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コロナ禍で感じた危機感 県域の多様な団体が連携し幅広い支援を――新潟県フードバンク連絡協議会 子どもの未来応援プロジェクト

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新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が発令された、2020年4月。

新潟県内のフードバンク事業を行う団体が連携し、新潟県フードバンク連絡協議会「子どもの未来応援プロジェクト」が発足しました。

食を通して子どもたちの命や育ちを支え、頼り先が少ないひとり親家庭の親子にあんしんを届けたい。それが事業発足の思いです。

コロナ禍で急激に増加した個人からの相談

コロナ禍となった2020年3月ごろ、新潟県内のフードバンクへ個人からの相談が多く寄せられるようになりました。当時多くのフードバンクでは、生活困窮者・個人への直接の支援は行われていませんでした。その為、個人からの相談を受けることも少なかったといいます。しかし、コロナ禍で状況は変化し、「相談窓口をうたっていない団体へも支援の相談が多くなっている。これは大変なことになっているのではないか。」と危機感を感じ、今できることを緊急的に行おうと発足したのが、新潟県フードバンク連絡協議会「子どもの未来応援プロジェクト」です。

当時新潟県内で活動していたすべてのフードバンク「10団体」が連携し活動がスタートしました。

活動開始から2年、現在は「24団体」となり、直接訪問支援を行う「こども宅食」・食品を受け取りにきてもらう「フードパントリー」、そのほか、ママカフェやサマーキャンプなど親子で参加できる行事を行うなど、地域の団体が連携し幅広い支援を行っています。

食品と共に 会話で「安心」を届ける

現在、新潟県内で支援を希望する登録世帯は、ひとり親世帯だけでも約5,000世帯あります。その内、新潟県フードバンク連絡協議会が直接訪問支援・宅食を行っているのは、月平均約1,500世帯です。ハイリスクの家庭に支援員が訪問し、食品や生活必需品を届けながら見守りを行います。

 

登録世帯との交流は「LINE」を活用しています。

はじめはつぶやき程度のやりとりだったのが、訪問を続けるうちに、徐々に心を開き、困りごとやその日の思いを「LINE」でやり取りする。こうした繋がりを続けていくことで、信頼関係が深まり、緊急時にも連絡をとりやすい関係性になっていきます。

ある家庭では、食品のお届け時に玄関先で1時間近く立ち話をすることもあるそうです。

何気ない世間話から、困りごとまで…話は尽きません。緊急を要する困りごとを耳にすれば、行政や、無料の弁護士相談、シェルターを持つ中間支援施設へつなぐなど、必要な相談支援の提案も行っています。

 

新潟県フードバンク連絡協議会には、母子保健推進員や保育士、教員などのキャリアを持つスタッフが多く在籍していることから、味方になりきるコミュニケーション「共話」を心がけ、会話の中から「安心」を届けることも大切にしているそうです。

――宅食でお届けしたお弁当

登録世帯5,000世帯の内、約1,000世帯がボランティアに登録

「子どもの未来応援プロジェクト」の活動の一つに「フードパントリー」があります。

指定した日時に、会場まで食品や生活必需品を取りに来てもらうという支援の形です。

この「フードパントリー」開催時には、できるだけ「親子でボランティアスタッフとして参加してもらうこと」をお願いしているそうです。親子での参加を条件にするのには、大切な理由があります。それは、「親子の居場所」をつくることです。「フードパントリー」に参加することで、学校・家庭、それ以外の居場所を持つきっかけとなるのだそうです。

 

会場では、ボランティアで「お手伝い」をする子どもたちの笑顔に出会うことができます。

はじめは挨拶も恥ずかしい様子だったお子さんが、回を重ねるうちに、会場にいる大人や、お兄さん、お姉さんの様子をまねて、食品を配ったり、会場の案内をしてくれたりと、お母さんそっちのけで、楽しくお手伝いをしてくれるようになるそうです。

その様子を見守るお母さんもいつしか笑顔に。

お手伝いという「役割」や「居場所」があることで、参加する楽しみに繫がり、親子でボランティア登録をする家庭も増え、今では1,000世帯を越えるほどになりました。

フードパントリーの他、キャンプなどの行事開催時には、利用登録者の親子ボランティアが多く参加しイベント開催の力となっています。

――たくさんの親子ボランティアさんがイベントを支えています

県域で活動を行うことで「寄り添った」支援に

コロナ禍で発足した県連絡協議会が、約2年で県域での継続した活動を行えるようになったのも、

新潟県が抱える深刻な状況に、各団体が大きな危機感を感じていたという事情があったといいます。新潟県は、人口10万人あたりの自殺死亡率の比較で、全国平均を大きく上回り、ワースト上位という危機的状況が長く続いています。県が主体となり自殺対策に力を入れていますが、民間の支援団体の担う役割も大きくなっています。

コロナ禍でより支援が必要となる中、それぞれの団体が知る地域性や、団体の持つ特性、その強みを共有し連携することで、より早く、より的確な支援に繋がっていくことが期待されているのです。

 

相談者の中には、地元では相談しにくい、地域と繋がりたくないという思いを持った方も多く、そんな時には、県連絡協議会より各地へ足を運び、面談、支援を行います。面談を行う中で、利用者の思いを確認し、地元の支援団体や行政へつなぐこともあります。

支援を必要としている人が、固有の団体だけの支援に頼ることなく、必要な時に利用しやすい団体へアクセスできるよう、複数の団体・窓口を知っていただき支援を受けられるような仕組みづくりを心がけています。

 

日頃の密接な支援は、地域の団体で担い、地域の団体と共に、県連絡協議会が見守り、伴走支援を行う。県域で情報を共有し活動を行うことは、より幅広く支援を行うことができる強みがあります。

――「共話」を大切にして気持ちに寄り添います

「私たちに繋がったら大丈夫」 訪問を続けることで育まれる安心感

活動の一番の目的は、子どもの未来が少しでも明るくなること。

貧困で将来の夢や希望が持てない、生きることが難しいという状況にあってはならない。どの子も豊かに、たくましく生きていける。そうなるよう後押しをしていく。親御さんが元気であれば、子どもも元気になり笑顔が出てくる。その為に、親御さんの心を支え、笑顔になってほしい。

 

関わる事の出来る世帯は限られている、関わったからといって全てが解決できるという事でもない。関わる事ができるのは限りのある子どもたちだけれど、あきらめずに一人でも多くの子どもに関わる事で、未来がひらける子どもが一人でも多くなっていったら。

 

県連絡協議会の小林さんと山下さんは、こうおっしゃいます。

訪問し、顔を合わせる中で育まれていく安心感。 

「私たちに繋がったら大丈夫」

子どもたちの今を見守る、県域での支援の輪が広がっています。

新潟県フードバンク連絡協議会「子どもの未来応援プロジェクト」

新潟県全域
登録団体:24団体
支援登録者数:ひとり親家庭など約5,000世帯
※令和4年5月現在

ライター:岩松優美

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