こども宅食の取り組みでは、ご自宅に食品等をお届けに伺う1対1のやり取りを行うことで、「生活に困っていることを周囲に知られたくない」などさまざまな悩みを抱えるご家庭にとっても、周囲からこども宅食の利用を知られることなく利用しやすい工夫をしています。
しかし、こども宅食の支援は、実施団体が単独で行っているものではありません。
こども食堂やフードパントリーなどの他の支援との協力や、地元の農家や企業、寄付者などからの食品や資金の寄付。そして児童家庭支援センターや社会福祉協議会などの専門機関との連携。
こども宅食のお届けの後ろ側には、さまざまな協力者が連携し、地域でご家庭を支え合っています。
埼玉県新座市で活動するオハナ合同会社は、「子育てにもっと頼れる場所を」をモットーに、これまで「こども食堂」の活動を2年ほど行ってきました。こども食堂を行う中で、時にお米や常温保存の食料品を大量に寄贈いただくことがあり、プチパントリーとして食材配布の活動をはじめたことがきっかけで、今年の4月から本格的にパントリー&こども宅食という形で「オハナ子育て応援こども宅食」の事業をスタートしました。
利用されている方々は、ひとり親の方、多子世帯の方、海外にルーツのある方……様々な背景を持つ方々が現在22世帯います。これまではこども食堂でのお弁当配布と少しの交流に留まっていましたが、この事業、特にこども宅食事業を始めてみて、これまでよりも各ご家庭の事情に一歩踏み込んだことを感じています。
一番難しいなと感じるのは、利用者の方々との信頼関係の構築です。特に、利用されている方々へのお声がけの言葉選びは慎重にしているつもりですが、まだまだ勉強不足を痛感することもあり、日々勉強です。
私たちがこども食堂を行う上で大切にしてきたことは、「利用者に優先順位を付けない(生活に困っているかどうかを運営側が査定しない)」「利用者を叱責しない」ということです。こども食堂=貧困、可哀想なこどもの行く場所、運営側が上で利用者が下、というイメージに結びついてしまうと多くの方々が足を運びにくくなってしまうため、ボランティア研修を取り入れながら「この場に関わる全ての人が安心できる居場所」を目指してきました。
ですが、パントリー&こども宅食を行う上では、こども食堂とは少し考え方やアプローチ方法を変えなければならないとも感じています。コロナ禍で子育てをしているほとんどの世帯が様々な難しさを抱える中で、ご家庭との関わり方を考えるのがとても難しいです。
そんな運営の難しさを感じる一方で、各ご家庭に一歩踏み込めて良かった、と思うエピソードもあります。まずは、「こども食堂ではなく、お米が必要なんです」という方々にお応えすることができたこと。そして、パントリー&こども宅食を通して私たちを信頼してくださったご家庭が、「今度は、こども食堂に行ってみようかと思って」と地域交流の場に来てくださったこと。また、「私には、実はこんなスキルがあって」と連絡をくださって、こども食堂での特別企画を主催してくださったこともありました。
ボランティアのメンバーにも、現在、子育て真っ最中のメンバーが多くいます。子育て世帯には本当に多様な困りごとがあり、居場所や食支援など、様々な支援の方法が連携していかねばならないことを感じています。これからは、私たちの事業のどれかひとつでも、地域の中の誰かの役に立ち、「頼れる場所」となっていけるよう、パントリー&こども宅食の事業の運営基盤を確立させるため、ボランティアメンバーと力を合わせて頑張ります!
「子ども宅食みんなに届け隊」は、2010年4月より子どもと家庭を地域の中で支える相談事業を行う児童家庭支援センタークムレ(委託:岡山県)を中心に、同法人の職員や地域の有志の方々の協力を得て、2021年12月より活動しています。
これまで、日々家庭や関係機関、地域からの子どもに関する相談に応じる中で見えてきたニーズや課題から、相談だけにとどまらない子育て家庭への伴走として、子どもたちの体験学習や食を介した交流の場(子ども食堂)、ひとり親の交流会、学用品等のお譲り会などに取り組んできました。
昨年度、新型コロナウイルス感染症により経済的な影響を受けた子育て家庭に食材を届ける「子どもの食緊急支援プロジェクト」(助成:100万人のクラシックライブ)に参加し、食品の配送が支援者の介入への間口の広がりやきっかけ作りになり、子育て家庭の笑顔とその後の支援への繋がりとなることを実感しました。
この度、こども宅食応援団さんよりお誘いをいただき、ご協力下さる地域の皆様と隊をなすように一丸となって届け「隊」・一人でも多くのご家庭に笑顔と繋がりの温かさを届け「たい(want)」との思いを込め、「子ども宅食みんなに届け隊」を発足し活動を開始したところです。
12月にはクリスマス便としてクリスマスや年末年始を家庭で温かく過ごせるようサンタクロースに扮して配送を行いました。1月・2月も季節感を取り入れながら、気持ちも体も温かく過ごせるよう日用品も含めながらお届けしました。
電話に出ることもなかった家庭が、玄関口に出てくれるようになり、話をしてくれるようになり、食品の配送を介して少しずつ家庭の間口が開き、繋がりができつつあるのを実感しています。
――ボランティアさんによるお手紙の封入の様子
食材を受け取ったときの笑顔だけでなく、「一人じゃない」、「いつか寄付やお手伝いの側にまわりたい」などの前向きな言葉も受け、取り組みの意義を感じています。
また、子育て家庭との繋がりのみならず、他の子育て家庭支援機関との繋がり、ボランティアや、地域有志団体との繋がりにもなっており、食材を介さずとも繋がり合える仕組みに発展するためのきっかけにもなっています。
今後も「子ども宅食みんなに届け隊」の活動を通じ、支え合いの輪を広げていきたいと思います!
――ボランティアさんによる食材等物資パッキングの様子
こども宅食は、点と点のつながりではなく、面でご家庭を支え合う取り組みです。
「オハナ子育て応援こども宅食」や「みんなに届け隊(たい)」のように、地域を巻き込んだ取り組みは、困りごとを誰にも話せずに孤立していたご家庭にとって、支え見守ってくれる人たちがたくさんいる心強さを感じられるのでは、と思います。
子育てを親だけが抱え込むのではなく、社会みんなで育てていく。そんな未来に近づけるよう、こども宅食応援団は「こども宅食」の全国普及活動に邁進いたします。
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