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地域でつなぐ、地域でひろげる「見守りの輪」――佐賀県佐賀市 おなか一杯便

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佐賀県佐賀市に拠点を置く、「おなか一杯便」は活動スタートから、今年の2月で5年目を迎えました。

現在、北川副小学校区の23世帯を対象に、2ケ月に1回、食品の配送を行っています。

その特徴は、

・北川副小学校に子どもが通っている方を対象にしている
・食品のお届けは「宅配便」で行う
・小学校の先生方と協同で活動している
・届け先の世帯環境などに干渉しない

ということ。

小学校を拠点とした地域限定の活動の為、「顔が見えないからこそできる活動」を大切にされています。

 

今回は、ボランティア参加しながら取材してきた、おなか一杯便の配送準備の様子をご紹介します。

――かわいいお手伝いも!

「顔が見えない」からこそ伝わる支援

「おなか一杯便」では、配送に必要な情報のみを担当者が管理し、「利用者とのコミュニケーションは基本行わない」という方針で開設当初から活動を行ってきました。

利用申込みも、学校を通して行われます。

先生方から直接、就学援助を受けられているご家庭へ利用案内を渡していただき、インターネットを通じて利用申込みを行う、というスタイルです。

食品も、一律同じ内容のものを準備し、スタッフが届けるのではなく、宅配便へ委託して各家庭へ届けられます。

 

この活動は、一見他のこども宅食とは違うスタイルですが、そこには小学校区で行われるこども宅食だからこその深い配慮があります。

同じ小学校に通う子どもやその保護者同士で、ボランティア側と利用する側が見えてしまうとお互いに気をつかわせてしまうのではないか、ということから、利用者とのコミュニケーションを行わないようにしているのです。

この方法であれば、誰が利用しているかをお互いに知ることはありません。

 

利用者の中には、支援を受けていることを「知られたくない」「顔を見られたくない」という方もいらっしゃいます。

そのことが理由となり利用することをあきらめてしまうのではないか。それでは、地域との繋がりももてなくなってしまう。それならば、いち早く必要な支援が届くように、「学校を通じてアプローチ」して活動を行うことにしよう。

この方針は、開設から今まで大切にされています。

 

また、こども宅食の事務局が直接つながらなくても、子どもたちに一番近い学校の先生方がこの活動に参加していること、そして何より、地域の方のご支援も頂き、地域ぐるみで活動を行っていることで、しっかりとした見守りができ、利用者にとっての安心へとつながるのです。

近いからこそ干渉しない。だけど毎日近くで温かさを感じることができる。

子どもたちが多くの時間をすごす学校・地域ぐるみだからこその、他では類をみない、そんなこども宅食です。

活動拠点は小学校のコミュニティルーム

おなか一杯便」の配送は、2か月に1回。

宅配便で発送することも考慮して、1家庭約10㎏を目安に食品の準備が行われます。

地元の生産者さんから届くお米や、地元スーパー・商店からご協力いただいた食品。そのほか、おてらおやつくらぶから届くお菓子など、保存性の高いものを中心にバリエーション豊富に食品が揃います。

 

活動拠点は、小学校のコミュニティルーム。

食品の一時保管から当日の配送準備に至るまでこの教室で行われています。

――机いっぱいの食品

取材に伺ったのは、2月の配送日。

土曜日の午前中ということもあって、静かな学校…かと思いきや、ひときわ活気のある一室が。

開始予定の10時には、すでにたくさんのボランティアさんが集まり、配送準備がスタートしていました。

 

その段取りはとにかくスピーディー。

食品の入った段ボールを開封する方、梱包しやすいように各テーブルに配る方、空になった段ボールの片づけを行う方などなど、自然に分担して作業が進みます。

――動きやすいようにレイアウトされています。

あっという間に机は食品で一杯になり、みるみる準備が進んでいきます。

 

参加して気づいた「なるほどポイント」は!

  その① 教室前方に事前に用意された「見本セット」がある

  その② 配り忘れが起きないように「ひとり1食品」ずつセットを行っていく

  その③ 机の配置が工夫されていて人の動きがスムーズ

  その④ 段ボールに詰める時の技が光る!!

この4つのポイントは、なんとも重要で。

見本があることで、はじめて参加する方も戸惑いなく行動でき、「じゃあ次はこれいきます!」「これお願いします!」と声をかけあいながら準備をすることで、ボランティアさん同士のコミュニケーションも深まっている様子が感じられました。

ボランティアには、現役の保護者さん、保護者会OBの方、先生、そして地域の方も参加されていて、チームワークも抜群。

私は今回はじめての参加でしたが、終わる頃には昔からいたかのような居心地のよさを感じるほどでした。

――教室前方には、1世帯分の配布見本が作られています。

そして何より、段ボール詰めの巧みさ!は感動ものです。

10㎏の食品は大きな段ボールに入りきれないほどの量になるのですが、あふれんばかりの食品を丁寧に荷詰めして、見た目にも美しい!

参加している方は、「受け取った方が段ボールを開けた時に喜ぶ顔を想像するとキレイに入れたくなるんですよね」とおっしゃいます。

――神業の梱包~食品がきれいにびっしりきれいに入れられています。

そんなひと工夫から、相手を思う気持ちが伝わっていくのだと感じました。

最後に手書きのメッセージカードを入れれば、配送準備完了です。

「つながりを感じてほしい」荷物に添えるメッセージカード

「おなか一杯便」では、お届けする荷物に手書きのメッセージカードを添えています。

  【毎日寒い日が続きますが、かぜなどひかないように 

   元気に過ごしてくださいね。早く春がくるといいね。】

短い言葉のなかに込められているのは、「ひとりじゃないよ」というメッセージ。

スタッフの方の、真心のこもった筆跡から伝わるあたたかさを感じることができました。


――メッセージカードは一枚一枚手書きで用意されます。 

「困窮家庭を助けたい」その一念から、「おなか一杯便」は当時の校長先生とPTA有志でスタートさせた活動です。

開設当時は、まだ全国でもこども宅食の活動は少なく。ノウハウも、食品調達も、資金もゼロからのスタートでした。

そんな時に支援してくださったのが、地元北川副地区の皆さんでした。活動費用をご寄付いただき、また、地元のスーパーや商店のご理解をいただいて、配送をスタートすることができたそうです。

 

北川副地区では、かねてより、「地域の困りごとは地域で解決する」という思いのもと、地域活動が盛んに行われています。

「おなか一杯便」の活動も同様に、地域ぐるみで、その問題解決へ取組まれていて、秋には、地域の方のご協力をいただき、小学生と共に、地元の神社のご神田に植えたお米を収穫し、お米はこども宅食に、そしてその稲で神社のお正月飾りの制作を行う、といった取組みも行われています。

――ボランティアの皆さん

困りごとを、子育て世帯だけの問題として捉えるのではなく、地域の事として捉え、地域ぐるみで見守っている。

「顔がみえない」けれど、「つながり」を感じることができる。

それが「おなかいっぱい便」の活動の魅力ではないでしょうか。

これからもつながる支援に

開設から5年目を迎え、代表の大坪さんは、「月日がたてば人も変わる。立ち上げの思いを良く知る先生や保護者さんが卒業されていく中で、これからの活動を担う方へつなげることもこれからの課題。」とおっしゃいます。また、

「開設当初は、北川副だけでやっている。そう感じていた時期もあった。5年経ち、今では全国にこども宅食の輪が広がっている。

同じ思いで活動している人が全国にいて、自分たちだけじゃないと思えるようになったことは大きな変化。もし私たちのように校区単位での活動を行いたいという方がいれば、培ってきたノウハウをこれからは伝えていきたい。広げていきたい」

とお話くださいました。

   

全国のこども宅食のさきがけとしてスタートした「おなか一杯便」。

地域ではぐくまれた、「見守りの輪」は、あたたかく大きく全国へ広がっています。

 

 

佐賀県佐賀市 「おなか一杯便」

活動エリア :佐賀県佐賀市北川副町 佐賀市立北川副小学校区

配送は2か月に1回、活動日は偶数月の第3土曜日。

北川副小学校に通う方に限定(中学校を卒業するまで利用可能)。

宅配にはココネットを利用。

(2022年2月現在)

 

   

ライター:岩松優美 

 

>>おなか一杯便の活動を始めたきっかけについては、こちらの記事をご覧ください
給食費の未納問題から始まった【こどもおなか一杯便】100円を握りしめてパン1つ買う中学生のために

 

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