特例認定NPO法人そらいろコアラは、栃木県真岡市を拠点に県全域で活動を行う、2020年設立の社会活動団体です。
医師を含む医療・福祉の専門家が、「妊娠・育児の孤立を防ぎ、不適切な養育と、その連鎖をとめる」を使命に掲げて、妊娠期から育児期にかけて包括的な支援をしています。
かわいらしい団体名「そらいろコアラ」には、「困っている声をキャッチして、安心・安全な居場所や支援につなぐポケットをつくりたい」という想いが込められています。
そらいろコアラの事業内容 こども宅食の活動の他にも、LINE相談窓口「コアLINE」や、こどもや妊産婦さんの居場所「そらいろポケット」、こども食堂「コアラ食堂」など様々な活動を実施。 ![]() |
※公式サイトより(https://npo-sorairokoala.jimdofree.com/)
2025年1月には「第15回地域再生大賞※」も受賞した、そらいろコアラ。どのようにして事業を地域で展開しているのか、現地に伺い、スタッフの保育士兼社会福祉士である立石さんと管理栄養士の櫃間さんにお話を伺いました。
※第15回地域再生大賞 https://chiikisaisei.jp/15th-awards
そらいろコアラは、民間団体でありながら、看護師、助産師、社会福祉士、管理栄養士などさまざまな専門家が在籍しているのが特徴です。
「設立当初、小児科医をはじめとした専門職のメンバー中心で活動をスタートしました。その後は自身の経験やスキルを活かしたいという仲間が次々と集まって来ました」と櫃間さん。今では専門職メンバーを中心に約100人が連携する事業になっています。
専門家が多数在籍していることで、ご家庭に寄り添い、状況に応じて適切な支援機関へつなぐ仕組みも実現しやすくなっています。医者や助産師などのメンバーが、必要な際には医療現場と連携した支援をする等、地域の子育て支援ネットワークのキープレーヤーにもなっているのです。
「周囲から孤立し、必要な支援に繋がらないまま出産に至る」
こうした孤立によるリスクを防ぐため、SOSの早期発見、出産前からの切れ目ない支援に取り組んでいるのも特徴です。
ご家庭との連絡は、夜間・休日を含め365日対応の無料相談窓口「コアLINE」を利用し、妊娠期からのどんな小さな「助けて」の声も、発信しやすい工夫をしています。
LINE相談者の年代は、10-20代が半数以上で、
「妊娠したが親に話せない」
「受診が怖い」
こうした「妊娠不安・葛藤」など、若年の予期しない妊娠への不安にも寄り添います。
こちらは、手作りの「コアLINE」紹介カード。
さりげない小さなやり取りを少しずつ繰り返しながら、相談者の気持ちに寄り添います。
多職種の専門家による連携や、妊娠期からの SOSの早期発見・見守り。
こうした特徴を軸とした「コアラのポケット」モデル(※図1)の仕組みにより、そらいろコアラは包括的な支援を実現しています。
【図1】団体の目指す、子育て支援・連携ネットワーク「コアラモデル」 |
――そらいろコアラの体制を表す「コアラモデル」早期からのSOSのキャッチ、専門家による支援連携が仕組み化されている。
こども宅食の活動では、ご家庭の緊急性にも配慮しながら、1回あたり30名程のご家庭に提供しています。ご家庭の様子を見ながら寄り添い、専門職スタッフも必要に応じて同行し、状況に応じてまめな提供を心がけています。
「専門職が伺い、ご家庭の状況を確認することが大事。あのお母さんは顔色が悪くて、貧血傾向だからこの献立にしようなど、ご家庭の状況に応じた個別対応ができます」と、立石さん。
提供する食材やお弁当は、管理栄養士が貧血対策、肥満対策など健康チェックも行いながらオーダーメイドで行います。1ヶ月分のまとめ買いなどはしておらず、お一人ひとりの顔を思い浮かべながら買い物をし、献立を考え、手作りのお弁当を提供しています。
また妊娠・産褥期から伺い、SOSの早期発見・継続的な見守りにも取り組みます。
「母子手帳を手渡しした際、ママの鬱々としている様子が気がかりで・・」など、自治体や医療機関で懸念されているもののなかなか繋がれないご家庭にも、そらいろコアラが訪問することで、妊娠期から繋がれることがあります。
――過去に配布した、新生児用のオムツ。
提供物資は、食料や日用品に限らず、お子さんの月齢等に応じたミルクやおむつ、さらに生理用品や避妊具など、対象家庭に応じて多岐にわたります。
「エプロン姿で、『粉ミルク持っていくね!』とミルクを持っていったら、自分のこどものことを想ってくれる人なのかな・・と親御さんが思ってくれたようで、そこからLINEでの具体的な相談に繋がっていくこともありました。」と立石さん。
気軽に頼ってもらえるよう、スタッフの専門家としての肩書きをわざわざご家庭には伝えない配慮もされているそうです。
妊娠・出産で、困りごとや不安がたくさんある。でもまわりに頼れる人は誰もいない。移動手段もない・・
孤独を感じているご家庭に、専門知識をもっていながら気楽に頼れる、寄り添ってくれる、そらいろコアラのスタッフ。それは、”気楽に頼れるプロ”の存在として、ご家庭にとって心強い味方となっています。
助けてもらったことがない人は、自ら助けてとは言いづらい。
だから、どんな小さな「助けて」の声でも、コアラのポケットのように、そのSOSを受け止めたい――
そらいろコアラの活動は、そんな想いを大切にしながら、妊娠・産褥期からの包括的な支援に、地域みんなで子育てに関わる和を広げていきます。
――視察に伺ったときの様子(左から弊会スタッフ、櫃間さん、立石さん)温かな落ち着く空間で、可愛らしいぬいぐるみも沢山!
「これをお渡ししたらあのご家庭が喜ぶかもしれない、と思ったら持っていかずにはいられない」とお話しされる、スタッフの立石さんと櫃間さん。
みなさんの専門性に圧巻ながらも、堅苦しさを全く感じさせない、ご家庭を見守る熱いハートが印象的でした。
こども宅食応援団ではこれからも、温かな想いを持って活動に取り組む全国各地のこども宅食団体の皆さんを支えながら、皆さんと一緒に「孤立を生まない社会」の実現に向け事業を推進していきます。
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