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ガチャガチャに思いを込めて――大分県宇佐市「ゆめカフェ・モンスターのがっこう」

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大分県宇佐市に拠点を置く「ゆめカフェ・モンスターのがっこう」は、古い商店を改装してオープンした、地域のみんなが楽しく過ごすことのできるコミュニティカフェです。小学校の近くにあるため、放課後にはたくさんの自転車が並んで、わいわい楽しい時間が流れています。

店内には、少しのお小遣いで購入できる駄菓子やガチャガチャなどが並んでいます。手作り作家さんの販売ブースや、日替わりで提供されるカフェメニュー、手作りのスイーツ、お弁当や、野菜、惣菜の販売も行われ、飲食スペースもあります。子どもはもちろん、大人も何度でも足を運びたくなるお店です。

今年夏にオープンしたこのカフェを拠点として、「フードバンク」「子ども食堂」そして、「こども宅食」の活動が行われています。

きっかけはコロナ禍で実施した子どもたちが無料で楽しめる「おやつガチャ」

オーナーの古藤さんは、「ガチャガチャ」を販売・管理する事業を2018年から行っています。土産物店への「ガチャガチャ」の設置。そして移動販売車を活用してイベントへ出かけるなど、子どもたちに楽しみを届けたいという思いで、様々な活動を行って来ました。

そんな中発生した、新型コロナウイルス感染症。イベントの中止は避けられず、子どもたちが残念な思いをしているという多くの声を聞くようになりました。

観光客が減少する中、交流のある土産物店の方からは、「賞味期限が近く、廃棄しなくてはいけない食品がたくさんある」という話もあり、「密にならずに、屋外で、短時間で、何か子どもたちが楽しめるイベントができないだろうか」と考案したのが「おやつガチャ」でした。カプセルに番号札を入れ、そして、ご提供いただいたおかしにも番号をつけて、「おやつガチャ」を行います。子どもたちは誰でも無料で参加できるイベントです。平日の夕方、約1時間という限られた時間ではありましたが、子どもたちは大喜び。

この活動を通して、子どもたちの笑顔に出会えただけでなく、「地域に余っている食品がこんなにもある」という現状とも出会い、来月もやってみよう!と準備を進めることになりました。

――「おやつガチャ」は、「こども一回0円」で参加できます。

「ご飯を食べていない子どもがいる」拠点を決めて継続的な支援を行いたい

「おやつガチャ」のイベントを開催した頃、感染拡大の状況下で学校は休校になっていた時期でもありました。地域のお母さん達と準備を進める中で、「身近にご飯を食べていない子どもがいる」「給食でしか食事をしていない。休校になったことで、食事のない日々を過ごす子ども達がいる。」という話を耳にします。「まさかこんな身近に食事ができない子どもがいるとは思っていなかった」その事実に古藤さんは、大きな衝撃を受けたそうです。

それならばと、地域の方から頂いていたお米を活用して、「おやつガチャ」と一緒におにぎりの提供を行うことを決めました。

この事と地域の方からも「食材を提供したい」という声も多くあったことがきっかけとなり古藤さんは、継続的に食材を預かってお渡しする拠点をつくろうと心に決め、利用しやすいように、小学校の近くにカフェをオープンすることにしました。

――食材や日用品など月に一度を目安にお渡ししています。

困っている人だけでなく誰もが利用できるように

カフェオープンから数ヶ月が経ち、地域の方からも「フードバンク」としての存在を周知してもらえるようになり、農業を営む方から規格外の野菜や果物、企業からは冷凍食品、地域の方からは米や野菜と、連日たくさんの食材が届けられています。生鮮品などはその日のうちにSNSで案内をするなどして、必要な方へお渡しします。地域の方の協力で、「子ども食堂」や「惣菜」の食材としても利用されています。

そんな活動を知り、「必要な野菜があったらうちの家庭菜園で作るよ」と声をかけて下さる方もあり、支援の輪が地域に拡がりを見せています。現在食材などのお渡しを行っている登録世帯は、100世帯を超えています。

古藤さんが大切にしていることは、「困っている人だけに限定しない」という事です。その理由は、困っている方に限定することで、利用することを拒む世帯が出ることを避けるためです。届いた食材の量やタイミングに応じてお届け数を決め、登録して頂いているLINEやSNSで案内を行い必要な方へお渡します。ひとり親世帯へは優先してお届けできるように専用LINEを作成し、お届けのタイミングなども考慮するようにしました。

間口を拡げて、状況に応じて優先順位を考えて案内することで、誰もが利用しやすい環境になればと工夫を行っています。

――公式LINEとは別に、ひとり親世帯専用のLINE登録フォームも用意してお届けのタイミングなど工夫しています。

より必要な方へ届くように、カフェで工夫していること 

こども宅食のお渡しは、品物の準備など古藤さんがひとりで担っていることから、多くの方へお渡しできるように、カフェに取りに来ていただくようにしています。

足を運びにくい方へは自宅へのお届けも行います。また、会いたくない方、姿を見せたくないという方へは、夜(お店の閉店時間に)取りに来てもらえるように、カフェの入り口に品物を用意して、無人で受け渡しができるようにもしました。

――都合のいい時間に取りに来てもらえるようカフェの入り口に番号を書いて用意しておきます。

カフェの利用に抵抗があり、姿を見せたくない。そんな方こそ本当に支援が必要な方と、古藤さんは考えています。顔を合わせなくても、LINEであれば交流ができるという方もあり、コミュニケーションをとる中で、少しずつ関係性を築き、ひとりひとりの家庭の様子をみながら困りごとを知り、必要な対応を検討するよう心がけているそうです。

また、親御さんとはつながっていないけれど、子どもだけがつながってゆめカフェを利用している世帯も、数世帯あります。

育児放棄で食事ができていないことが伺える、そんな子たちには、学校帰りにごはんを食べて帰ってもらったり、簡単に調理ができるものを持ち帰ってもらったり、安心して過ごせる居場所になるようにしています。つながることで様子を見守り、必要な支援に繋げたいという古藤さんの思いです。

子どものSOSは子どもからしかキャッチできないこともあります。

交流をする中で、ぽつりぽつり語ってくれる家庭の状況から支援の必要性を知ることも少なくありません。時には、見送りがてら自宅を訪問することもあります。

どこまで踏み込んでいいのだろう、親御さんに拒否されるかもしれない。そんな不安を感じることもあるそうですが、まずは子どもだけでもつながっていてくれたら、ひとまずお腹を満たしてもらえたら。そんな思いで活動を続けています。

――七夕かざりの願いごと「ゆめかふぇがつぶれませんように」

地域の力で居心地の良い場所をつくる

店舗として運営を行っている「ゆめカフェ」が活動を行う為には、家賃も経費も必要となります。継続して活動を行う為には、安定した資金も必要です。

古藤さんは、助成や補助金だけに頼らず、自力の資金で運営できることが長く継続して活動を行っていく為に必要なことだと考えています。今後は、イベントなども開催し、地域の皆さんが気軽に足を運ぶことのできる、居心地のいい交流拠点としてもカフェを解放していく予定です。

「地域の方と継続的な見守り支援を行えるような活動にしていきたい」

古藤さんが願い続けている思いが、地域に愛され支えられ、形になろうとしています。

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