先日から取り組んでいる「#つらいが言えない」特集、今回は家庭の実例として、双子や三つ子といった多胎児を育てるご家庭に焦点をあてます。
なぜつらいと言えない状況が生まれてしまうのか。
そこには、「助けを求めるのを待たないで下さい。行けないんです。」という声があがるほど過酷な多胎児の育児の現実があります。
2018年1月、愛知県のある3つ子家庭で生後11ヶ月の男の子(次男)が母親によって命を奪われる、という事件が起きました。
母親は2017年に、3つ子を出産しています。
妊娠期には夫婦そろって市が主催する育児教室に通い、父親は半年間の育児休暇を取得するなど、育児に向き合おうとしていました。
このような家庭で、なぜこのような痛ましい事件が起きてしまったのか。
そこには、想像を絶する三つ子育児の過酷さがありました。
このような過酷な状況の中で、周囲とのつながりを作ったり、助けを求めることが難しくなっていったのは想像に難くありません。
声が上げられなくとも、何らかの形で手が差し伸べられていれば、社会に助けるための制度や仕組みがあれば、防ぐことができたのではないでしょうか。
現代は、多胎児の出生割合は増加傾向にあり、30年間で2倍に増加しています。増加には様々な要因がありますが、今後も多胎児は一定の割合で生まれてくると考えられます。それはつまり、上述のような過酷な状況で育児をする家庭が社会の中に一定数存在し続ける、ということでもあります。
2019年10月に、こども宅食応援団の事務局を担当している認定NPO法人フローレンスが「全国多胎家庭1591世帯の実態アンケート調査報告」として記者会見を開催しました。
多胎児家庭では多大な育児負担を保護者が担っている状況があります。
ある多胎児家庭での、生後0ヶ月の双子育児を育児日記から振り返ると、1日にオムツ替え28回、授乳は18回、沐浴も人数分のため、主たる養育者の休息時間が細切れになってしまっている様子が見て取れます。
こうした家庭の「声なき声」がアンケートを通じて明らかになりました。
★多胎育児中に「辛い」と感じた場面は「外出・移動が困難なとき」(89.1%)
★多胎育児当事者の93.2%が「気持ちがふさぎ込んだり、落ち込こんだり、子どもに対してネガティブな感情を持ったことがある」と回答。
また、アンケートを通じて、多胎児家庭の悲痛な声が聞こえてきました。
手を差し伸べる「誰か」が必要
こうした精神的に余裕がない、気持ちが追い詰められている状態では「助けて」と思うことすら難しくなってしまいます。
つらくても助けてと言えない家庭に何ができるのか。
様々なアプローチがあるなかで、最も重要なのは「助けて」という声が上がるのを待つのではなく、育児サービス等を入り口として、こちらから声を聞きに行く「アウトリーチ」と呼ばれる手法です。
まさに今困っている当事者に「困っているか」「助けが必要か」と聴いても、必ずしもすぐに必要な情報が得られるわけではありません。
「弱みをみせたくない」、「恥ずかしい」、「信用ができない」といった思いを抱える当事者の心を解きほぐしていくには、信頼関係の構築とそのための時間が必須です。
当事者とつながりを作ること。そのつながりを通じて変化やつらさを感じ取ること。
そうしたアウトリーチの一つの手法として、わたしたちが取り組んでいるこども宅食を、より実効性の高いものにしていければと思っています。
将来的には、今回取り上げた外出や移動が難しい多胎児家庭にも提供していくことで、痛ましい事件が起きる可能性を少しでも下げていきたいと思っています。
「#つらいが言えない」に共感してくれたみなさんに助けてほしいこと
こども宅食応援団では、「困っていても”助けて”が言えない人がいる」「必要な支援が届かない現実がある」という社会問題についての認知度を高めるため、『#つらいが言えない』に関する記事発信を行っています。
この特集企画に共感してくれたみなさん、ぜひ「#つらいが言えない」の経験者として声を聴かせてください!
経済的な困難に限らず、子育てや仕事、病気など様々な要因で『#つらいが言えない』を経験したみなさんの声を聞かせていただければと思っています。
こども宅食を応援したい
こども宅食をやりたい・知りたい