福岡県久留米市に拠点を置き活動をおこなう「一般社団法人umau.」は、2019年にスタートした団体です。umau.というネーミングには、育て合う・学び合う・支え合う、「合う(au)」を「生み(um)」出し合うという思いが込められています。2023年2月現在、umau.の活動には約230世帯が登録しています。
居場所づくりも大切にしています。拠点となる場所を「じじっか」と名づけ、実家がある人もない人も、実家のように気軽にいつでも過ごせて、心と身体を休ませ、家族のような関わりをもてるようにと、開かれた居場所になるよう心がけて運営しています。
子育てをする中で感じる孤独や不安。それを共有することで何かしらの幸福感を感じることができたら毎日の生活の潤いになります。「じじっか」に来て、時間を過ごし、帰る時には抱えていた何かをふっと開放して、フラットな心持ちになってもらいたいという思いが、活動の原点です。
――「じじっか」のリビング。好きなときに好きなだけくつろげる居場所があります
「じじっか」は、金・土・日の週に3日、イベントや食事ができるカフェを行うなど、誰もが集いくつろげる場所としてオープンしています。週に5回食事の提供を行っており、1日約180食の食事が作られています。「じじっか」で食事をする方もいれば、足を運ぶことができない方へは、自宅へのお届けも行っています。
お届け用の食事は、いつもの食器に盛り付けて食事を楽しんで欲しいという思いから、弁当容器ではなく「ジッパー袋」で用意をしています。これもまた、実家から食事が届くような、そんな温かい思いが感じられます。
――食事の時間を楽しんでほしいと まごころを込めて手づくりされています
こども宅食に関して、活動当初は、食事や食材などは、「じじっか」に来て受け取ってもらう形からスタートしました。しかし、人の集まる場所に行くことが苦手な方や、交通手段のない方などもいて、少しずつお届けするスタイルになりました。コロナ禍以降は、集う事が難しくなった中で、よりお届けをすることの大切さ、必要性が高まりました。
こども宅食の仕組みを取り入れたことで、新しい関係性も生まれてきました。(こども宅食の活動名称は、親しみやすさを感じていただけるよう「じじっかウーパー」と名付けました)
お届けする際に、玄関先で話をする時間を持つことで、家庭の様子や、お母さんや子どもたちの心の様子を感じることができます。皆が集まる場所では見せない家庭での顔、いつもは朗らかな様子のお母さんが自宅では切羽詰まった様子が見られたり、玄関先からも家の中が整っていない様子を知ることがあったり、動きたいのに動けない理由を知ることができたりします。お母さんが抱えている困りごとや、子どもたちが感じているストレスなどを目の当たりにするようになりました。
配達をすることで、外では見せない、見えない様子を知ることができるようになったのです。また、関係性を築く中で、心を開き多くの話をきかせてくれる方や、人の少ない時間ならと、「じじっか」を利用するようになる方もいたりと、心の距離も近づいてきています。
――大家族の食卓のようにみんなで食事を楽しむことも
「じじっか」では、ルールを設けない事をルールとしています。唯一の約束事は、「じじっか」に来た時には、「ただいま」「おかえり」、帰るときは、「いってきます」「いってらっしゃい」と目を見て挨拶することです。そして、一度会えば、敬語は使わず、家族同様に名前やニックネームで呼び合うという事も、じじっか流の距離の持ち方です。
「じじっか」では、どんな過ごし方をすることも認められています。小学生がお菓子作りをしていたり、父子家庭のお父さんが、近くで遊ぶ子どもの様子を感じながら、ソファで寝転がって携帯をさわったり、おしゃべりをしたり。思春期真っ只中の中学生とママスタッフが恋話をしていたりと、利用者とスタッフの垣根はなく、思い思いの時間が流れています。
距離や壁を感じさせない、家族的な関わり方を大切にしています。
「心に0.5ミリのすきまがあるとしたら、そこを補うことができるのは無償の愛かな」と、副代表の中村さんはおっしゃいます。
お金がないから、お金をもらう、支援をうける。という解決ではなく、「この人なら信頼ができる。このさみしい時にこの人がいてくれて安心」という信頼感や安心感であったり、「弱いところを見せても、軽蔑したりしない。安心して心の隙間を見せることのできる人だ」「じじっかにいるだけで安心できる」という利用者さんとの距離感・関係性を築いていくことを大切にしています。
支援する、されるではなく、一人一人の生活に必要なことを共に考えていく事こそが必要な距離感だと考えています。
困りごとというものは様々です。根っこにある困りごとが何なのかを、踏み込んで共に考えていくということは簡単な事ではありません。しかし、一歩踏み出す為には、困りごとに対し、目をそむけるのではなく、自覚を促し、どの様に何をすれば現状を良い方向に動かす事ができるのか。根っこにある困りごとを、当事者本人と共に考える事が大切な時間となります。
「じじっか」でくつろいで欲しいという思いと一見反目するようにも感じますが、実家よりも実家。血縁がなくても家族になる。その根柢の思いは同じで、家族のように、「根元にあるものも受け入れる 根っこごとうけいれる」「自覚をすること、現状を受け入れることで前進できると信じて進む」「来るものは拒まず、去る者は追いかけるくらいの覚悟をもって共に歩む」それがumau.スタッフ共通の強い思いなのです。
ラッキーループを社会に展開させていく
この春、熊本県大牟田市に、新たな「じじっか」がオープンしました。
umau.の活動に共感した、地元の子育て支援団体が取組む、第2の「じじっか」の誕生です。
活動を始めて3年。ひとり親世帯に必要とされる支援は、ひとり親世帯に限らず、誰もが必要としている支援であることも分かってきました。
ひとり親、独身、夫婦、障がいを持つ人、実家のある人、ないひと… 区別することなく全ての人が安心して過ごすことのできる居場所(社会)を作りたいと考えています。
「すべての人たちに、希望をもてる環境と、愛のある関わりがあたりまえの社会になるように。」
umau.の思いは、九州から大きく拡がっていきます。
こども宅食応援団では、全国各地のこども宅食実施団体への立ち上げ支援や、ノウハウや物資提供などの伴走支援を行うことで、「こども宅食」の取り組みを全国に広げる活動を行っています。またこれらの活動資金はみなさんからいただくふるさと納税の寄付で支えられています。
ご支援どうぞよろしくお願いいたします。
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