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2025.06.04

地域で支える命のはじまり@オンライン開催リポート②『地域のアクション~赤ちゃん便の実践とその取り組みが目指す地域社会へのインパクトについて』

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2025年1月24日、「地域で支える命のはじまり@オンライン」を開催しました。

孤立出産やこどもの虐待…

それは予期せぬ妊娠や経済的困窮などにより、支えてくれる人の存在がないままに親子が不安な日々を過ごした結果なのかもしれません。

妊娠期からつながり地域で見守ることで安心して出産育児にのぞむ事ができるように…

様々な人が手を携え見守る「地域で支える命のはじまり」について、こども宅食赤ちゃん便の事例も交えオンラインで学び、意見交換を行いました。

「地域で支える命のはじまり@オンライン」イベントリポートを、ご登壇いただいた3名の皆さんの講演順に、3回シリーズでお伝えします。

今回は、講義2にご登壇頂いた、認定NPO法人スチューデント・サポート・フェイス 中山志穂さんの講義をご紹介します。

プログラム
【日時】2025年1月24日(金)9:30-12:00
【参加方法】Zoomによるオンライン参加
【参加者】約80名

挨拶/こども宅食赤ちゃん便について
こども宅食応援団のメンバーより、「赤ちゃん便」とは何か、目的や活用方法、そしてこの活動を通じて目指す理想の社会像や、新しい支援のあり方について説明しました

講義1.【グローバル視点で考える】
フィンランドの子育て文化(支援)を学び、子育て支援の新しい視点を学びます
講師:ライター 堀内都喜子さん

講義2.【地域のアクション】
赤ちゃん便の実践とその取り組みが目指す地域社会へのインパクトについて佐賀県の実施団体より事例紹介
講師:認定特定非営利活動法人スチューデント・サポート・フェイス 中山志穂さん

 講義3.【共創で生み出す力】
医療、福祉、行政、経済、政治の連携 プラットフォーム事業から見えてきた多職種連携
講師:一般社団法人日本女性財団 プラットフォーム事業部理事 落合香代子さん

質疑応答. ファシリテーター:こども宅食応援団 吉田美由紀

講義2【地域のアクション】

講義2では、佐賀県で「こども宅食 赤ちゃん便」を実施している、S.S.F.(スチューデント・サポート・フェイス)の中山志穂さんに「赤ちゃん便の実践とその取り組みが目指す地域社会へのインパクトについて」お話頂きました。

認定NPO法人スチューデント・サポート・フェイス 中山志穂さん

福岡県出身。3人のこどもを持つシングルマザー。元保育士。保育園に勤務時にS.S.F.と出会い立ち上げ時よりボランティアで不登校の子どもへの訪問支援に携わる。H26年度にモデル事業として佐賀市生活自立支援センターの開設から携わり、主に相談受付や各機関との連携強化の為に、きめ細かな連絡・調整を担う。現在は、赤ちゃん便を主に行なっている。”ないものは作り出す“精神で人との繋がりを大切にしながら、新しい仕組みを作りだし、人の心に寄り添える支援を行っている


「こども宅食 赤ちゃん便」は、産前産後に何らかの心配や課題を抱えた家庭に訪問し、食品、オムツやミルク、離乳食といった赤ちゃん用品などを届け、会話をしながら相談援助を行う訪問型の活動です。2023年度にこども宅食応援団と認定NPO法人スチューデント・サポート・フェイス(以下「S.S.F」)が連携し、NPO法人フードバンクさがの協力のもと、トライアル事業として佐賀県でスタートしました。そして、2024年度には事業立ち上げのための資金助成も実施し、全国で赤ちゃん便の取り組みが実施されるようになっています。

中山さんは、佐賀市生活自立支援センターにて、相談受付や各機関との連携強化に携わっています。「こども宅食赤ちゃん便」の活動は、トライアルからこども宅食応援団と共に実施し、伴走支援を行っています。

活動を実施する中で中山さんは「生活困窮は誰にでもおこり得ること」と感じています。突然の出来事をきっかけとして、生活に影響を与えてしまう可能性は誰にでもあるのです。

誰にも相談できず、予期しない出来事の連鎖で孤立し、問題が解決できずに時間だけが過ぎていくという負のループに陥ってしまう。非行や引きこもり、そして予期せぬ妊娠。中山さんは、そんな状況におかれた若者たちと多く出会ってきました。

「必要な人に必要な支援が本当に届いているのだろうか」
「どうしたら、その人たちに支援をつなげることができるのだろう」

自問する中で中山さんは、「支援が必要なこども達という言葉はよく聞くけれど、そこには必ず保護者・親がいて、親が支援をシャットアウトしてしまったら、その子にも家庭にもつながることができなくなる。親が変わることがやはりこどもにとっての支援になる」と考え、こどもが安心して育つ環境をつくる為には親への支援が不可欠だと感じるようになられたそうです。その頃出会ったのが「こども宅食赤ちゃん便」の取組みでした。
「誰かとつながりたい」という思いは誰もが持っているけれど、つながる力が弱い為につながることが出来ない。そんな孤立しやすい状況の中で、孤立を防ぎ、親が安心して育児と向き合える環境を整える為に有効な手段が、アウトリーチの訪問支援・こども宅食赤ちゃん便なのです。

こども宅食赤ちゃん便は、月に1回食品や粉ミルク、オムツなどの生活必需品を持参して訪問し、1時間ほど対話の時間を持ちます。日用品を持参することによって、支援のハードルを下げることができ、赤ちゃんの話など会話をしながら、家庭の様子を知ることもできます。中山さんは、子育ての先輩ママ、近所のおばちゃんがおすそ分けを届けにきてくれたような気軽さで家庭に訪問し、いつでも連絡できるようにLINEなどでつながり相談しやすい関係性を築いています。
身体的な不安、金銭的な不安、将来の不安。妊娠・出産・育児期には、いくら健康でも、どんなに一生懸命頑張っていても、悩みを抱えてしまう方は少なくありません。相談できる身近な存在もなく社会から孤立した状況にあれば尚更、不安の連鎖が起きてしまいます。

「誰にも言えない、相談できない、解決できない」この負のループから抜け出す為には、人に話をすることが問題解決の一歩になると中山さんは言います。誰かに伝えることで、自分の中でも少しずつ思いや、困りごとを考えるようになり、無意識に気持ちと言葉の整理ができるようになるのだそうです。

赤ちゃん便を必要としている家庭は、金銭面や人間関係、DVや病気など、困りごとを複数抱えている場合も多く、自分たちだけで解決することが難しいため、第3者が入って補っていくことが必要です。

訪問時には、相談だけでなく日常の何気ない会話も楽しみます。傾聴し、共に笑い、ともに喜ぶ時間があることで、身近な存在となり信頼関係を築いていきます。問題があるときだけ来る人ではなく、何か心配事が起きたときに相談するならこの人にと思える関係性となることで、本当の困りごとを知ることができ、必要な支援につなげていくことができるのです。

また、支援を行う中で中山さんは、支援者である自分たちも頼りながら支援をつないでいくことが大切だと考えています。行政や専門機関、保育所や学校、そして地域など様々な関係機関と連携し見守りを行うことで、親子をとりまく社会が拡がり、支援が充実していくことが大事なのです。「親子の笑顔あふれる赤ちゃんの取り組みになるように」中山さんは日々の活動を行っています。

関連記事はこちらからご覧いただけます

地域で支える命のはじまり@オンライン 開催リポート①『グローバル視点で考える』

地域で支える命のはじまり@オンライン開催リポート③『共創で生み出す力』

●「地域で支える命のはじまり 学びを深めるワークショップ@さが 

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