令和二年度の「厚生労働白書」で、秋田県でこども宅食を実施する団体の事例が紹介されていました。
親子食堂を行っていた秋田の団体では、新型コロナウイルスの感染防止のため、食堂の代わりに無料のお弁当配布とフードパントリー(食料を無料で配布するための地域の拠点の運営)を行っています。白書から浮かび上がるのは、コロナ禍で困窮した親子の様子でした。
発送を待つ段ボールで外が見えなくなるくらい、普段の3倍以上の支援要請が来たこと。
深夜の相談メールも多くなり、高校生から「お腹がすいて眠れない、助けてほしい、誰も助けてくれない」と深夜1時過ぎにメールが届いたこと。
DVや虐待の増加もあり、「幼い子どもと車中にいます。助けてください」というようなお母さんからのSOSが増えたこと……。
(令和2年度「厚生労働白書」より)
全国各地のこども宅食では、こういった困窮状態になる前からご家庭と繋がりを持つことで、深刻な状況になる前にいち早く気付き支援を行うこと、そして困ったときにはSOSを上げてもらえる関係性を築けるよう、活動を行っています。
特に、観光都市ではコロナ禍の影響により観光客が激減し、それに伴い観光業や飲食店等で非正規労働者として就労していた方々の失業に歯止めがかかりません。こども宅食の利用者の方の中にも、多くの方がこの非常事態の中に身を置いています。
観光都市で事業を行っているこども宅食のスタッフと利用者さんのやりとりでは、これまでと同様の生活面での不安に加えて、就労に関する不安、新型コロナウイルス感染に対する不安等を抱えている声が多くあがり、精神面での疲労を読み取れる場面が多々あります。
生活が厳しくなっているのは、もちろん観光都市だけではありません。
他の地域では、早朝の新聞配達から深夜までパートをかけもちしながら、4人のお子さんを育てるひとり親家庭のお母さんが、パートのシフトも減ってしまい、収入が激減してしまったという例も。
「できるだけ不自由をさせたくないと思っているけど、充分な栄養のある食事もできていないし、手作りの家庭料理もできていないし、子どもの学校のことや話も聞いてやれず、家事も手抜きになっていて……ダメ母です。」とスタッフに吐露することもありました。
また、「小学生の子どもが家族のためにご飯を作っている」「コロナの初期にクビになってしまいどうしようもなくなった」「家族の生活費をおばあちゃんが出している」「不登校の子どもが体も細く、食事が摂れていない」というようなご家庭の様子も、全国のこども宅食団体から報告されています。
ご家庭から相談される内容も、補助金や給付金に関する情報を必要としている方々が以前より多くなっている、という報告もあり、コロナ禍が長引くにつれ、経済的な困窮がますます深まっている利用者さんが増加している可能性があることが見てとれます。
秋田県の事例でも増加を懸念されていた、DVによる困窮については、他の地域でも相談が舞い込むことがありました。
『DVからリュック一つで逃げてきました。なんとか仕事がみつかって、預かってもらっていた子どもを呼ぶことができます。ただ、年末年始で食べさせるものが用意できそうにないんです。子どもの布団もありません。』と12月に届いたSOS。
子どもがやってくるのは12月24日。もしかしたらクリスマスってことにも気づいていないのかもしれない……でも、新しい生活のスタートを悲しい思い出にしたくない。
食品の用意と子どもの布団を手配したスタッフは、ほんの少しでもあたたかいクリスマスを迎えられるように、とチキンとブッシュドノエルも一緒にお届けしました。
長期化するコロナ禍の影響で、精神的疲労・経済的困窮の両面に直面しているご家庭が増加していますが、一方で、こども宅食の活動で明るい気持ちになった利用者さんや、感謝の声を耳にすることも増えました。
ご家庭からの声を一部ご紹介します。
「こども宅食のお弁当はいろいろな手作りのおかずが入っていて地産の野菜中心で、とてもありがたいです。
子どももおいしいおいしいとパクパク食べています。お米などの食材もとても助かります。
毎回満面の笑顔で、明るい方が届けてくださり、子どもと楽しみに待っています。感謝の気持ちで一杯です。
今まで、こんな支援受けたことがないので、本当にいいのかと、思ってしまいます。ありがとうございます。」
「小学生の子がご飯を作っているので、子どもだけで簡単に作れるものはとてもありがたいです」
「コロナで仕事がなくなってしまい、子ども達もたくさんご飯を食べるから食事の支援は凄くありがたい」
こども宅食によるご家庭の変化は食事だけではなく、今まで学校に行けなかった子が、食事を摂れるようになったことで学校に通い始めたり、不安で夜眠れないことのあった親御さんが、週1回のこども宅食の訪問時に話をすることで不安が軽減され、安定した生活を送れるようになった、など、お子さんやご家族に「元気」もお届けできているケースもあります。
『家庭内での雰囲気が暗くなりがち』という声や『不安が尽きない』という声もありますが、『その雰囲気が「こども宅食」を通じて明るくなる』と言っていただけることもあり、不安や孤独を感じてしまいやすいコロナ禍の今だからこそ、こども宅食を通じて心の拠り所や幸せな気持ちを提供する必要性が顕著に現れています。
こども宅食応援団は、各地で増えつつある「こども宅食」の運営のサポートや、ノウハウや食品の提供等を通じて、こども宅食が全国で行われるよう活動しています。
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