茨城県つくばみらい市社会福祉協議会では、令和3年度から「みらい子ども宅食便」を行っています。現在の登録は38世帯。夏休みや冬休みなど長期の休み前を基本として、年に4回ほど、段ボールいっぱいの食材を届けています。
食材は、主に社会福祉協議会(以下、社協)の特別予算と地域の方からのご寄付で用意しています。
ボランティアの皆さんに、箱詰め作業などをお願いし、宅配便を利用して各世帯へお届けしています。宅配便を利用するのには、理由があります。それは、個人情報を守る為です。
現在、登録申込みは、生活保護受給世帯・就学援助受給世帯・児童扶養手当受給世帯であることが条件とされており、市のこども課と連携して必要な情報を共有した上で、各世帯へお声かけを行っているという事情があります。
配送準備は、地域のボランティアの皆さんに協力をいただいていますが、世帯情報は開示せず、品物も基本的には同じ内容をパッケージし、一部家族構成をお知らせして、個数の調整を行うなどして準備を行っています。
――寄付で届いたお米やパスタ、簡単に食べることのできる食材など段ボールいっぱいに食材を詰めて送ります。
つくばみらい市社会福祉協議会では、こども宅食に先だって、令和2年度から月に2回、お弁当のお届けを行っています。現在は、約60世帯200名の元へお届けしています。
弁当配食を始めた令和2年は、コロナ禍で給料が減るなど金銭面での困りごとを抱えた方が急増した時期でもありました。社協への相談件数も増加し、緊急貸付の申込みも増加傾向にあったことから、社協で何かできることはないかと検討し、国が行う「支援対象児童等見守り強化事業」の援助を利用して、月に2回の配食をスタートしました。
お弁当は、社協のスタッフと保健師が世帯を訪問しお届けしています。訪問時には、世帯の状況や、困りごとに触れる機会になるよう、会話を心がけています。
配食開始から1年がすぎ、始めはドアを開けてもらえないことも多かったという事ですが、訪れる回数を重ねたことで、子どもたちとふれあえるほどに交流ができるようになった世帯もあります。
――子ども食堂のお弁当。社協の支援の元、市内6か所で子ども食堂が開催されています
困りごとは金銭面だけでなく、虐待やDVなどいくつもの困りごとを抱えている世帯も多くあります。一つの困りごとを解消すれば生活がうまくいくというものではないようです。支援を行う中で、いくつもの困りごとが混在して簡単には解決に至れないという状況が増えているように感じます。
まだまだ必要な方の元へ支援が届いていない。支援の形が複数あれば、選択肢が増え、利用しやすい環境づくりができるのではないか。そう考え、新たな選択肢としてスタートしたのが、こども宅食の取組みです。
お弁当のお届けと合わせて利用されている世帯もあれば、こども宅食のみの利用を希望されている世帯もあります。
宅配便でのお届けを行っていることから、利用者とのコミュニケーションは、電話やメールのみの方もあるとのことで、顔が見えない中では関係性を作ることが難しいと感じることもあるそうですが、年に4回のお届けを行い続けることは、会話のきっかけとなり、社協とつながりを持つきっかけとなる大きな役割を担っています。
そのきっかけをスタートラインとして身近に利用しやすい仕組みづくりを行っていきます。「選択肢は多くあった方がいい」と考える、つくばみらい市社協が取り組んでいる支援の形です。
――宅食の配送準備は地域のボランティアさんの協力で行っています
お弁当のお届けや、子ども食堂、こども宅食など、社協の取組みは広報誌などを通して地域の方へ広く知られるようになり、食材の協力や、特定寄付など、地域の方からの支援も多く届けられるようになりました。
活動に賛同し、ご協力くださるボランティアの方も多く、「こども宅食の回数を増やしてはどうか」「宅配便ではなく、自分たちがお届けに行ってもいいと思っている」など積極的に活動を支援してくださる声も届くようになっています。
地域の方の理解と協力が大きくなる中、個人情報の管理についてなどクリアすべき課題もありますが、社協の松尾さんは、支援を必要としている方が、地域で暮らしやすさを見い出すためには、地域の力が必要だと感じています。
今後、こども宅食の事業において、事前申込の際にご理解頂ける方へは、ボランティアさんからのお届けも検討していきたいと考えています。困りごとを抱えている方が、社協や行政でなく地域の方の方が話をしやすいとすれば、まずはそこにつながって、それから社協や行政につながり、支援を行っていきます。地域とつながり、身近に相談できる、信頼できるコミュニティを得ることができます。そうすれば、きっと問題解決の近道になります。
つくばみらい市社会福祉協議会では、助けを必要としてる方の元へ必要な支援が届くように、多くの選択肢と可能性を模索しながら活動を行っています。
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