつもは「元気です!頑張っていますから」と明るく対話をすることの多かったお母さんでしたが、ある日の電話で急に涙があふれ「ひとりじゃないのにとても孤独で、分かってもらえなんいだと寂しい気持ちでいっぱいになるんです」と、辛い思いを話してくれました。お子さんの様子は、学校の先生との面談やスクールソーシャルワーカーとの対話など、様々な方の関わりから居場所に足を運べるようになるなど、少しずつ落ち着きをみせるようになってきています。良い方向に向かっているように感じられていましたが、お母さんの心の中は「助けてほしい、分かってほしい」という孤独感でいっぱいになっていたのです。相談先もあり、話もできて嬉しくはあるけれど、どこか腫れ物にでも触るかのような関わりばかりで、母の思いを受け止めてくれる人は誰もいないと感じ、孤独感が増すばかりだったと言うのです。「元気です!がんばっています」の言葉とは裏腹に、大きな不安と孤独を抱えていたのです。

あったかい関心をよせ続ける


――センター長/養護教諭 吉成のり子さん

センター長の吉成さんは、「親子との関わりには、あったかい関心をよせ続けることが大切」とおっしゃいます。「何か困っていることはありませんか」と言って訪問しても、相談するどころか心を閉ざしてしまうことも少なくないのです。そんな時に、「これは(ご寄付先から)お母さんへのエールなんですよ」など、見守っている存在がいることを言葉にして、こども宅食の品物を届けながら訪問するようにしているそうです。そうしてつながり続けるうちに、「欲しいものがあって」とリクエストがあるなど、家庭との関係性も構築されていきます。そして、「聞いてほしいことがあるんです」と心を開いてくれるようになっていくのです。


――社会福祉士 大川原順子さん

大川原さんは「良い関係がすぐに築ける方ばかりではないですが、いつかは分かってくれると信じて関係性を保っています。なかなか伝わらなくても、それでも訪問し続けます。訪問することで家庭の様子を知ることができますし、こどもにとって良い関係となるようにつながり続けます。こども宅食の物資はそのような時の心強いツールになっています」とおっしゃいます。

訪問することで日々つながり続けているのです。


――社会福祉士 佐瀬駿介さん

佐瀬さんは、今年度病院スタッフから児童家庭支援センターへ異動したばかりです。不登校の中学3年生と一緒に高校見学に行くなど伴走支援を行っています。「伴走していく中で、担当生徒の進路が決まるなど、変化・成長が見られ、伴走し続けることの重要性を感じています。これからも地域課題と向き合い、こども達がどんな困りごとを抱えているのかしっかりと汲み取っていきたいです」とこれからの活動への思いをお話し下さいました。

大切なのは「あったかい関心をよせ続けること」

ひとりではなく、たくさんの存在が見守っているんだという事を伝え続けること

大人もこどももスタッフも、地域の方も、みんながつながって支えあえる。そんな社会を作ることが「孤立をうまない社会をつくる」ことにつながる。ほしくま児童家庭支援センターでは、心に寄り添い、あたたかく包み込むような関わりで親子の毎日を見守っています。

 

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