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2021.07.13

「全国先進事例に学ぶ、食支援×アウトリーチの最前線」――第2回全国こども宅食サミットで行われた事例報告セッションの内容を紹介します!

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2021年4月13~14日の2日間にわたり、「第2回全国こども宅食サミット」がオンラインで開催されました。今回は、1日目に行われた各地のこども宅食団体からの事例報告セッションの内容を詳しくお届けします!

 このセッションでは、こども宅食の事業実施にあたり乗り越えなければならないさまざまなハードルにどう取り組むべきかを、事例を通して紹介。こども宅食のモデル事業をおこなう実施団体の皆さんが、「利用者との接点作りと支援へのつなぎ」「非専門職のメンバーが担う役割」「地域社会や支援の狭間で見つけたニーズへの取り組み方」の3つのテーマを軸に、それぞれの体験や大切にしている考え方について語ってくださいました。

 

1.利用者との最初の接点作りと支援へのつなぎ~事業の入口と出口をどう設計するか?~

 

登壇者

長崎市版こども“宅所”つなぐBANK事務局長 山本倫子氏

山本さんが2019年に立ち上げた「つなぐBANK」は、食料支援を入口に、医療・福祉・法律などの専門機関にアクセスしづらいご家庭を専門的支援に “つなぐ” 事業です。一般社団法人ひとり親家庭福祉会ながさきによって運営されています。

つなぐBANKでは、児童扶養手当の利用家庭を対象に、食料品を受け取りに来てもらう「宅所」事業を2か月に1回程度のペースで開設。現在は135~140世帯が利用中です。

宅所事業では、農家や企業から食品・寄付金を集め、利用者に食品や物品をお渡しします。会場には相談ブースを作り、困りごとを気軽に相談できるようにしているそう。

 

相談ブースには社会福祉士、精神保健福祉士、産業カウンセラー、歯科医師、行政書士、弁護士、臨床心理士、看護師、保育士などの専門家が揃います。親御さんが相談に集中できるよう、お子さんを託児スペースでお預かりするのも特色です。

支援が必要な家庭に知ってもらうための“入口”づくりについて、山本さんは「設立1年目は、自治体の窓口に申込みチラシを置かせてもらっていました。実績ができ、活動内容を行政にも信頼してもらえた2年目以降は、現況届の用紙と一緒にチラシを家庭に送付してもらえるようになりました」と語ります。

チラシの裏にはQRコードを入れ、スマホから簡単に申し込めるよう工夫。忙しくて余裕がない、手続きが苦手という人でも数分で申込みができるようにしました。

申し込んだ後も、支援を利用しやすいようさまざまな工夫が。宅所は働いている人でも足を運びやすい日曜日の11~17時まで開催し、時間内に来られない人のために21時まで待機します。会場は駐車場代がかからない公共施設。専門家への相談もLINEで事前予約できるようにし、当日も「こんな相談ブースがあるけど利用しませんか」と声掛けしています。

日時・場所は利用者のみにLINEで通知し、人目が気になる方に配慮。また、行政サービス利用の申請書を取りに行けないご家庭には、スタッフが役所に書類を取りに行ってお渡しすることもあるそうです。

親御さんのなかには「親として失格なのではないか」「支援団体は信用できない」などの不安を抱えている方もいます。そんな心の障壁を取り払えるよう、会場のスタッフは明るい雰囲気作りや、安心感のあるコミュニケーションを心掛けています。

 

こうした工夫により、宅所を利用した135世帯中120世帯が、初回来所時に長崎県ひとり親家庭等自立促進支援センターの会員登録に至ったとのこと。細かいところまでフォローし、取り残される人がないよう工夫を凝らした事業設計が、多くの親子を適切な支援につなぐ結果となりました。

 

2.定期的なアウトリーチ型事業で“非専門職”のメンバーが担う重要な役割とは

 

登壇者

みまたん宅食どうぞ便 事務局 松崎亮氏

みまたん宅食どうぞ便 相談員 内窪弘子氏

NPO法人バディチーム 代表 岡田妙子氏

NPO法人バディチーム おうち食堂事業担当 小川るみ氏

江戸川区子ども家庭部 相談課 課長 田島勉氏

こども宅食の「食品の配送→ご家庭との関係性構築→状況把握・見守り→専門的支援へのつなぎ」といった工程の担い手には、“非専門職”の団体職員やボランティアメンバーも少なくありません。

そうしたメンバーが担う役割や、支援ボランティアに向いている人の特徴について、宮崎県三股町の「みまたん宅食どうぞ便」、江戸川区の「NPO法人バディチーム おうち食堂」の方々が語ってくれました。

 

■みまたん宅食どうぞ便の場合

宮崎県三股町の「みまたん宅食どうぞ便」は、レシピ付きの食材の宅配事業。月に一度、70の支援世帯に生鮮食品などの食材とレシピを届けています。

専門的支援につないだ事例として、松崎さん・内窪さんは「外からは困窮しているように見えなかったものの、実際にはローンの多重債務で困窮しているご家庭」の例を挙げ、ご主人が支援を受けることに反対していた当初から、ボランティアメンバーが少しずつ関係性を築き、最終的にはご主人からの同意を得た上で家計相談につなげたという経過について説明しました。

 

その他のご家庭でも、顔を合わせているうちに「子どもの制服を買えない」「職場の人間関係に悩んでいて」といった悩みを親御さんから吐露されたケースがあったと言います。

 

松崎さんは「そうしたご家庭は、相談窓口からはなかなか支援につながれません。こちらから出向いていくアウトリーチの必要性を強く感じました」と述べ、ボランティアメンバーに頼もしさを感じていることを覗かせました。

内窪さんは、ボランティアメンバーに求める資質として「基本的なマナーがある」「地域や風習をよく知っている」「人との距離の取り方が上手」などを挙げ、「義務的にではなく、楽しみながら地域活動に取り組んでもらえる方にお願いしています」と語りました。

■おうち食堂の場合

東京都江戸川区の「NPO法人バディチーム おうち食堂」では、現在25世帯を対象に買い物と調理の支援を週1~2回提供しています。

食支援のボランティアが家庭訪問前に食材の買い出しをおこない、利用家庭の自宅で調理・後片付けをします。食育や離乳食作りをサポートすることもあります。

 

岡田さんによると「対象家庭にはさまざまな事情や背景があり、親御さんが精神疾患や精神的な不調を抱えているケースも多い」とのこと。自ら動けない方のところに訪問し、孤立させることのないよう努めています。

ボランティアメンバーには、普通の話ができる、友達に近いような存在が求められていると感じるそう。「児相や行政を拒否していても、ボランティアの○○さんなら入れる、というご家庭も少なくないんです」と岡田さん。

小川さんは「申し訳なさそうに『料理が作れなくてすみません』『寝てばかりでごめんなさい』という親御さんもいますが、ボランティアさんが自然に『大変だったね』『よく頑張ってきたね』と声掛けしてくれるので、親御さんも『指導はされないんだ』『ありのままを見せていいんだ』と安心してくださっています」と語ります。

 

こうした温かなコミュニケーションを通して得られるのは、親御さん自身の安心感。「自分は大切に扱われている」と感じることで、子どもとの関わりに余裕が出てきたり、「人に頼ってもいいのだな」と思えたりと、親御さんが次のステップに進めるようになることを目指しています。

岡田さんがボランティアメンバーに求める資質は「家庭の問題を自分が解決しよう、何とかしようという思いが強過ぎず、解決はご本人やご家族がしていくということを心得ている」「否定せずにありのまま、価値観を押し付けない」こと。実際に、おうち食堂では「食事作りであればできるわ」と参加してくれた高齢のメンバーが、困難な家庭の最前線で活躍しているということも多々あるそうです。

江戸川区子ども家庭部の相談課課長である田島さんからは「ボランティアの方に直接ご家庭に入っていただくことは、安心感や信頼感を築くのに非常に有効です。そこで気付いたことを、行政の専門的なサービスにつなぐことにも大きな意味があります。また、食育を通じてお子さんの健全な育成を助けることにも期待しています」とコメントをいただきました。

■まとめ

2つの事業でボランティアが担う役割には、次の3つの要素が共通しています。

1.状況の把握

定期的な接点によって多くの情報が集まり、親御さんや子どもの気になる様子や状況変化を把握できる。

2.安心感と信頼の形成

利用世帯にとって、自分たちの状況を受け止めてもらえたことが安心感となる。「自分には応援してくれる人がいる」とわかり、孤独感が軽減される。

3.課題に対面する心の準備

少しずつ問題を相談して一緒に解決するという積み重ねによって、支援を求めるシグナルを出しづらい方や、支援を受け入れることに抵抗がある方の「求援力」(助けを求める力)と「受援力」(支援を受け入れる力)が徐々に伸びていく。安心感が形成されることで「支援を受け入れてもいいかな」と課題に対面する心の準備が整い、最終的には専門的支援につながる。

 

困窮するご家庭と深い関係を築ける地域のボランティアメンバーの存在は、こども宅食のようなアウトリーチ型支援において欠かせない存在と言えそうです。

 

3.~アウトリーチ、その先に見える課題~ 地域社会の狭間、支援の狭間で見つけたニーズにどう取り組むか

 

登壇者

みまたん宅食どうぞ便 事務局 松崎亮氏

つなぐBANK 事務局長 山本倫子氏

小児科医 金子淳子氏

 

このセッションでは、みまたん宅食どうぞ便の松崎さん、つなぐBANKの山本さん、山口県宇部市でこども食堂やこども宅食事業をおこなう小児科医の金子淳子さんに、こども宅食の支援世帯の実態から設定された“仮の事例”をご覧いただきながら、実際の場面ではどのように対処しているかを語ってもらいました。

 

これらの事例には「親がSOSを出さない、状況を変えようとしない」「ご家庭のニーズに合った支援メニューが地域にない」といった点が共通しています。実際の現場では、こうしたケースにどのように対応しているのでしょうか。

小児科医の金子さんは「同様の事例は実際にも非常に多いですね。結果を急がず、つながり続けることが大切だと考えています」と指摘。また「こういった事業は子どもが主体なので、子どもの視点で取り組まなくてはいけません。ご家庭によっては親御さんとの意思疎通が難しいケースもありますが、その場合は子どもに直接支援を届ける必要があると思います」と主張しました。

 

つなぐBANKの山本さんも「事例のように、子どもがSOSを出す事例は少なくありません」と述べます。自身の事業では、家庭訪問の際はスタッフがペアになり、一人が親御さんの、もう一人が子どもの話を聞くようにして、子どもに直接「自分を守る術」を伝えているそうです。

みまたん宅食どうぞ便の松崎さんは「こうした家庭の子どもを既存の支援メニューにつないでも、しっくりくるものがないことがあります。その場合は、対象の子どもが助かるよう、最初はまず小さい規模で新しい支援作りにチャレンジし、うまくいけば仕組み化していけるよう心掛けています」と述べ、公立高校入学を目指す不登校の子どもへの学習支援を例示。行政や教育委員会の適応指導教室になじまない子どもに対し、地域で支援を提供することもあるそうです。

 

「ない支援は少しずつ作る」「親からのSOSだけでなく、子どものSOSも拾う」。こうした取り組みが、地域社会の狭間・支援の狭間に入り込んだニーズをきちんと拾っている様子が伺えました。

書いた人:小晴
テキスト起こし:ブラインドライターズ


その他の第2回こども宅食サミットの開催報告はこちらからご覧ください。

>>第2回全国こども宅食サミット「全国の事例から学ぶ、今必要とされる“見守り”とはなにか」を開催しました!

>>「親子の孤独・孤立を防ぐ!アウトリーチ型食支援の全国普及に向けて」
――第2回全国こども宅食サミットで開催された「政策提言ディスカッション」の模様をお届け!

 

 

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