寄付する

届ける支援で孤立を防ぐ「赤ちゃん宅食」こども宅食応援団 井内美奈子さんインタビュー

「いいね」やシェアで応援する:

産前・産後のママを取り巻く環境は、大きな変化の中にあります。

体力の低下や体調不良。
まったなしにスタートする育児。
充分な休息もとれないまま過ぎる毎日。

そんな、産前産後の子育てに不安を抱えるママ達をサポートするため、
新たな取組み「赤ちゃん宅食」がスタートしました。

「赤ちゃん宅食」は、産前産後に困りごとを抱えた家庭に訪問し、無料でオムツや日用品を届け、1時間ほど会話をしながら相談援助を行う訪問型の活動です。
自宅で、赤ちゃんとふれあいながら話をすることができ、リラックスした雰囲気の中、継続して対話をおこなうことができます。

令和5年度にトライアル事業として佐賀県でスタートしたこの取組みは、こども宅食応援団と、認定NPO法人スチューデント・サポート・フェイス(SSF)が連携し、NPO法人フードバンクさがの協力のもと、令和5年1月~5月までの半年間で12世帯に実施されました。


対象となる世帯は、市町村の担当者がつながりを持つことが望ましいと判断し、申込み案内をした世帯(基本的に特定妊婦)です。今回のトライアルでは、SSFが事前のヒアリングを行い、支援すると判断した12世帯を対象に実施しました。

特定妊婦とは、出産後の子どもの養育について、出産前に支援を行うことが特に必要と認められる妊婦のことです児童福祉法第6条3第5項。年々増加傾向にあり、特定妊婦に対する制度が始まった2009年から10年目の2018年には、約10倍に増加。さらにコロナ渦で母親の困窮や孤立は深刻化し、2020年度には、全ての妊婦のうち7人に1人が特定妊婦であることがわかっています。また、その多くは行政支援につながらない、つながりにくい状況にあります。

困窮、子育て、病気、複数の問題を抱えた親子が社会とのつながりをもつ機会が失われ、相談できる身近な知人もなく、不安を抱きながら迎える妊娠出産には大きなリスクを伴います。近年、虐待死や乳幼児遺棄などの辛いニュースも後をたたず、いち早い課題解決と支援が必要とされています。


「赤ちゃん宅食」の取組みは、早期(妊娠期)からつながりを持ち、妊娠・出産・子育てに関する「不安や悩み」に傾聴し、寄り添い・見守り支援を行い、生活の困りごとなどを軽減する役割を担います。また、関わる事で、孤立感を軽減し、安心して妊娠、出産、育児に臨めるようサポートを行っていきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「関わることで、ママと赤ちゃんのこれからがより良くなっていくことを応援したい」
「赤ちゃん宅食」の発起人 こども宅食応援団の井内さんはそう語ります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーこども宅食応援団 井内美奈子さん  https://hiromare-takushoku.jp/   

Q.「赤ちゃん宅食」をはじめた経緯は?
コロナ禍で、妊娠出産時期のお母さん達の孤独、孤立感はより深刻なものとなりました。
孤立出産や、乳児の虐待、新生児の遺棄事件…悲しいニュースを耳にするたびに、なぜそういう事になってしまったのか。そうせざるを得なかった状況にあったお母さんはどんな理由や事情を抱えていたのだろうか。とつらい思いを感じていました。
思うだけでは何も変わらない。一人でも、二人でもそういうお母さんを支える事ができれば、この悲しい出来事を減らすことができるのではないか。そう思い、産前から訪問支援を行う「赤ちゃん宅食」を実施したいと考えるようになりました。
とはいえ、一人では形にすることは出来ない。まずは仲間を増やそうと思い、佐賀で若者支援を行っているSSFの中山さんに相談し実現に至りました。構想から約2年。妊婦さんのご家庭に訪問する際に必要なもの、気を付けることは何なのか。どんな支援が必要とされるのかなど、助産師さんや保健師さんのお話を聴きながら準備を整えていきました。

ーー初回訪問時には宝島社様よりご寄付いただいた「赤ちゃんBOX」をお届けします。
産着やスタイ、おしりふき、赤ちゃんと一緒に使えるシャンプー、入院時に必要となるスリッパなど、出産準備品約10点が揃っています。

Q.「赤ちゃん宅食」で大切にしていることは?
赤ちゃん宅食では、お母さんとの対話が大切な時間です。初回は妊娠中に訪問しますので、出産準備品と産後利用できるグッズを10点ほど用意してお届けします。自宅に訪問することに抵抗感を感じるお母さんもいますが、赤ちゃんへのプレゼントを持参しての訪問とあって気軽に、また喜んで迎え入れてくれます。
はじめは緊張の様子がみえたお母さんも、見た目も愛らしい品物を一点一点手に取りながら会話をしているうちに、数か月先に生まれてくる赤ちゃんに対してもイメージが膨らんでくるのか、表情も明るく、出産に向けて前向きになっている、そんな印象をうけます。
訪問を重ねるごとに会話が増え、赤ちゃんの様子で気になったことや、嬉しかったこと。今日あったことや、保育園の申込をどうする?など、相談事というより、家族と話をしているようなそんな雰囲気で会話を楽しめるようになっていきます。

Q. 訪問の時期や回数は?
妊娠期から、3歳ぐらいまでの間に、月に1回程度の訪問という目安を持っていますが、期間や回数は定めていません。家庭の事情に応じて月に数回の訪問を行うこともあります。
訪問以外の時間にもメールやLINEでコミュニケーションをとり、身近な相談事にも応じています。2回目以降は、ミルクやおむつと一緒に、生活自体が厳しい事もあるので、食品や生活に必要な物もお届けします。離乳食に活用できそうな食材と一緒に、栄養士さんに作成してもらった、栄養価が高く、手軽につくることの出来る離乳食のレシピをお届けしたり、絵本をお届けしたり。毎回の訪問を楽しみにしてくれるということもあり、お届けする私も、赤ちゃんの成長を一緒に楽しみに訪問をしています。

ーー2回目以降は、ミルクやおむつ、食材や生活用品、栄養士さんに作成してもらった「妊婦さんの為の栄養価が高く手軽につくることの出来る節約レシピ」、絵本などお届けします。

Q.継続して訪問することで感じていることは?
訪問世帯のお母さんは、様々な課題や背景を抱えています。
継続して訪問を行うことで、家庭の様子にも触れ、お母さんの心の様子や、赤ちゃんの育ちを見守ることができますし、身近な子育ての先輩としてサポートもできます。
また、あるお母さんは、妊娠が分かった後、パートナーと連絡がつかなくなり、家族のサポートも求められない。一人で初めての妊娠。大きな不安を抱えての出産でした。そんな中でも、しっかり育てて行かなくてはいけないと心を強くして、育児に臨んでいます。
訪問するたびに、赤ちゃんのにっこにこの笑顔と出会い、お母さん手作りのおもちゃで遊ぶ様子を見ることができ、最近では、保育園に預け仕事も見つかったという報告をもらいました。頑張っている様子にこちらまで励まされる思いです。

Q.今後の取組みについて
出産育児を行う中では、数えきれない迷いや不安があると思います。そんな時に、一人でも二人でも、つながっていることで、親子のこれから先がよりよくなっていくことができればと思います。今回のトライアルを通して、妊娠・出産時期のお母さん達に必要とされる支援の形が見えてきました。改めて、妊娠時期からつながることの大切さを感じ、「赤ちゃん宅食」を必要としている多くの方がいるということも実感しています。
「関わることで、ママと赤ちゃんのこれからがより良くなっていくことを応援したい」
こども宅食応援団では、佐賀県での取組みを元に、『私の町でも「赤ちゃん宅食」を実施したい』という方のもとへ、ノウハウをお伝えできるよう準備を整えていきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

トライアル事業が行われた佐賀県では、認定NPO法人スチューデント・サポート・フェイス(SSF)が事業主体となり、令和5年12月現在、20世帯を対象に「赤ちゃん宅食」が行われています。届ける支援をきっかけとして、つながり、家庭の状況に寄り添いみまもり、安心して妊娠、出産、育児に臨めるよう地域につなぎサポートを行う「赤ちゃん宅食」。今後、全国での取組みが期待されています。

「赤ちゃん宅食」オンライン勉強会を開催します。  詳細・お申し込みはこちらから↓↓↓

「いいね」やシェアで応援する:

JOIN US応援団の活動に参加しませんか?