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2024.03.15

「共に手を取り合い、団体それぞれの得意を活かした支援の形を構築したい」 【親子の支援を語ろうキャラバン】山形レポート

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こども宅食応援団は、親子のつらいを見逃さない社会にするため、「こども宅食」が全国各地で実施されるよう、日々活動しています。2018年末から始動し、たくさんの地域で実施の広がりを見せ、今年の春、全国で実施する団体数は38都道府県、108団体となりました。そして今年度は、親子の支援に携わる地域の団体がつどい、語り合い、〝地域みんなで親子を支えるつながり〟を深める取り組みとして「親子の支援を語ろうキャラバン」を企画しています。

今回は、2023年12月15日(金)に第8回目として山形で開催された様子をレポートします。

親子の支援を語ろうキャラバン  https://hiromare-takushoku.jp/2023/06/08/5622/ 

<イベント概要>

日時:12月15日(金)13:30~16:00
会場:山形市双葉町1-2-3 山形テルサ研修室A       

<プログラム>

第1部「こども宅食とは?」(30分)
 定期的な「食のお届け」をきっかけに家庭を見守り、寄り添う伴走型支援「こども宅食」について、
こども宅食応援団理事の原水からお伝えしました。 

第2部 山形市が取り組む「おやこよりそいチャット」の紹介
 地域の実施団体より「こども宅食の事例紹介」          (40分)
キャラバン開催地の山形県で、こども宅食を実施している団体にご登壇いただき、
親子の見守りを通じた発見や課題などをご紹介頂きました。
また、山形市がフローレンスと取り組む「おやこよりそいチャット」についてもご紹介いただきました。

第3部 参加者による「座談会」(60分) 

山形県で親子の支援に関わる皆さんが集まりました 

今回のキャラバンには、山形県内で親子の支援に関わる約20名の方にご参加いただき、日々の活動への熱い想いを聞かせていただきました。訪問するご家庭の抱える課題は様々あり、今後、こども宅食のお届け世帯を増やしていく中で、取り組む団体が共に手を取り合い、団体の得意(特性)を活かした支援の形(ネットワーク)を構築し連携することの大切さについて語られました。

また会の冒頭、山形市長からのご挨拶をいただきました。

山形市  市長よりご挨拶
山形市では「おやこよりそいチャットやまがた」を開始し、特に支援の必要が高い世帯へは「こども宅食」をきっかけに見守り支援を行なっています。また、妊娠期から子育て期まで切れ目ない支援を行うための相談支援機関を開設し、親子がより身近で気軽に相談支援を受けられるよう、体制の強化を図って参ります。

 

ーー山形市 髙倉正則 副市長

第1部 こども宅食とは?      

第1部では、こども宅食応援団の原水から「こども宅食」の概要や取り組む社会課題、また「こども宅食応援団」の活動内容について、動画も交えてお話しました。

・こども宅食とは https://hiromare-takushoku.jp/about/

・こども宅食PR動画
【こども宅食について】https://www.youtube.com/watch?v=ZmGVaiSdBrU
【こども宅食応援団について】https://www.youtube.com/watch?v=KKMnqI4fGGM

ーーこども宅食応援団 理事 原水敦

第2部「おやこよりそいチャット山形」・こども宅食事例紹介 

第2部では、キャラバン開催地の山形県で、こども宅食を実施している団体にご登壇いただき、親子の見守りを通じた発見や課題などをご紹介頂きました。
また、山形市が認定NPO法人フローレンスと取り組む「おやこよりそいチャット」についてご紹介いただきました。

ーー「おやこよりそいチャット山形」を担当する認定NPO法人フローレンススタッフ
「おやこよりそいチャット山形」は、2022年4月から山形市より受託をうけ、山形県社協・NPO法人クローバーの会@やまがたと協働で実施しています。SNSなどでのオンライン支援と、対面支援を組み合わせて子育て家庭に伴走するハイブリッドソーシャルワークを実践する取り組みです。社会福祉士や精神保健福祉士など専門的な資格を持つ複数名が相談員として対応し、児童虐待防止を目的に掲げ、365日24時間体制で登録者との関係性の構築を大切に取り組んでいます。登録者は、2023年12月現在1900名となりました。


「おやこよりそいチャット山形」の紹介に続き、山形県内で「こども宅食」に取り組む2つの団体より、事例発表が行われました。
初めに登壇いただいたのは、山形市社会福祉協議会子どもの居場所づくり支援センターこども宅食相談員の片倉美香さんです。

ーー山形市社会福祉協議会 片倉美香さん
山形市社協では、山形市より受託した「子ども見守り宅食支援事業」として令和4年度よりこども宅食を行っています。「おやこよりそいチャット山形」を利用されている世帯の中から、子育てに関して相談が必要なご家庭に訪問し、食品や子育て情報をお届けしながら相談対応を行っています。LINEでの相談とも連携しており、必要があれば「子ども見守り宅食支援事業」へ繋げることで個別解決を図っています。


ーー登壇資料より
訪問時に心がけていることは、話を聞いてもらえることへの安心感をもってもらえるように傾聴し、ゆっくりと語りかけること。そして、相手の話す内容から悩みや困りごとを読み取り、次の訪問につながるように声かけを行うようにしています。

実際に訪問することで見えてきた支援の形もありました。家庭環境の確認ができ必要な支援に繋げることができるよう取り組みを行うこと、そして関係機関が連携し支援の形を築いていくことが大切だということも新たな気付きとなりました。

また、片倉さんご自身も、「話すことで気持ちがほぐれたり、相手の思いを丁寧に聞き取ることで思いに寄り添うことができる」「その人に必要な情報を伝えられることの大切さ」など、多くの気付きがあったそうです。

社協としてこれから目指したいことは、「子どもを見守り、家庭の変化をいち早く見つけ、家庭環境・養育状況の悪化を予防するネットワークを作る」「家庭が抱える困りごとを様々な支援につなげ、解決に向け支援できるシステムをつくる」こと。

関係する機関(団体)の特性を活かし、リーダーシップを発揮できる仕組み作りが必要だと、今後の取り組みについての思いをお話くださいました。

ーークローバーの会@やまがた 樋口愛子さん
続いて登壇してくださったのは、特定非営利活動法人クローバーの会@やまがたの樋口愛子さんです。クローバーの会@やまがたは、不登校・ひきこもりに悩むご家族の居場所をつくりたいという思いから2020年に設立しました。フリースペース、フリースクールの運営、学習支援、子ども食堂、フードパントリー、そして2022年より山形市より受託しこども宅食を実施しています。


ーー登壇資料より
樋口さんがこども宅食をはじめたきっかけは、「より確実に、支援が必要なご家庭を社会資源につなげたい」との思いからでした。支援を必要とする世帯であっても、助けが必要な事を自覚して他者に支援を求める力を持つ方は少なく、拠点型・宅配型のフードパントリーを実施してきたものの、なかなか心を開き話をしてもらうまではハードルが高く困りごとの解決につながりにくという課題を感じていました。

こども宅食を実施するようになり、訪問することで、家庭の様子を知ることができ、関係性を築いていくことができるこども宅食の取り組みに、多くの気付きや成果を感じているそうです。ひとり親家庭応援センターとつなぎ、養育費の取り立てが出来るようになった家庭がありました。訪問しつながったことで信頼関係を育むことができ、緊急時に涙ながらに電話をもらい、相談支援につながった家庭もありました。また、こども宅食をきっかけに子ども食堂へ参加してくれるようになったり、来所相談を希望されるようになった家庭もありました。

まとめに、こども宅食を通じて、団体の理念でもある「家族の主体性の回復に伴走し、それぞれの幸せのカタチを共に探していきたい」そして、「誰も孤立しない社会 おたがいさまの心があるあったかい地域を目指していきたい」と今後の活動への思いをお話くださいました。

第3部 座談会  

第3部では、登壇者の片倉さん樋口さん、そして、参加された親子の支援に携わる皆さんと共に座談会を行いました。

参加の皆さんからは、感想と共に実際に支援を行う中での疑問や質問が寄せられました。

「お届けする品物選びや量をどのように決めているか」という質問については、片倉さんより、山形市の委託事業については1回の金額が設定されているので、金額に準じて準備を行っているということ。家庭とのコミュニケーションのきっかけとなるように、家庭の状況に合わせた品揃えを行い、例えばお菓子と共に歯磨きセットをお届けして子どもさんの歯みがき習慣を促す会話のきっかけとしたり、クリスマスなどイベントの時期には雰囲気を味わうことのできる品物をお届けして、関係性を築くようにしているなどの工夫も紹介されました。

樋口さんからは、たくさんの品物を届け続ける事が、その方の自立を妨げてしまう事もある。本人の自立する力を奪わずに、持っている力を伸ばす。食はあくまでもツールであるということを認識して支援を行う。関係性の構築を第一に考え活動を行っていく大切さについても語られました。

「支援のゴール、お届けを終結するタイミングは設定していますか?」という問いに対しては、片倉さん、樋口さんお二人から、家庭の抱えている課題は様々で、何を持って終結とするかは難しい問題。「関係機関にしっかりとつながることが出来ている」「自立をして生活を行えるようになる」など目標を設定し、自分の力で一歩前進できるようになることを目標にしている。訪問の期間、回数は家庭の状況にもよる為、そのご家庭に応じた支援を行っているということ等が紹介されました。また、自分たちの団体だけでは解決することはできないので、行政など連携できる団体、機関と協働で支援を行っていくことの大切さ、そして、つながり続ける支援、宅食のお届けを終了したとしてもつながり続けて、何か困った事があった時に頼ることの出来る存在であり続ける、という関りをおこなっていることも紹介されました。

このほか、訪問時に心がけていることや、地方と都市部での訪問型支援のニーズの違いについてなど熱心な質疑が行われました。

今後、よりよい支援を継続していくために、活動団体や行政、各機関が連携し活動を行っていくことが、支援者自身も抱え込み過ぎることなく活動を継続していけるのではないか、横の連携、地域でのこども宅食ネットワークなどが構築され、勉強会や交流会など行うことが出来たら、それぞれの団体の特長を活かしつつ支えあえる活動になるのではないかとこれからの拡がりについても語られました。

参加者の感想 事後アンケートより

・宅食を実施している方の話を聞くことがはじめてだったので大変貴重な機会だった。もっと事例をききたいと思った。

・山形市の現状がよく理解できました。必要な支援を行いながら自立を促し、本当の自立を してもらう支援の難しさを感じています。民間団体として私たちの現状では実施が難しい とも感じました。

・家庭の様子を伺いながら支援につながることが必要と感じていたので理想的だと感じまし た。ハイブリットの支援がいいと思います。対面で行うことで、誰かに見守られていると 感じられることが大切だと思っています。

・宅食をはじめて数年たち、依存度が高くなってしまうことが課題となっています。初めに 期間を提示するなど見直しをしながら伴走支援のあり方について持ち帰って検討したいと 思いました。

・制度化されることでメリット・デメリットが生まれソーシャルアクションとしてのジレン マを抱える状況があります。地域社会を支える大切な資源として中間支援団体の重要性を 更に感じました。

 

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