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地域とともに、自分らしく小豆島で生きるために  香川県小豆島町 一般社団法人小豆島子ども・若者支援機構「小豆島こども宅食」

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香川県の離島、小豆島(しょうどしま)は、瀬戸内海に浮かぶ、人口2万5881人(2020年度推計の島です。温暖な気候からオリーブやみかんの栽培も盛んで、小説『二十四の瞳』の作者、壺井栄の故郷としても知られ映画のロケ地にもなりました。その美しい景観と穏やかな環境を求め多くの人が訪れる人気の観光地でもあります。

小豆島子ども・若者支援機構は、代表の岡広美さんの「こどもたちが自由に安心して過ごせるような居場所をつくりたい」という思いから、2017年に小豆島町で活動をはじめました。フードバンク、こども食堂、就労支援、移動支援、居宅介護事業と幅広く地域に根ざした活動を行っています。こども宅食は、コロナ禍の2020年に取組みをスタート。現在は約90世帯(200人)にお弁当や、食材などのお届けを行っています。

きっかけはある親子の会話から

岡さんが食を通した支援が必要だと感じたきっかけは、ある親子の会話でした。

コロナ禍で緊急事態宣言が出され、明日から学校が休校になるという案内が届いたその日、居場所で過ごしていたお母さんが、岡さんの目の前でこどもを怒鳴りつけたのです。

「明日からお昼ご飯どうするん。お金ないやろう。恨むんやったら首相をうらめ」と。

これはダメだ、なんとかしなくてはと思い立った岡さんは、今できる事をしようと、ご飯を炊いて家庭に渡すことをはじめました。最初はご飯だけでしたが、おむすびになり、そしてお弁当になりました。1ケ月後にはボランティアの皆さんの協力もあり、月に50食のお届けができるようになりました。コロナ禍をきっかけにスタートしたおむすび弁当は、今では月に250食をお届けするようになっています。


おむすび弁当をはじめて5年 今では地元食材も活用した愛情いっぱいのおむすび弁当をお届けしています

日々感じる「訪問して届ける」ことの大切さ

訪問して家庭とつながりをもつきっかけづくりには、食は欠かせないと岡さんは言います。抵抗感をもつご家庭も、食事は大切なものなのでドアを開けてくれます。訪問回数を重ねるごとに、電話がかかってくるようになったり、必要なもののリクエストがくるようになったり、少しづつ心の距離が近づいていきます。

ある家庭では、お米や品物を持って訪問した際に、「お子さんたちお元気ですか?」と何気なく声をかけたところ、お母さんの表情が変わり、堰を切るように思いのたけを話してくれたことがあったそうです。こんなに大変な思いを抱えていたのかと、その日はじめてお母さんの思いを受け止めることができました。話をしながら、解決の糸口になるかもしれない、一緒に相談してみようという対話をすることもできるようになりました。

心の扉が開けば、その家庭が社会とつながるきっかけになる。親子をとりまく社会が拡がっていく。そんな関係性づくりを大切に活動を行っています。


訪問時の様子 岡さんのあたたかな雰囲気で自然と会話もはずみます

地域の力を信じて

支援家庭を社会につないでいく時に、岡さんが大切にしていることがあります。それは地域の力を信じることです。行政や社協、学校など専門機関との連携はもちろんですが、地域のコミュニティでこども達が輝ける場所、親子が安心して過ごすことのできる居場所と出会えるように、肩書きにとらわれずにつなげていくことにも取り組んでいます。

都会から小豆島に移住し、環境の変化から孤立してしまい学校に通うことができなくなったお子さんがいました。兄弟は4人。一番上のお兄ちゃんは家で暴れるようになっていたそうです。こども宅食で訪問した際にこども達の様子を見る中で、「お兄ちゃんの暴れたい気持ちを鎮めるよりも、何か暴れてもいい居場所を、気持ちを発散することのできる場所を探すのはどうだろうか」と思いついたそうです。そこで岡さんは、地元で観光客向けにマリンスポーツ事業をされている代表の方に相談をしました。すると、マリンスポーツの体験事業を手伝ってみるのはどうだろうかと話が進み、毎日通うようになりました。その経験のなかで、お兄ちゃんは「有用感」誰かに必要とされているという喜びを感じることができるようになり、次第に表情も明るくなっていったそうです。

つながった先ですぐに居場所を見つけられないこともあります。
でも、トライ&エラーOK。ダメだったらまたやり直せばいい。地域の力を信じて、対話をつづけながら親子の居場所をみつけていくことにも取り組んでいます。


–毎月様々な物資をご家庭にお届けしています

『これでいいのかな?』は、まだまだ終わらない

小豆島で親子の支援を初めて7年。岡さんは「地域で安心して親子が過ごせるように」と固い決意を持って活動を行っています。

これまでの活動を振り返り岡さんは、「こども食堂も何もない、「宅食」という概念も言葉もない土地で、変だと思われても、何を言われても『親子の支援をやる』と決めてやってきたものの、これまでずっと、これでいいのかな?を繰り返しながら暗中模索でここまで来ました。気が付いたら、少し道ができかけてるのかな?と思いますが、ずっと言い続けている『これでいいのかな?』は、まだまだ終わりそうにありません」とおっしゃいます。

離島での子育ては、コミュニティの濃密さから世間体や周囲との関係性の中で、支援を受けることを心苦しく感じてしまう方も少なくないといいます。無理を通すことで、心に余裕がなくなり、こどもにつらく当たってしまうという方も。また、離島であるがゆえに、都会なら受けることのできる支援を受けられないといった格差も感じられることがあるそうです。

「そんな社会を変え、親子の可能性を拡げていくことができるように。こどもや若者たち、その家族の声を聴きながら、ニーズに寄り添い続けます。つらい思いをお母さん一人に抱えさせるのではなく、地域で見守り、地域で育てて行けるような環境づくりを目指しています」

こどもたちが自分らしく小豆島で生きていけるようにと、岡さんは「これでいいのかな?」を繰り返しながら、地域とともに親子を見守り続けています。

 

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