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「こども宅食は、心のドアにノックする取り組み」映像クリエイティブユニットThe Creation HUBインタビュー

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こども宅食は、生活の厳しいご家庭に、定期的な食品のお届けをきっかけにゆるやかなつながりをつくり、困ったときは必要な支援につなげる活動です。「こども宅食の活動をもっと多くの人に知ってほしい」そして、「こども宅食を全国に広げていきたい」という思いから、設立5周年を迎えた令和5年、こども宅食PR動画を制作いたしました。動画を制作いただいたのは、映像クリエイティブユニットCH:The Creation HUB(以下CH)で、第一線を走るプロフェッショナル。制作陣をはじめ、役者の方たちなど、たくさんの方がボランタリーでこの企画に参加してくださいました。そのおかげで、大変クオリティの高い動画になりました。CHを代表して、高原さんと和田さんに、制作背景や思いについて、語っていただきました。

◆プロフィール
CH:The Creation HUB
株式会社エルロイなど、11社の企業で共同設立されたクリエイティブユニット。「日本の創造産業全体の発展に寄与する、実行力のある会社群(=キープレイヤー)になる」をミッションとし、エルロイとグループ会社を集結させ、新しいシナジーを生みだしたい、という構想から、CH:THE Creation HUBが誕生した。
CH:The Creation HUB 公式サイト

和田 篤司(写真:前列左)

1980年、岡山県生まれ。 日本大学芸術学部放送学科卒業後、株式会社ティー・ワイ・オーにて制作として多くのTV-CMを担当。 2006年に退社し、株式会社サイバーエージェントにて映像制作グループの立ち上げに関わる。 様々なジャンルの映像を作る中で感じた矛盾・不合理を解消し、常にクオリティという本質に迫るべく2012年にエルロイを創業。2018年からCG制作や撮影技術会社など10社の映像関連会社を設立し、現在は11社の株主である。 エルロイで代表取締役として10年間従事した後、代表職を後進に移譲し 2021年にKOOEN株式会社を立ち上げ、同社にてグループ全社の戦略コンサルとアドミニストレーション業務を一括で担っている。 

高原 成博(写真:前列左から2番目)

1982 年茨城県生まれ。
日本大学芸術学部映画学科を卒業後、スマホ向けアプリ開発を行う企業にコンテンツディレクターとして入社。2012年に電通イーマーケティングワン(現・電通デジタル)にてWEB ディレクターを務める。広告映像での仕事に魅力を感じ、2014 年にエルロイに参加。プロデュース部、制作部、管理部を経てプランナーとして企画デザイン部に加わる。2022年より同社の代表に就任。

 動画制作に至った想い――「撮影ドライバーやるよ!」ベテランプロデューサーまでも巻き込み始まった  

――このたびは、動画のご制作誠にありがとうございます!本日は、どのような思いで、企画を立てて頂いたかのお話を伺えますと嬉しいです。

(高原)私が代表をつとめるエルロイは映像の制作会社ですが、元エルロイ社員だった玉川くんがフローレンス(※)に転職されたことで一度フローレンスに行って、お話を聞いたのがきっかけでした。その時点では、それまで知らなかった(こども宅食が取り組む)社会課題を知って驚きが強かったのですが、和田さんと話して動画を作る話が始まりました。

※こども宅食応援団は、認定NPO法人フローレンスグループであり、連携してこども宅食の全国普及に取り組んでいます。

(和田)私が取締役をつとめるエルロイを含む「CH:The Creation HUB」のクリエイティブユニットは、撮影や制作などのトータルプロデュースをしている集団です。エルロイが創業10年目になり、代表を高原にバトンタッチしたタイミングで、社会貢献などもしていきたいな、とおぼろげに考えていた時期に、エルロイにいた玉川くんがフローレンスに転職したことで、高原と一緒に話を聞きに行きました。

元々「できることがあったら言ってね」とは言っていましたが、映像制作自体が社会貢献につながることもあるなと思っていて、話を聞いてからすぐに動画制作をやろうと思って、こども宅食の主旨とともにCH全体に呼びかけました。そうすると、すぐに「撮影時のドライバーやります!」というベテランプロデューサーや、「お弁当の手配をします!」という関連会社の社長がいたり、有名なCMを制作するクリエイティブディレクターも企画で入ってくれることになったり、一斉に、第一線で活躍するクリエイターが集まって、今回の動画制作の企画が走り出しました。

こちらは和田さんが、CH:The Creation HUB皆様に送られた呼びかけメールです。

 

 「こども宅食」に共感したポイント  

(高原)最初は「こども宅食」と「こども食堂」の違いも初めて知ったくらいだったのですが、こども宅食の活動内容を知るうち、食品を携えてご家庭にいくということが、家庭環境を少しずつ知るきっかけになったり、ゆるやかな関係づくりをすることにつながっているというのが、非常に理にかなっている取り組みだなと思いました。ひとり親など厳しい環境にいる方たちが色々な思いをもって「つらいと言えない」というのは、良くわかるな、と感じます。そうしたご家庭に対して、踏み込むのではなく、そっと寄り添うというのが、大変すばらしいなと思います。

(和田)子どもの問題って、遠いようで実は身近であることが多く、自分に子どもがいるとよけいに近視眼的に見がちです。「こども宅食」のことは正直知らなかったのですが、コロナ禍でシングルの方が大変な思いをしているなどは、ニュースで知っていましたので、映像関係でお手伝いができたら社会貢献にもなるし、プラスの動きになるな、と思いました。

 動画のコンセプトは「こども宅食は心のドアをノックする取り組み」  

(高原)こども宅食を伝えるにあたって、まず最初に、伝えたいこと、大事なことって何だろう?というのを紐解かせていただきました。いただいた草案にも「ドアをたたく」というのが軸にありましたが、やはりそこが大切であり、こども宅食とこども食堂の大きな違いとして「来てもらう」ではなく「ドアをたたく」「こちらから伺う」というのをコンセプトにするところから企画をしていきました。ドアをたたくというのは、心のドアをノックするということだよね、と、ライトパブリシティの宮寺信之氏(クリエイティブディレクター)を中心にコンセプト・ストーリーを企画していきました。

何度かドアノックをするうち、届けるご家庭の心のドアが少しずつ開いていく、というのがこども宅食の最も大切なコンセプトなんじゃないかと、映像で見せるポイントも、そこを大切にしながら作ることになりました。

――撮影風景。制作陣も、出演いただいたみなさんも真剣です

(高原)当初は、「こども宅食」と「こども宅食応援団」を1本の映像で紹介するという草案だったのですが、会話をするなかで「こども宅食の説明」と「応援団の活動」はしっかりと分けた方が良いよね、という話になり、別のディレクターが立つことになりました。それぞれ、こども宅食についてエモーショナルに見せる前編、そのこども宅食を全国に広めようとするこども宅食応援団の思いや、仕組みを紹介する目的の後編と分けました。前半は土屋哲彦監督(エルロイ)、後半は伊藤瑞希監督(RECO)がそれぞれ目的に分けて得意な領域で制作しました。

前編:【こども宅食応援団】「つらい」が言えない親子を支える「こども宅食」

後編:【こども宅食応援団】日本全国に広がる支援の輪!こども宅食

 

(和田)私は制作段階に入ってからは仲間たちに任せていたのですが、企画段階で見ていても、プランナー、クリエイティブディレクター、スタッフみんなが、かなり綿密に丁寧に打ち合わせをしていましたね。どうすれば「こども宅食」が伝わるのか、いかに中身が伝わるか、いかに心が動くかというのについて、例えば演出においての表情のさじ加減なども、演出家と応援団のみなさまやスタッフと良く話して、意見交換しながら取り組んでいました。

(高原)はじめはシリアスな感じの展開で進めかけたのですが、途中でそれは違うな、となったんですよね。さまざまなご家庭、状況があるなかで、例えば表情で、とても深刻なところから始まるというのはエモーショナルかもしれないですが、それが良いというわけではない。リアルさと、伝わる要素として、撮影時の場面づくりや役者さんの表情づくりなどは、かなり意識しました。

――丁寧に事前の打ち合わせが重ねられました

 仕事の枠を超えて、得意な領域を惜しみなく 

――こども宅食応援団としても、自身の活動を見直すきっかけになったり、こども宅食を全国に普及する役割として「ここをもっと推したいね」「ここは大事だね」というのをあらためて気づかせていただいて、本当に感謝しています。これから、この映像を、全国の実施団体を増やす活動に活用させていただきたいなと思っています。制作いただいた皆さまから、実施するみなさんに見てほしいポイントってありますか?

(高原)そうですね、かっこつけるわけではないですが、フラットにご覧いただければ伝わるものになっているかなと思います。今回CHのそれぞれの得意領域を集結させて作った形です。例えば、株式会社デランシーのカメラマン、株式会社エルロイの監督と制作スタッフ、グラフィックは株式会社ライデン、モーションを付けたのが株式会社illi・・など、それぞれの会社のメンバーが、自分たちのもつ得意な技術をまったく惜しみなく使って作りました。BGMもオリジナルでデランシーに所属しているエディターが作ったんですよ。

それはCHのみんなが「こども宅食」「こども宅食応援団」に共感、賛同したからに他ならず、映像はどのカットを見ていただいても力の入り具合が強いので、ぜひまずは見てほしいです。仕事の領域を超えた思いがありますね。

――本当にありがたいです。実は、インタビューを受けてくださった実施団体さんには公開させていただいたのですが、「自分たちが今までしてきたことと、この映像がリンクして、感動しました」という声が寄せられています。既にこども宅食に取り組んでいる団体さんはもちろん、これからやりたいな、と思っている団体さんにも、ぜひ届けたいなと思っています。

(和田)それは嬉しいですね。

――こども宅食応援団・原水のインタビュー風景

動画を制作して気が付いた社会課題と、映像に込めた想い 

(高原)今回の動画制作するプロジェクトで気が付いたのは、これまで見えていなかった社会課題で、想像していたよりも困っている家庭が数字的に多いということも、ある意味ショックでしたね。

(和田)例えば、ふだんはなんとか生活ができていても、入学時のランドセルや修学旅行など、お金のかかるイベント時に赤字になるようなご家庭など、今判明している以上に実は困っている親子はいるのかもしれないですね。

映像としては、ものを届けるこども宅食なので、食べているシーンや、ものをもらって嬉しいというシーンが想像されやすいかもしれませんが、そうではなくて、コミュニケーションが主眼となっていて、ものを届けるのはきっかけなんだということを、丁寧に描いた点がポイントかなと思います。ご家庭と支援者が、気持ちと気持ちをつなぎ、コミュニケーションで(家庭の困りごとを)すくい上げるのがこども宅食の良さだな、というのが伝わることで、みんなで温かい気持ちになれると良いなと思います。

私にも子どもがいますが、子育てって楽しいですよね。大変なことももちろんあるけど、ほんのちょっとのことで、その大変な部分を社会みんなで後押しができるんじゃないかなと思います。CHのみんなも、同じような気持ちだからこそ、一緒に作ってくれたのではないかなと思っています。

(和田)社会のシステムとして、みんなで困っている人を助けることができる仕組みがあると良いなと思います。経営者としては、寄付行為の選択肢が少なく感じられるのは、もったいないな、と感じます。例えば、法人が寄付をしても税控除が少なかったりしますが、資本主義社会においては、活動がドライブするのはどうしてもお金になるので、控除がしっかりされることは企業にとっては大きいですね。また企業によっては余剰な人的資本があったり、閑散期があったり、余る食材や物資などもあったりすると思うので、それらのリソースを足りないところに回せる仕組みがあると、もっと寄付や、支援するといった行為が自然と広まるのではないかな、と思いますね。

子どもをもっと育てやすい社会にするための課題って、全部つながっているような気がします。シングルマザーの方と、社会がつながれる状態があるだけで防げた事故もきっと多いですよね。今回の制作を通して、そういうことを、考えさせられました。

――こちらは、エルロイの土屋哲彦監督です。胸のバッジは、今回の撮影用に監督みずから手作りいただいた、架空の宅食団体のロゴバッジです

これからのビジョン  

――これから、どのような未来を描いていらっしゃいますか?

(高原)「映像制作で社会貢献することなら自分たちでもできるんだ」と思えた体験が、とても良かったです。会社経営をして1年目として、どこまで社会貢献ができるか分からなかったのですが、和田さんが初めに呼びかけてくれた際のメールが私の中では非常に印象的で、心に刺さったものでした。

呼びかけに応じて、みんながひとつのチームになる過程がとても素敵で、もしかしたら「社会貢献したい」というチャンスを探るような潜在的な思いは、みんなもっているのかもしれません。ムリすることはないけれど、できることをやるという気持ちを形にすることができた、素晴らしい体験だったので本当に感謝しています。

(和田)玉川くんがフローレンスに転職したことがきっかけでルートができたのですが、こうして営利企業とNPOがつながることで、大きな化学反応を起こせるのだなと思いました。はじめは「今、どんな仕事してるの?」という何気ない会話だったのですが、営利企業とソーシャルセクターなど、つながるところがつながれば、やれることってまだまだあるなと感じました。

今の若い方などは、社会課題についてよく考えられていることもすごいな、と思いますし、私たちも日ごろからアンテナを貼ることは必要だと思います。社会のパラメータをほんの少し変えるだけでも、もっともっと良い社会をみんなで作っていけると感じます。今回私たちもこうして携わらせていただけて、とても嬉しかったです。ありがとうございました。

――撮影終了!みなさま、ありがとうございました!

取材・文 高橋 亜美

おわりに             

こども宅食応援団は、もうすぐ設立して5年が経ちます。全国各地で、こども宅食の取り組みに共鳴してくれたたくさんの仲間がひろがり、今は100を超える団体さんが、地域に根差した親子の支援として、こども宅食を実施しています。

今回、素晴らしい動画をご制作くださった、映像クリエイティブユニットThe Creation HUBのスタッフ皆さまや、出演してくださった方々、そして、いつもこども宅食応援団を温かく見守っていてくださる皆さま、本当にありがとうございます。

どんな人も、困ったら「おたがいさま」で温かくそっと声をかけ合える。私たちが目指しているのは、そんな地域社会の実現です。こども宅食応援団は、これからも皆さまと一緒に活動してまいります。

>>こども宅食応援団のふるさと納税はこちらから

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