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宅食で地域とつながるきっかけ作りを――大阪府堺市 リーフのこども宅食プロジェクト

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大阪府堺市で活動する「リーフのこども宅食プロジェクト」は、児童養護施設清心寮に併設された、子ども家庭支援センター清心寮リーフが運営を行っているこども宅食です。 

こども宅食の取組みは、2022年1月よりスタートしました。

現在の支援家庭は15世帯。堺市の家庭児童相談室(以下、家児相)と連携し、支援を必要としている家庭へ食品を届けています。

活動を行うなかで大切にしていることは、要支援世帯と地域の橋渡しとなること。

こども宅食をきっかけとして、地域の「子ども食堂」へつなげることを目的の一つとしています。

――子ども家庭支援センター清心寮リーフ。家庭的な雰囲気の施設で、子育て世帯が集い講座や相談会などが開催されています。

開かない扉 届かない支援

リーフが宅食を行う世帯は、家児相が支援を決めた世帯です。

子や親に疾病や障害傾向がある、生活保護を受給している、DV歴があるなど、家庭の中にしんどさがあり、虐待リスクを抱えた世帯が主となります。子どもの年齢も乳幼児から高校生と幅広く、また、ひとり親に限らず兄弟の多い世帯もあります。

共通して言えるのは、傍からみると心配度の高い状況にあっても、当事者である大人が「いったい何がいけないのか分からない」、子どもにとっては良くない状況にあっても、同居する大人が「支援の必要性を感じていない」ということ。

支援を受けヘルパーさんが訪問しても、行政の訪問にも応じたくない、と家に上がることが出来ない家庭も少なくありません。

そんな中、月に一度訪問するこども宅食へは、扉を開き、食材の受け取りと共に、お母さんたちが少しずつ心を開いてくれているそうです。

――世帯の人数や好みも考慮して個別に品物を用意しています。

世帯が必要としている物を用意して届ける

リーフでは、宅食のお届けが決まった世帯には事前に面談を行い、家族構成や好きなもの、必要なものをあらかじめ聞き取りをして食材などの準備を行っています。お届けの日程も各世帯それぞれに都合をあわせて月に1回訪問しています。

決まった予算の中で、世帯ごとに買い物をして届けるのがリーフのスタイルです。

ニーズにあった品物を届けるのには理由があります。

ある世帯では、お母さんのイライラの原因が、「子どもが野菜を食べない」ということにありました。便秘を解消させたいからという理由で、子どもに野菜を無理に食べさせようとする。でも食べない。この繰り返し。そんな話を聞けば、便秘を解消するためには野菜だけでなく、他にもこんな食べ物で解消することができるよというアドバイスと共に、次のお届け品を用意する。また、朝ご飯を食べないと聞けば、こういう物なら食べやすいのではと食材を工夫してお届けすることもあります。子どもにしっかり食べさせたいと思うあまり、必死になって頑張るお母さんの悪循環がそこにあるとしたら、食を通して指導を行うことで解消されるイライラもあるのです。

回数を重ねる中で、お母さんの方から「玉ねぎが高いから玉ねぎが欲しい」「小パックライスは間に合っているから今回はいらない」などのリクエストもでてきたり、こうした食材の準備というコミュニケーションの中で、その家庭の状況が見えてくるようになり、必要な支援を行うことができるようになっているそうです。

ーー「どんな品物があるか一緒に確認しましょう!」と声をかけて会話の機会を持てるようにしています。

「話がしたい、話を聞いてほしい」切実な想い

リーフでこども宅食の担当を行っている安原さんは、活動を行うなかで「話がしたい。話を聞いてほしい」というお母さんたちの切実な想いと向き合っています。

「訪問に行ったら大体1時間くらいかかるんです」と笑顔で語る安原さん。帰ろうとすると

これもちょっと、こんなことがあってと会話が尽きないそうです。はじめは戸惑いもあったそうですが、仕事を持って頑張っているお母さんは他の人と話をする機会も少なく、この時間が必要なんだなという気づきもあったそうです。対面で話をすることが苦手なお母さんも、LINEのやり取りなら想いを伝えられるという方もいます。中には、安原さんが勤務時間外には返信できないと伝えていても、100通を越えるメッセージが届くことも。

そうしたやり取りの中から、世帯が抱えている困りごとを知り、情報がないことで不安を感じているお母さんへは相談窓口とつなぐ、子どもの発達に心配を抱えたお母さんの元へは、リーフの発達支援員が訪問して不安を解消したり、メンタル相談の為に心理士と一緒に訪問することもあります。また、こども宅食を利用されている期間に、児童養護施設のショートステイを利用した家庭もありました。こども宅食を通して、つながる支援のきっかけ作りが行われています。

子どもたちが地域で生活を続けていくことができるように

児童養護施設勤務の経験がある安原さんは、困りごとを抱える家庭の支援を行って来た中で、「子どもたちが児童養護施設に行くことが正解ではない」と感じています。

また裏腹に、入所が必要な状況にある子どもたちが入所できないという現実にも直面しています。困りごとを抱えた中で、どう地域で生活を継続していくかが大きな課題で、その解決方法を考えた時に、地域の「子ども食堂」の存在が鍵になってくるのではないかと感じているそうです。リーフが「こども宅食」に取り組む中で、支援世帯を地域の「子ども食堂」につなぐことをそのご家庭のこども宅食終了の目安にしています。「子ども食堂」は食の支援と共に、子どもの居場所にもなります。子ども食堂への抵抗感がある家庭へは、子ども食堂のスタッフと一緒にお弁当を持って訪問するという活動も行ってきました。開始から半年、2世帯は子ども食堂へ毎週足を運べるようになり、こども宅食の終了を検討しています。他の世帯も子ども食堂とのつながりができ始めているそうです。「子どもたちが地域で生活し続けることができるように支援を行う」これがリーフの思いです。

ーーリーフへ品物を取りに来る方も。宅食をきっかけに、児童家庭センターでの相談や支援にもつながっています。

「こども宅食」をはじめたことで見えてきた新たなリーフの役割

宅食を行うなかで、「児童家庭支援センター」の役割を持つリーフだからこそできる支援への気づきがあったといいます。それは、これまでつながりが薄かった要支援者と、行政や家児相、そして地域の「子ども食堂」をつなぐということです。

行政や家児相に対しては、宅食を通して見える、地域や世帯の現状を共有し必要な支援へと繋ぎます。こども宅食は拒否しないけれど家児相の訪問は拒否するという家庭に対して、家児相スタッフと一緒に宅食のお届けをして、子どもの様子を見ることもありました。このような連携をおこなうことで、家児相や行政との理解も徐々に深まってきています。

また子ども食堂に対しては、要支援世帯をつなぐことと同時に、子ども食堂を運営する中で抱える課題に寄り添い、共に解決策を見出す役割となることが必要となります。

ボランティアで支援を行う方の中には、自分が何とかして虐待をとめなくてはいけない、自分が指導をしないといけないと、行政のように頑張ってしまい疲弊してしまう方も少なくありません。そんな時、専門家の立場から支援者さんに対して、日常を支えることがいかに大切な支援なのか、その活動が要支援世帯にどんな良い影響を与えているのかということを客観的にフィードバックするということも、児童家庭支援センターだからこそできる重要な支援者へのサポートとなるのだそうです。

行政と地域の支援団体が連携し理解を深めることで拡がる支援があります。

ーー地域にある「子ども食堂」のお弁当もお届けしています。

まずはお母さんの存在を認めてあげたい

「親の安定がなければ子どもは育たない。宅食や子ども食堂を使ってしっかりと栄養補給をしてもらい、最低限の事をお母さんに求めていけたら。お母さんの言動を絶対的に否定するのではなく、お母さんの存在を認めてあげることを大切にして、まずはお母さんの支援というところに着目していきたい」と安原さん。

生活がしんどい中で子どもに対して不適切な関わりをもってしまう。その理由は世帯によって様々な事情があります。関わることで、虐待をしなくても生活ができるような環境になることが、リーフスタッフ皆さんの一番の願いです。

 

大阪府堺市 リーフのこども宅食プロジェクト

活動地域:大阪府堺市北区
開設:2022年1月
登録家庭数:15世帯(令和4年7月現在)
お届け:月に1回 日程は世帯に応じて 

 

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