米不足のニュースが報道される今年の夏の終わり、全国でこども宅食を実施・実施の検討をしている団体や自治体の皆さんへ、朗報が入りました。
こども宅食応援団・フローレンスが長年提言してきた、政府備蓄米のこども達への無償交付が決定したニュースです。
弊会代表理事・駒崎弘樹(兼・認定NPO法人フローレンス会長)のブログを、以下に転載いたします。
今夏、全国の店頭からお米が消えました。あるいは、見たこともない高値で売られるお米を見た方もいるかもしれません。
困窮子育て家庭はもちろん、ご家庭を支える支援団体も「お米が無い!!」と困る状況でした。
しかし、岸田首相が8月27日に「コメの円滑な流通に取り組んでほしい」と関係閣僚に指示したことを受けて、農林水産省が早くも政府備蓄米の運用改善を開始!※1
今回は、平時ですらお米を充分に食べられずにいるこどもたちのために、今こそ政府備蓄米を活用するべき、との現場ニーズに、農林水産省がしっかり応えてくれました。
1.親子で一緒に食べられるようになる
2.申請の受付が通年化
3.1団体あたりの申請可能回数が年4回から5回に(こども宅食団体は、年間で最大2.3トン交付を受けられるように)
4.申請窓口となる地域拠点を全国に開設
最も画期的な変更は、
・こども食堂で、こども保護者・同行者など
・こども宅食で、こどもと食事を共にする同居者など
も一緒に、政府備蓄米のご飯を食べて良くなったことです!!※2
むしろ今まで一緒に食べられなかったの?と思われるかもしれません。
そうなんです。
「保護者や同居者など18歳以上の方は政府備蓄米は食べないでください。」と言われていました。
政府備蓄米を無償交付する制度を裏付ける根拠法令には、「交付は(略)教育の用に供しようとする場合に行うことができる」という記載があります。※3
この点について、
「こどもへの食育目的でないと、政府備蓄米は提供できない」
という解釈がされ、制度の運用上は、
「こどもの保護者は提供された政府備蓄米を食べてはいけない」
というルールが課されていたのです!!
今回「こどもの同行者」「こどもの同居者」にも政府備蓄米を提供して良いと解釈変更されたことで、何年も支援現場を悩みに悩ませてきた「18歳以上の人は、政府備蓄米をこどもと一緒に食べられない問題」が、ついに、ついに、解消されました!!
内閣官房副長官 村井さんと、農林水産省の方々が頑張ってくださったおかげです!法律の定めと現場ニーズの隘路を両立することは本当に難しかったと思います。英断に感謝!!
これで、親子が、あるいは妹と18歳になったお兄ちゃんが、一緒におにぎりを食べたり、白いごはんを囲む風景が叶います。
これまでは、四半期ごとの限られた期間にしか政府備蓄米の申請はできませんでした。
それが、通年で申請可能になったのです!!
お米はわたしたちの主食として、まさに一年中、必要な食品です。
緊急支援にも日々対応している、各地のこども宅食団体などにとって、支援団体が必要な時期に、いつでも申請できるのはとても有益です。
しかもこれまでは、交付された政府備蓄米を全量使い切って報告書を提出した後でなければ、次の申請ができませんでした。
今後は、「使用『予定』報告書」を提出することで、使い切る前でも次の申請が可能になったのです!!(使用報告書の提出も引続き必要)
これは、特に人口が多い都会など、500世帯を超えるような支援家庭を支えている団体にとって大変な朗報です。
例えば東京23区内の某こども宅食団体では、交付を受けた政府備蓄米を、当月中には支援家庭に配り切ってしまいます。
しかし報告の手続きがハードルとなって、年2回しか政府備蓄米の交付を受けられない状況でした。
「使い切る前に次の交付申請手続き」ができるようになったことで、年間を通じて「切れ目なく」政府備蓄米を活用できます。
…実は、この点は、申請の狭間に関する現場の悩みをたくさん聞いていたフローレンスのメンバーが、今年初めから、現場ニーズにどう寄り添えるか農林水産省の担当課の方と繰り返し協議をしていました。
まわりに農家もなく、お米に最も困る都会における、こども支援の実情に叶う制度変更と言えます!!
担当課のみなさん、ありがとうございます!!
(出典)農林水産省「こども食堂等への政府備蓄米の無償交付に関する運用改善」(令和6年8月30日)※4
これまで1団体あたり最大年4回だった申請上限が、年5回に拡充されました!
これにより、1回の申請で最大450kgの申請が可能なこども宅食団体などは、なんと年間で最大2.3トンの交付を受けられます。
支援を必要とするこどもたちにお米を定期的に届けていくうえで、交付量の拡大は、こども宅食推進議員連盟の先生方からも継続的に必要性を訴えていただきました。
議連の先生方、ご尽力ありがとうございました!!
(こども宅食推進議員連盟については過去記事参照 https://www.komazaki.net/activity/2020/09/post10875/)
昨年度までの運用では、全国津々浦々のこども宅食団体等は、霞が関にある農林水産省の本省への申請が必要でした。
しかし、多忙かつ地理的にも離れた東京・霞が関の方が、
「XX県XX町で、困窮子育て家庭の支援をしている団体の◯◯です」
と申請を受けたとして、支援活動の実態や地域事情を理解しようとしても限界があります。
9か所の地方農政局等に加え、都道府県の地域拠点51か所に申請窓口が新設されたことで、今後全国の団体から申請が増えても、申請受理・交付手続きが機動的に行えることが期待できます!
こども宅食応援団とフローレンスは、これまでも「ベーシックライス構想」と名付けて、困窮家庭のこどもたちに政府備蓄米を積極的に提供することを訴えてきました。
(過去記事参照 https://www.komazaki.net/activity/2023/11/post13924/)
戦略コンサルティングファーム「ベイン・アンド・カンパニー」に心強いプロボノ・サポートをいただきながら、この構想の実現を目指しています。
ベインさんの明晰な分析と助言にはいつも本当に助けていただいています!本当にありがとうございます。
こども宅食団体等への政府備蓄米の無償交付制度は、改善し続けていますが、こどもたちの誰もが安心してお米を食べられる、と言うにはまだ程遠い状況です。
こども宅食応援団とフローレンスは、これからも「ベーシックライス構想」の実現に向けてアクションしていきます。
引用元:駒崎弘樹オフィシャルブログ
【参考】
※1 農林水産省「政府備蓄米の無償交付に関する運用改善について」(令和6年8月30日)
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/b_taisaku/240830.html
※2 農林水産省「学校給食用等政府備蓄米の交付要領の運用について」(令和6年9月4日)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kokumotu/attach/pdf/bichikumai-137.pdf
※3 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成7年政令第98号)(主要食糧の交付)第15条
https://laws.e-gov.go.jp/law/407CO0000000098
※4 農林水産省「こども食堂等への政府備蓄米の無償交付に関する運用改善」(令和6年8月30日)https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/b_taisaku/attach/pdf/240830-1.pdf
政府備蓄米はこども宅食活動向けに最大で1回450kg、年2.3トン無償交付してもらうことができます。こども宅食活動として、有効活用していける制度です。
今月の大幅な制度拡充を受けて、制度主旨や申請・報告手続きについて、農林水産省の穀物課の方にご登壇頂き、ご解説頂く勉強会の準備をしています(10月上旬に開催予定)。
引き続き、こども宅食応援団の公式サイトや、公式Xなどでご案内いたします。
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