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行政と地域をつなぐ身近な支援を―― 長崎県雲仙市社会福祉協議会 つなぐBANKうんぜん

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長崎県の雲仙市社会福祉協議会では、昨年より、長崎市の「つなぐBANKながさき」と協働で、フードバンク事業「つなぐBANKうんぜん」の活動を開始しています。その一環として昨年12月より雲仙市全域を対象として「こども宅食」の活動をスタートしました。

1日でも早く、必要としている方の元へ直接的な支援を届けたい。その思いから新年度を待たずに、準備が整った昨年12月から急遽支援を開始したそうです。

「こども宅食」の事業を行うことで、困窮家庭が抱える問題や必要な支援を把握して、深刻な状況になる前の支援につなげたいと考えています。 

コロナの影響は想像以上に大きい

「コロナの影響は想像以上に大きい」 そうおっしゃる、雲仙市社会福祉協議会の柿川さん。

コロナ禍が長引くなか、困窮家庭からの相談件数は増加し、貸し付け申請もこの2年増加傾向となっています。また、「支援対象児童等見守り強化事業」で訪問支援をおこなう中で、より深刻になっていく状況を目の当たりにし、今できる支援を形にと、新事業としてスタートしたのが「つなぐBANKうんぜん」の活動でした。

――2か月に1回の支援…目安は買い物かご一杯分。お米や保存性の高い食品を中心に、生鮮食品やお菓子など生活必需品を揃えます。

  「つなぐBANKうんぜん」では、ひとり親世帯・非課税世帯へ、行政を通じて(雲仙市の福祉事務所から児童扶養手当の手続きの際に)お知らせを行い、申請があった世帯を対象として、支援を行っています。

支援日は、2か月に1回 偶数月の第3日曜日です。「品物をご家庭へ届ける」のではなく、「社会福祉協議会へ受け取りに来ていただく」という運用を行っています。これは他のこども宅食と異なる運用となりますが、地域性も考慮し取り入れた支援の形です。

社会福祉協議会まで足を運んでもらう事にはいくつかの理由があります。

一つは、支援を受けていることを知られたくない方の為の配慮。自宅への訪問に抵抗があり支援を受けない選択をする方もいることから、地域の公共の場所で受け取りができることも、大きな安心の一つです。利用される方が同じ時間帯にならないような配慮も行われています。

二つ目は、相談窓口ともなる「社会福祉協議会」への馴染みを持ってもらえること。行政情報を知ることができる場所、相談できる場所が身近な存在となることも大切な支援です。

支援日には、お子さんと一緒に来られる方も多く、お渡し品の中に、お菓子を見つけて笑顔を見せてくれるお子さん。両手いっぱいのお渡し品に「こんなにたくさんいいんですか」「毎回楽しみにしています!」と喜びの表情のお母さん。短い時間ながらも、親子の様子に触れ会話を交わす時間をとても大切にされているそうです。

登録家庭のお子さんは、乳幼児から高校生までと幅広く、世帯人数や、抱える悩みもそれぞれ。現在は、30世帯同じ内容での支援を行っていますが、今後はニーズも把握しながら、世帯にあった数や内容を反映させていくことも検討されているそうです。

――支援日を前に、「つなぐBANKながさき」や「こども宅食応援団」「おてらおやつくらぶ」など協力各社から届いた食品

登録家庭との連絡はLINEを使って

「つなぐBANKうんぜん」では、登録家庭との連絡は通信アプリの「LINE」を使って行っています。その利便性は高く、必要な情報を必要なタイミングで送ることができ、支援日のお知らせはもちろん、市役所からのお知らせや各種奨学金の情報など、生活に必要な情報を随時送信しています。

困りごとの相談についても、LINEを通じたやり取りはお互いの距離を近づける要素もあるようで、行政の訪問時には「心配事、相談事は何もないです」という方も、文字でのやり取りだと気持ちを伝えやすいという方も多く、日ごろの悩みや思いを吐き出してくださるお母さんも少なくないそうです。

必要に応じて、行政サービスや法テラスなどへの相談につなぐこともあります。

「登録家庭とつながりを持ち続けたい。相談できる窓口をひとつ、安心として持っていてもらいたい」。緊急支援にも対応できるようにと、LINEでの連絡は、24時間対応し、利用者さんの声を聴く活動を行っています。

県内有数の農業地 雲仙の野菜を届けたい

長崎県雲仙市は、島原半島の北西部、雲仙普賢岳を取り巻くように位置する、人口約44,000人、世帯数約15,000世帯(平成27年国勢調査による)の都市です。

北に有明海、西に橘湾を望み、美しい海岸線や、普賢岳、雲仙地獄など、雄大な自然に恵まれた、温泉や食など人気の高い観光地でもあります。

また、温暖な気候は作物の生育にも適した立地で、長崎県有数の農業地でもあります。

お届けする食材の中で人気の一つとなっているのが、地元の新鮮野菜。

雲仙の大地で育まれた野菜は、栄養価はもちろん、地元のパワーを美味しく感じることのできる食材です。この新鮮野菜は、雲仙市愛野町の「株式会社マルヨシ トレベジ採れたて新鮮野菜直売所」から届きます。

フードロスの観点から、農家さんから規格外の野菜を安く購入して販売している地元でも人気のお店で、雲仙市社会福祉協議会の思いに賛同し、地域貢献になればと協力を申し出てくださいました。地元で育まれた新鮮野菜は心も体も満たしてくれる食材です。

――新鮮野菜がトラックで届きます。大きな人参がおいしそうです。

 行政と地域 地域と登録家庭をつなぐ支援を

「スタートしたばかりのこの事業を継続していくことで、見えてくる課題や支援がきっとある。行政でもなく、民間でもない。公平性を保ちつつも民間のように一歩踏み込んだ支援へとつなげていきたい。登録家庭のわずかな変化も見逃さず、関りを持ち続けることで、つながる支援を実現したい。」と雲仙市社会福祉協議会の柿川さんはおっしゃいます。

社会福祉協議会ならではの、地域とのパイプの太さ、地元の公民館、民生委員さんとのつながりを活かして、食材と共に、地域に守られる「安心」を届ける、それが雲仙市社会福祉協議会「つなぐBANKうんぜん」の取組みです。 

地域ぐるみの支援として「宅食」事業をひろめていく

継続して事業を行うためには、安定して食材を供給することが課題となります。

「つなぐBANKうんぜん」では、今後、地域の企業や団体へも協力を求め、また、個人商店や、農業者の皆さんからも直接支援をお願いして、地域ぐるみの支援の輪をひろげていくことを次の目標にしています。

――新鮮野菜をご提供いただいている「トレベジ」さんの店頭にも「つなぐBANKうんぜん協力店」のオリジナルステッカーが貼られています。

また、「つなぐBANKうんぜん」の認知度を上げる取組みも行っています。

協力してくださる方への感謝の思いと、そして、地域ぐるみで支援を行っているということを見える化して、多くの方に活動を知ってもらうために、オリジナルの「協力店ステッカー」を制作しました。

支援を受けるご家庭が、支援をうけることに対しはずかしい思いをすることなく安心して生活ができる。そんな社会を実現したい。

困り事を抱え込まず、地域に守られているという安心感をもって生活をしてもらいたい。

「つなぐBANKうんぜん」の思いは、このステッカーと共に、雲仙市全域にひろがっていきます。 

――宅食事業を担当する5人のスタッフ 一番右が柿川さん

 

長崎県雲仙市社会福祉協議会「つなぐBANKうんぜん」

支援エリア:雲仙市全域

支援日: 偶数月の第3日曜日
2ヶ月に一回の宅食を基本に生鮮食品の支援があった際には臨時支援も

ライター:岩松優美 

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